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◆第三章「燻ぶった火種は直ぐそこに」
~村・倉庫~
そこは村の一角にある倉庫。特に普段は誰が立ち寄る事もないが、必要な時にだけ開ける。
そういった場所である。そこに少女が一人入っていく。
倉庫とは言うものの、鍵はかかっていない。扉を開け、中に入ってしっかりと鍵を閉めた。
「ふっふっふ、潜入成功ですよー、いやー割と簡単に入れるものですねー」
そう呟きながら彼女――
屋敷野 梢
は懐の宝石を指で弄る。
それは「命よりも重いものはない、高価な品物を討伐代金として貰う!」と朝方言い、村長から
とりあえずの前金として奪い取った物だった。
「さて、村人に武装蜂起されても困りますからね、このあたりの武器は全て蝶に変えてしまえば
いいですよね」
彼女が目を閉じ念じると、その場にあった武器が次々と蝶へと変じていく。
数分も経たずに倉庫内は煌びやかな蝶の群れで溢れた。
「いやー綺麗ですね、うん、なかなかにいい眺めです。
これが絶景っていうんですかね。うん、うん」
腕を組みながら頷き、満足そうにする梢。壁まで歩いていくと窓の代わりに開けられる板を持ち上げ、
木の棒で支えにする。そこから外の空気を求めたのか蝶達が外に出ていった。
「さあ、みんないってくださーい、どんどんどこか遠くへ―」
全ての蝶を出し切り、彼女は意気揚々と外へと出た。
その顔は仕事をやりきったようななかなかにいい表情である。
村に戻ろうとした彼女の耳に話声が届く。
誰かが秘密の話をしている……そんな雰囲気の口調。
「さて、何かの秘密の話ですかね……?」
そこは村から少し外れた森の中。
近くによって耳を澄ませると、声の主達が話し込んでいる。
恐らく誰にも聞かれていないと思ったのだろう。
そこそこに大きな声で話しているようだ。
「いいか、あの人の合図で一斉に襲い掛かる……なあに妖怪と言えど、
たかが狐一匹、数でかかりゃどうにでもなるさ」
「そうだな、お前の言うとおりだ! よし、今からでも武器持って……!」
「まあ、待て。いまからそんな物騒なもん持ち出したら計画がばれちまうだろうが!」
「あ、そっか。すまねえ」
(なんかやばげな話を聞いちゃったみたいですね……これはこれは知らせにいかないとですよ、
うん、私だけでどうにかできる問題じゃなさそうですからね!)
くるりと話し声に背を向けて、彼女は村へと足を向けたが……そこで木の枝を踏むという
お約束をやってのけた。当然、彼女はそのまま固まってしまう。
恐る恐る後ろを振り返ると……そこには先程の話をしていた男性達がいた。
「まずったな、話を聞かれちまったからには帰すわけにはいかねえ」
「そうそう……さっきの事を聞かれたなら、殺しちまうしかねえだろうな」
「お前ら、まあ待てよ。見ればなかなかに可愛い顔してやがる。
こんな身体前にして……何もせずに殺しちまうのは惜しいんじゃねえかぁ?」
彼の目線が舐め回す様に梢に注がれる。首、胸、足、尻……彼らの目はどこを
襲うか舌なめずりしながら考えているように見える。
(ちょっとちょっと、ここでキズモノになる気はないですよー!!
でもでも、足が動かないんで……ちょっとピンチな感じ?)
