ゴールは寝子島変電所｜リアクション

ゴールは寝子島変電所

【小野田万里の最後】

　万里が目覚めた時、そこは……至福だった。
　全身がぬるぬるとする。どうやら、高級オイルのマッサージをされているようだ。
　しかも、目の前にいるのは彼女好みの美少年……。
　全身をもみほぐすかのように、優しくマッサージをしてくれている。
「あっ……そう、そこ。いい」
「どこかかゆみはございませんか？」
　声は甘くささやかれる。
　肩や腰、普段の生活から凝っているところを優しく、優しくほぐしてくれる。
（あぁ、そう、このままイケナイところに手を伸ばして、イケナイことに誘って、結婚……そう、結婚するの）
　ぽわぽわと優しい夢の中、万里は今幸せだった。
「少し、痛くしますね」
　ちくっ、ちくっと全身に痛覚が走る。
「あら、やだ積極的……ふふ、素敵なお姉さんの魅力にやられちゃった？」
「えぇ、とっても」
　にっこりと青年が微笑むと、まさに全身が貫かれた痛みが走る。
　少年の顔は見えない。手は触手となり、万里の周囲はイソギンチャクの口内ということが分かる、全身が胃液のようなところに浸かっている。
「えっ、そんなとこまで撫でてくるの……？　かわいい顔して大胆じゃない……ならあたしも。　って、えぎゃぁぁぁぁぁっ！　いたいいたいいたいっ！　いだぁぁぁああ゛あ゛あ゛っ！　あっ！」
　肩に、足に、ふくらはぎに、お腹に、首に、痛みが走り、赤い何かが見えたところで、万里の意識はぼんやりとしていく。
（そういえば……何か脱出するんだっけ？）
　イソギンチャクの中で、万里は幸福と痛みに包まれたまま……消えた。