沈黙の恋人たち｜リアクション

沈黙の恋人たち

　いつの間にか陽が落ちていた。
　綾花は暗くなった表に目を遣り、テキストを閉じる。
　寮に戻り、夕食を作ったらまた勉強だ。
　新刊の猫写真集の貸し出しは控えた。十分楽しんだし、人気の図書で、貸出を求める人もいるだろう。
　テストに使用できそうな参考書を借り、図書館を後にする。

（今日は充実した一日を過ごせました……）吹きわたってくる涼しい風を頬に感じ、綾花は瞳を閉じた。「明日から、また頑張ろうっと」

●
　大きく伸びをする姫子を見て、オルガが尋ねる。
『大丈夫なの？』
　タブレットの画面に向け、姫子がサムズアップ。
「大丈夫！　ウチにおっまかせ！」
　その口元には、オルガ手製のクッキーの粉。
『いい点とれたら、またスイーツ食べに行こう』オルガの提案に、頷く姫子。
『こういうのは、自分にご褒美あげながらやるのがコツだから……』
「ご褒美！　おいどんは食う！」姫子がはしゃぐ。
「まあ、今回は平均点でいいかな？」
『平均点でいいやって』……がくり、とオルガは肩を落とす。（次はもう少し、基礎からやらないと……）

●
　職員に閉館を告げられ、修はようやく我に返った。
　最後の利用者になってしまった。
　すべてのテスト勉強は終わった。あとは明日のテストを受けるのみ。

　表に出て振り仰ぐと、図書館の巨大な影が覆いかぶさるようだった。

　

●
　故事に曰く。
　人間はもともと雌雄の一体として生まれ、それが分かたれてしまった。失われた欠片を求め、我々は一生をかけて彷徨い続ける。
　本来のそれは雌雄ではなく、男と男というＢＬ要素がなぜか混入している。それはそれとして。
　書庫の奥に時を超えて眠りつづけ、だれかふさわしき相手のためだけに待ち続ける、それは本のようだ。
　枕頭においた書に、ふとそれにまつわる人の面影が揺らめく。
　熱い恋情、魂を焼く悲泣でなくてもよい。やわらかな沈黙に包まれて、現在の、未来の恋人たちは眠りにつく。

　目下、寝子島は午前０時。
　安らぎの闇に包まれる図書館を、猫たちだけが神妙に目を光らせている。
　
　

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あとがき

担当マスター：ぱーすぺ
ファンレターはマスターページから！

ありがとうございました！
バラエティに富んだアクションをいただきましたが、静かなものが多かったようでした。
男女の間に限らず、他人や、この「フツウ」を愛そうとしてくれるアクションも、共通していました。
半分ネタでつけたタイトルでしたが、結果として思いもよらぬ意味を持ってしまったようで、
不思議なゲームだな、と改めて感じておりました。
完成した後、『時をかける少女』のサントラの元ネタでもあります、アルヴォ・ペルトのサントラを聴いていて、
妙にはまっていると感じられたのを思い出します。
それではまた、熱いアクションをいたしましょう。

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