男の一人が梢の肩に手をかけ、その手を胸に伸ばした。
ぞわりとした嫌な感覚に咄嗟に男を突き飛ばす。
「ぐおっ! ってぇ……気のつええ女子だな。まあ、それぐらいが燃えるってもんだがよ!」
一声に飛び掛かってくる男達の服に狙いを定め、彼女は念じる。
すると、彼らの衣服が蝶になって飛んで行ってしまう、ある男に至っては下着姿になってしまい、
戸惑っておたおたしている。
「うわあああ、なんで服が蝶に!?」
「なっひいい、俺の服がああー!」
男達が慌ててる間にその目を盗んで梢は逃げ出した。
自分の身と貞操を守る為というのもあるが、誰か同じ境遇のこの世界に放り込まれた者達に
話す必要があると思ったからである。
「誰に話すべきですかね……やっぱ八神君かな」
~村・役場~
村役場。そこには村の管理や運営に関わる書物が一手に管理されている。
とはいえ、小さな村だからか書物の量はさほど多くはない。町の小さな書店レベルである。
月華に関する書物のみに絞り、
八神 修
は端に備えられた閲覧用の机に書物を重ねる。
「いかに隠そうとしていたとしても、なにかしらの手掛かりはあるはず……
もしくは決定的な証拠……」
書物を紐解いて開いてみると、そこには古めかしい文字が書かれている。
読めなくはないが少々時間が掛かってしまいそうであった。
じっくりと読んでいくと月華に関する記述に何かしらの手が加えられているのがわかった。
文字の繋ぎがおかしかったり、ページ自体が不自然だったりと明らかな改竄である。
八神は気になって役場を管理している者に問い掛けた。
「すいません、この書物をあとから付け足したり、ページを変えたりというのは
誰でもできる事なんですか?」
「いやー、流石に誰でもってわけじゃないですよ、実際この村でちゃんと字を読み書きできるのは
村長ぐらいなものですから。管理してる私ですら、読み書きは……ちょっと、ねえ」
「そうですか、教えてくださってありがとうございます」
八神はそういうと、役場を後にする。
書物を漁ったが、情報の多くは削除、または改竄され結局月華に関する事は、孤児である事と
身寄りがなく一人暮らしであった事ぐらいしかわからなかった。
(……情報を改竄したのは村長。やはり彼は何かを隠している。とはいえ、聞きだすのは不可能だろう)
考えながら歩いていた八神の前に蝶が舞い降りてくる。綺麗な蝶だなと思っていると
その蝶は目の前で人の姿をとった。その蝶は梢の変化した姿だったのである。
「八神君、八神君、耳寄りな情報を仕入れちゃいましたよっ!」
梢によると村に狐の妖怪である雪を暗殺しようという動きがあると。
人数の規模は不明だが、雪が村に来た時点で誰かが合図を出すと、計画が始動するとか。
「なるほど、とてもいい情報をありがとう。早速何か手を打たないとだ。
雪を暗殺させるわけにはいかない」
そう、死なせるわけにはいかない。なぜなら彼の気持ちが痛いほどにわかるからだった。
八神にも好きな人がいる。もしも自分の好きな人が月華と同じような事態になったら……。
自分自身は雪の様にはならない――とは胸を張って言えないからである。
(悲しみを、憤りを、喪失を、愛を……ぶつけないとやりきれないんだな。
分かるよ、その気持ち。俺だって……もしそうなったら……きっと……)
胸の奥を突き刺されるような痛みを感じながら、八神は梢と共にその場を後にする。
全ては雪を死なせない為に。
~民家~
「では、そろそろおいとまさせていただきマース」
「あら、もう行くんですかっ。何から何まですいません」
「いえいえ、お気になさらずデース」
割烹着姿に三角巾を身に着けた明らかなオカンスタイルの人物が民家から出てくる。
深縹 露草
……この世界に放り込まれた者の一人である。
人々からの情報収集の側ら、元より好きな家事を手伝っていたのであった。
家事スペックが高いからか、奥様方から大層気に入られたようで、噂話から月華の情報まで
いつのまにかゲットしているスーパースペック。
これぞ、オカンの度量と言った所だろうか。
扉を閉め、民家の方々から見送られ彼女らの姿が見えなくなったところで
目つきが変わる。真剣な眼差しは冷静な部分を感じさせ、立ち振る舞いにも隙はない。
「情報は集まりました。あとは現場を探し出すだけですね……月華の殺された場所よ、光りなさい」
民家の方から頂いた紙に紋章を記し、言葉を紡ぐ。
すると、明らかな光が少し離れた森の中に見えた。
そこに向かっていくと、少し開けた場所に出る。そこは森の中とはいえ、薄暗く村に近いながらも
村からは完全に見えない場所であった。まさに殺人をするならばうってつけと言える。
「ここですか。流石に……目視で見える状態で手掛かりはなさそうですね。
