びょうびょうと、強い風が秋の寝子島で吹き荒れている……。
風にはさびたような匂いがし、どことなく息苦しさを感じさせる。
島は質量的な闇が、まるでペンキを垂らしたように重く空をぬらしていた……。
突如、風が止まったと思うと、老衰したどう猛な犬のようなうなり声に似た音を立てて、寝子島の周りを取り巻き始める。
ばち、ばち、ばち。
風はやがて雷雲を呼び、雷雲は雷を起こす。
闇の中に幾筋もの光が走り、突如、暗鬱たる闇の隙間から雷光が現れ、寝子島のある場所を打ち付けた……。
不特定の磁場が発生し、世界は改変されようとした。
しかし、巨大な結界がそれを許すはずもない。
だが、少数ながら……改変された世界へ墜ちたものたちがいた。
○
日々野 結衣香
……?
ぺち すり すり
……!
すり すり ひた
……~~!
ぎゅっと、目をなるべく開かないように、かつ急いで彼女は移動していた。
しかし、まるでそれをあざ笑うかのように後にゆっくりと何かがついてくる。
だが、振り返れど正体は見えず……しかし、だんだんと近くなってくるのが分かる。
周囲は薄暗い……空の雷を頼りに僅かに光り判別できる道を進む。
……ひた
……ひた
……ふっ
「ひっ!」
おびえる結衣香の耳元に荒い息がかかったような……気がした。
生暖かい、質感を感じて思わずその場に蹲ってしまう。
場所としては旧市街に当たるここは、柱の陰にそっと隠れることが出来た。
……。
……。
そして相手もそこで止まる。
まるで、出口のない悪夢に迷い込んでしまったような感覚……。
おそるおそる目を開けた――その瞬間。
「いいぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁあああああああっ!」
強い力で後から拘束される。
あらん限りの声で彼女は叫んだ……。びりびりと、助けを求めるように。
しかし、無情にも逃れることは出来ない。まるで、耳を探しているように、ヒルのような何かが相手の体から現れてずるずると首から上に肌を伝う。
普段滅多に慌てない結衣香であっても、これはたまらない。
(何なんですか?! 何が起こってるんですか? ここままでは……)
――喰われる!
原始にあったであろう動物的本能が警鐘を鳴らす。
「――いやっ!」
咄嗟に、蹴り上げるように相手を奇跡的に引きはがす――そして結衣香は全力で走った。
○
磴 琥珀
琥珀は、ゆっくりとシーサイドタウンを歩いている。
「まるで、末法思想に出てくる餓鬼草紙の絵そのものですねぇ」
それらを見たとき、ぐっとのしかかってくるような精神的重圧があった。
心が騒ぐ、嫌だ、気持ち悪い、逃げろ。
だが、彼はそれらに押しつぶされそうになりながら、落ち着きを得ようと心を殺す。
しゅぅ しゅぅ
まるで熱帯夜のように空気が揺らめいていた。
そいつらは、まるで腹を空かせたハイエナのようにだらしなく舌を出して、琥珀の方を伺っている……いつ襲いかかろうか? いつ喰おうか?
醜悪!
そう言われても不思議ではない。
時折、動けなくなった仲間の死体らしきものを引きちぎり、食らいついている個体も居る。
しばらくすると、その個体の腹が割れ、新たに二体の個体が現れた。
新しい個体は、きょろきょろと辺りを見回すと、琥珀を見つけた。
じゅるり、と獲物だと言わんばかりの顔をして、琥珀の方を向いた……そして飛びかかるように襲いかかってくる。
「……くっ」
琥珀はその場から離れることを優先した。
「……一体、何が起こっているのでしょう」
そんな事を考えつつ、ずり落ちためがねを直す。
そのとき、声が響いた。
声の主はテオこと、
テオドロス・バルツァだ。
「よく聞け! 緊急事態だ!」
テオの声に、その寝子島に隔離された人々は耳を傾けた。
に・げ・ろ!
じんのです。復帰第一弾はまさかの冬ホラー!
