触手ガールの憂鬱｜リアクション

触手ガールの憂鬱

●救出劇

　冬華の悲鳴を聞きつけた『フツウの少年』御剣刀はその現場へと急行し、そこで繰り広げられている壮絶な触手バトルを見て、頭を抱えた。
　ぐったりとした冬華と碧南。そして、それを奪い合う為に触手で争い合う未沙とボンキュボーン子。
　その光景は見る者の正気度をガリガリと削り取る程のおぞましさと狂気に満ち満ちていた。

「また神魂かよ！　そして触手かよ！！　放って置くと俺達の世界へ来そうだし、ここで止めるぞ！」

　まったくもってその通りである。こんなものがフツウの世界に漏れ出して来ては大変である。
　それによく見れば、刀の右手までが触手になっているではないか。
　ニ、三度腕を振り、触手の感覚を試していると、刀の姿に気が付いた冬華が、弱々しくも助けを求める声を上げているのに気が付いた。

「やってやるぜ！」

　ボンキュボーン子の触手に囚われている冬華を見て、刀は頭の中で撃鉄を落として、自分のろっこん『加速』を発動させた。
　刀の動きが一気に加速し、右腕の触手が冬華に絡みついたボンキュボーン子の触手を、文字通りスパスパとぶった切る。
　冬華の身体がぐらりと崩れ、地面に倒れそうになるのを刀は抱きかかえ、そのままの加速状態で安全な場所まで移動した。
　冬華は刀に思いっきり胸を押し付けるように抱き付いてその身を震わせている……
　刀は震える冬華の頭を軽く撫でて落ち着かせた。

「あ、ごめんね……」

　少し落ち着いたのか冬華は顔を赤らめて離れる。

「その場でじっとしてろよ？」

　刀は冬華にそう言い聞かせて再びボンキュボーン子の元へと戻った。

　そこに居るのはボンキュボーン子だけではない。獲物を奪われて怒っているのは元祖触手少女である未沙も同じことだった。

「おい、他にも触手に寄生されて襲いかかって来る奴が居るぞ！？　……邪魔するな！」

　刀は再び『加速』して、次々と触手を切り落とすが、相手は二体でこっちは一人。ずいぶん分が悪い。

「苦戦しているようだな。加勢するぞ」

　と、その時そこへ救いの援軍が現れた――