犯人達もそこまでばかではない、ということですか」
実は村の中にいる間に、紋章を描いて月華を殺した者の額よ、光れと言ったのだが……誰一人として
光らなかった。となると、犯人は既にこの村にいないか、あるいはもう雪に殺されているのかもしれない。
「見えざるモノに手掛かりがあるかもしれません……月華の所持品よ、光りなさい」
露草がそう命じるとある位置の土が光り輝き紋章を映し出した。
そこを少し掘ってみると、そこには血の付いた櫛が埋まっていた。
「ありましたね……見えざる手掛かりが」
櫛に触れた瞬間、無数の声が露草の頭に木霊した。
それは悲しき声。
……それは愛しき声。
…………それは苦しき声。
誰のものかは分からない悲鳴。怒号。そして痛み。
それらが渦を巻く様に露草の精神に襲い掛かる。
咄嗟に手を櫛から離すと、声が止み痛みも治まった。
「今のは……一体……なんでしょう」
もう一度櫛に触れてみる。
すると、また頭に声が聞こえる。
女性の悲鳴。
衣服の裂ける音。
金属音。
男性の嬉々とした叫び。
女性の呻き声。
そして、悲しみに溢れた叫び声。
声が何を話しているのか、声が何を想っているのか、感じようとしても
それらは混ざり合い、渦となり、痛みとなり露草の精神を揺さぶった。
「くっ、素手で触れるのは……難しいですか」
痛みと声に耐えながら紙に包んでみると、ぱたりとそれらは止んだ。
露草は雪の説得を行うといっていた者達の元に向かう。
彼を説得するには、この櫛は必要な物だろうから。
何よりも、この櫛に込められた思いや記憶は、雪こそ受け取り、聞いて、
見るに相応しいと思ったからである。
露草の足は村へと急いだ。
~村~
目を覚ましてから誰かに呼ばれている気がする。
逆巻 天野
はそう感じていた。
そしてそれが誰なのか、察しはつく。
恐らく、月華だろう。
自分にあんな雪の夢を見せたのだ。語りかけてきてもおかしくはない。
(こっち……きて……――がい、いそ――しまう)
聞こうとするのだが、所々切れたラジオの様に声が途切れ、何を言っているのか判別できない。
「く、こっち……か?」
耳鳴りのような物に加え、頭痛のようなものが声を聞くと彼の頭に襲い掛かったのである。
耐えられない痛みではない鈍痛だが、何度もとなると少々厳しい。
痛みに耐え、ふらふらと向かった場所は小さな切り株が二つ向かい合っている場所であった。
耳鳴りがする……意識がどこか遠くに飛ばされる感覚。
すると、目の前に半透明の月華が見えた。
笑いながら誰かを呼んでいる。
(こっ――て。雪――)
月華についていくように、半透明の狐の妖怪が見える。恐らくあれが雪なのだろう。
「ということは、これは過去?」
二人が笑いあっている場面で姿は掻き消される様に消失して見えなくなった。
なぜだろうか、胸の奥が締め付けられるように痛い。
「今のは……」
頭を押さえながら一息ついていると、そこに露草が現れた。
彼は何かの包みを持っている。
「おお、いい所にいましたネー。これを雪の説得をしようと思っている方に託そうと思っていたのデース」
「これは……?」
手渡されたのは紙で包まれている小さな物体。
開くとそこには先程、露草が発見した櫛があった。
「それは月華の櫛なのデース。雪を説得するならば必要カナ? と思いマシテ」
「そうか……では持っていくとしよう」
「あ、その素手で触れてはっ!」
「……え、あ……」
視界が白くなり、彼の意識は遠く遠く、遠のいていった。
~過去・村~
夜の闇の中を少女が走っている。腰までの茶色の髪をなびかせ、彼女は息を切らしながら先を急ぐ。
その表情は明るく、手には包みを持っていた。
彼女の名は月華。この村の少女である。
「雪、待ってるかな。ちょっと苦戦しておそくなっちゃったから、きっと待ちくたびれてるよね」
彼女の手の指は細い布に巻かれている。血が滲んでいる所から恐らく台所仕事で切ったのであろう。
それ程に彼女は不器用であった。
おにぎりすら真面な形に握れない程に。
村の外れのいつもの場所。そこは雪が本来の雪に戻れる大切な場所である。
二人はいつもそこでおにぎりを食べながら今日一日にそれぞれあった事を報告し合っていた。
雪は村に滞在するようになってから、日中は人間として畑仕事や村の仕事を手伝っている。
「ふふっ。きっと元の姿に戻って、寝ているかもしれないわね」
雪がどう待っているのかと想像しながら彼女はいつもの場所へ急ぐ。
付いてみるとそこには見知らぬ男達が数人立っていた。
雪の姿はない。
「……え」
「やっと来たか、待ちくたびれたぜ? 月華」
「そうそう、雪なら来ないぜ……あの妖怪ならな!」
その言葉に月華は驚愕した。
完璧に隠していたはず、誰にも雪が妖怪であるところは見られていないのだから
気づく人間はいるなんてと。
「今、俺の仲間が奴と話し込んで時間を稼いでる、しばらくはここに来ないんじゃねえかな?」
「お楽しみの時間と行こうぜ……こちとら待ちくたびれて正直、我慢ならねえんだからよ」
「……っ!」
近くに落ちていた棒切れを拾い、果敢にそれを構えて見せる月華。
男達は笑いながら刀を片手で振り回す。
「あっはっはっは、いいねえ。そういう強気な奴じゃねえとな……ほら、もっと頑張れ頑張れ!」
男の振るう刀に吹き飛ばされそうになりながらも懸命に棒切れで攻撃を受ける月華。
足元はふらつき、いまにも倒れてしまいそうであった。
「おい、遊んでねえで早くやっちまわねえと、あの妖怪が来ちまうぞ!」
「ったく、わかってるよ……じゃあ、遊びはここまでだ」
ふっと腰を落とした男は素早く逆袈裟に刀を振り抜いた。
瞬間、月華の肩から血が噴き出す。痛みに叫ぶまもなく、刀の柄で腹部を突かれて仰向けに倒れた。
「……が、ああ、ぐ……う……」
血が広がり、地面へと浸透していく。出血量が多い、一撃で致命傷のようであった。
恐らくこの出血量では助からないだろう。
男は月華に覆いかぶさり、耳元で呟いた。
「いいか、妖怪になんか肩入れしたからこうなるんだ、精々悔やみながらあの世へ行きな……。
まあ、それまではたっぷり、楽しもうぜ……月華さんよぉ」
――――――。
呻き声すらあげなくなった月華の前に男達が立っている。
月華の身体は薄汚れ、血が滲み、破れ、引き裂かれた着物からは刀傷が見え隠れしている。
「なんだ、もうおしまいか……もうちっと楽しめると思ったんだがよ」
男の一人が月華の腕に刀を突き刺した。びくんっと月華の身体が跳ね上がるようにびくびく痙攣するが、
叫び声はなく、呻き声すらない。表情も変わらない。無表情のまま、光のない目が宙空を見つめている。
刀を引き抜くと、男は言う。
「ほら、もう死人同然だ。こうなっちまったらなんの面白味もねえ。刺しても突いても、叫ばねえ奴なんざ
死人以下だ。あとは、首切って鴉のえさにでもしてやるぐらいじゃ――――がぐっ」
それが男の発した最後の言葉だった。
周りの男達は何が起きたか理解する前に首と胴が離れて地面へと落ちた。死体すら残らぬほどの炎が
巻き起こり、辺りを明るく照らす。灯りの中に狐の妖怪がいた。
肩で息を切らしながら返り血に染まったその妖怪を彼女は震える腕で抱き締める。
「ゆ、き……きて……く、れた、んだ……」
もう何も見えないその瞳で雪を見ながら月華は優しく雪を抱く。
「ごめん、ごめん…………俺が、俺が、もっと早く気づければ……君はっ!!」
大粒の涙を流しながら、雪は血が付くことも構わずに月華を抱きしめる。
月華の体温がみるみると下がっていくのを彼はその腕を通じて感じていた。
「ふふ、やさ、しいん……だね……ゆ、きは。わたしが、いな、くて、も……
ちゃんと、みん、なと……な、か……よ……」
「いやだッ! いくな、月華!! 君がいないと俺は、俺は……っ!」
「…………」
「げっ……か? ねえ、返事してよ……答えてよ、いつもの優しい声で……ねえ、
月華、君の笑った顔を見してよ……うっうっ……月華、月華あああぁぁぁぁぁぁあああああ!!」
~現在・村~
村の民家から疲れた表情の少女が出てきた。その身長は高く、高身長と言える部類だ。
鍛えられた身体は何かのスポーツをやっているのであろうと容易に予測させた。
そんな少女――
羽生 碧南
が肩を落とし、はあ……と溜め息をついているのだ。そこそこに目立つ。
村人が何かあったのかと見つめているが、特に少女は気にしていない様子。
「ああ、これで何件目かな……8件? 10件?? わかんないけど……全然月華さんに関する
話が聞けないな……全部回ってみて、何も聞けなかったら……はあ……」
いつもは明るい表情が取りえの彼女であるが、流石にここまで続くとその表情にも曇りが出る。
どの家に行っても最初は好意的なのだが、月華の話を持ち出した途端に態度が急変。
さっさと出て行ってくれとばかりに締め出されてしまう。
人によっては何か汚らわしいモノを見る様な目で見てくるのである。
「一体月華さんが何をしたって言うの……? 口にする事すら許されないなんて……」
「お若いの、月華の事が……知りたいのかね?」
後ろを振り向くといつの間にやら背中の曲がったおばあさんが立っていた。
(気配がしなかった、え、誰、どういうことなのっ!?)
そう、この老婆には気配が無いのである。そればかりか、どこか人間ではない雰囲気を漂わせていた。
冷たく、それでいてどこか澄んでいるような……常人が纏うはずのない空気を纏っている。
「どうしたね? 聞かないのかい? 聞かないのなら私はもう行くよ……?
あまり長居はしたくないんでねぇ……」
「す、すいませんっ! あんまりにも急に現れたものでその、びっくりしてしまって
まさか妖怪かなーとか疑っちゃいまして! すいませんでした!!」
深く頭を下げる彼女の事を見て老婆は大笑いをした。
「あっはっはっはっはっは! 実に正直で気持ちのいい性格をしている子だねぇ。
うん、気に入ったよ。あんたになら話しても良さそうだね……あの子と村人の話をさ」
立ち話もなんだから、と老婆は村の端にある自分の家へと彼女を誘った。
羽生は何の疑いもなく老婆についていく。なぜかはわからないが、妖しくはあっても
悪い人には見えなかったからである。
家に入るとそこには簡素なベッドと木の机。簡単な布で縫われた座布団が二つ置いてあった。
座って待つように言われて座ると、少しして老婆がお茶を出してくれた。
「すまないねえ、あいにく茶うけになるようなものは切らしていてね」
「いえ、お構いなく。それで月華さんの話というのは?」
「よし、話しはまず月華がある男と出会ったことから始まるのさ」
老婆はゆっくりと語りだし、それを羽生は固唾を飲んで見守った。
「その男は森で山菜を取っている月華に出会ってね……つい話しかけてしまったんだよ、
初めて見て……きっと一目惚れだったんだろうさ」
「つい?」
疑問点はそこである。普通に人間同士であるならば話し掛ける事は特に珍しい事ではない。
「そう、その男とは雪……狐の妖怪さ。彼は人間の女である月華を初めてみて……心打たれてしまったのさ。
妖怪は人間と関わってはいけない、という妖怪の禁忌を犯してね……」
「人間と関わってはいけない……禁忌……ですか」
何故老婆はそのことが禁忌だと知っているのだろうという疑問も浮かんだが
とりあえず彼女はそれを飲み込んだ。今大事なのは月華達の話を聞くことである。
「そうさね。彼らには彼らの流儀、掟がある……どこの世界も同じ事さ。
そして雪はそれを破り、月華と交流を深めていった」
老婆はお茶をひとすすり。
それから老婆が話した。
雪は人間を知りたがっていたという事。そして月華はその事に協力しようと思い、人間に化けて
村に住むことを提案した。雪もそれを快諾し、村に住み始めた。
最初はそれもう上手くいっていたとの事である。
雪は村の仕事を積極的に手伝い、月華も不慣れな雪を助けた。
その様子を見ていた村の中の者達はいずれ二人が祝言を上げるのだろうと思っていたそうだ。
そんなある日、月華の前で人間化を解いてしまった雪の姿を村の青年が見てしまったという。
村の青年はあろうことか村長にそれを報告し、妖怪にみんな騙されていると言って回った。
妖怪に対する恐怖、不安は瞬く間に膨れ上がり……いつしかそれは自分達が殺されるんじゃないかという
疑心暗鬼へと繋がっていった。
そこから事が起きるまでは早かった。
村長に報告した村の青年は、かねてから月華に想いを寄せる同じ青年達を集め、
俺達を裏切って妖怪なんかに肩入れしたあの女を殺してしまおうと持ちかけた。
勿論、殺す前に色々楽しむ腹づもりだったらしい。
そして月華は無残な惨殺死体となって発見された……身体をばらばらに引き裂かれた青年達と一緒に。
「まさか……そんなことがあったなんて……酷い、酷過ぎ……る、あ、れ……?」
視界がぼやけて薄くなる。老婆の姿が次第に変わっていくのを薄くなる視界でとらえていた。
その姿は白色の長い髪の女性であった。豪華な着物を着て、扇子を持っている。
「おやおや、眠くなってしまったようだねえ。ゆっくりとおやすみ……。
あんたみたいな子がこの村にたくさんいたのなら……今回みたいな事は……」
そこまで聞いて羽生の意識は闇へと沈んだ。
――――はっと羽生が目を覚ますと、そこは何もない村外れだった。
草が生え、花が咲き、どこにも家の様なものは見当たらない。
さっきまでの事は夢だったのだろうか。
そう考えていると彼女の耳に狐の鳴く声が届く。
それを聞いて不思議とさっきの最後の言葉を思いだしていた。
(あんたみたいな子がこの村にたくさんいたのなら……今回みたいな事は……)
あの人は誰だったのだろう。
もしかしたら、雪の……。
考えるより、先にやるべきことがある、予測も憶測も後にして足を村へと向けた。
得た事実を他の仲間に伝える為に羽生はその場を後にした。
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SF・ファンタジー
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動物・自然
定員
20人
参加キャラクター数
18人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年03月30日
参加申し込みの期限
2015年04月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年04月06日 11時00分
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