今回は二回目の逃走系のホラーをやります(前回:ゴールは落神神社)
どんどんもりあがっていきましょう。
本シナリオは、アクションを数行で投げたり、白紙だと大変なことになります
PLさんは寝子島の地図を見ながら頑張ってルートを考えて逃げましょう
マスコメをきっちり最後まで読むことをお勧めします
特に*特別ルールは一読してください
*今回の解決法(PC情報)
誰か一人でも寝子島変電所にたどり着き、敷地内にある
『巨大な球形の宝玉(オーブ)』を破壊する(※入れば位置は分かるものとします)
そうしたら帰れます
誰か一人でも脱出すればPC側の勝ちです
破壊するとは文字通り破壊することを指します
なお、オーブの大きさはバスケットボールくらいで台座の上に乗っています
オーブの玉はガラス玉で出来ています(落とせば破壊は容易です)
ただし、オーブはなにやら帯電しているようで、そのまま触ったら危ないです
台座の付近もなにやら六芒星をかたどった黒魔術的な装飾がしてあります
*灯りについて
基本的に世界は闇に包まれて、現状は街頭と時折の落雷が頼りです
車や家の灯りは現在消えていますが
自販機などの設置されていた機械は稼働しています
*そのほか自然現象?
現在、強風は止まっています(※雨は降ってないことに注意)
雷雲があります 時折落雷します
空気がよどんでいる上に、真夏のサウナのような息苦しさを感じます
(呼吸が出来ない訳ではないです)
島そのものが軽度のサウナのような感じなので長時間のダッシュは不利になります
(短時間で小刻みに動くか、長時間ゆったり動くかは自由)
特殊な磁場があるので、電子機器は無効化されます
*持ち物について
アイテムを1つ所持することが出来ます(要アクション明記!)
一般的にそのキャラクターが持っていても不自然でないものなら持ち込めます
(出来ればで良いので偶然持っていたという風にするなど、
持っているアイテムに関しては偶然性を持たせる協力をお願いします)
そこら辺の家などに進入し何かを入手することは可能ですが
基本的に家に入るには特殊な技術が必要です(解錠技術とツールなど)
PCは服を着ている、アクセサリーをつけている程度です
(なお、規約に抵触するものは描写できません)
*スタート地点
Ⅰ:寝子島神社付近(J4) 難易度:普通(単独は困難)
追ってくる生物:影から這い出る脳髄喰らいらしき何か
力が強く、発見され拘束された場合幸運が起きなければ単独脱出不可能
単体で行動し、灯りのある付近で動きます
(複数で行動しないわけではないので注意)
脳みそを吸われたい人はこちら(この敵は倒せません)
Ⅱ:大観覧車(K11) 難易度:困難
追ってくる生物:大目玉のイソギンチャク
敵が多分一番やっかいだが、距離的には最短
複数で行動するにせよ、単独で行動するにせよ目を合わせないようにしよう
優しさ? に包まれて死にたいならこちら
Ⅲ:星ヶ丘教会付近(C8) 難易度:容易
追ってくる生物:餓鬼魚人(餓鬼+魚人のようなもの)
敵が一番多いですが、動きが緩慢です
多分一番逃げやすいですが、遭遇率も高いです
直接食べられたい方はこちら
*特別ルール
1~3やそのほかの生物と出会った場合20面ダイスを一つを振ります。
(同じ生物に二度あってたとしても振ります)
(以下、1d20と記載します 20面ダイスが一つという意味です)
結果は書きます(ガチで振りますよ~)
1d20の結果表
1 PCが発狂し確実に死亡する行動と取ります
2~9 PCが恐怖を感じ、行動がやや阻害されます(動きか鈍る止まるなど)
10~19 PCは恐怖に耐えます 動きは阻害されません
20 何らかの奇跡が起きてPCにとって有利な結果になります
※自分のキャラは発狂しないぜ! って思う人へ
この世界は、その手の生物にエンカウントしたら
そういう風になる仕組みの世界なので強制的に振ります
苦手な人は回れ右することをオススメします
*ガイドに登場したPCのPL様へ
参加されなかった場合は、逃げてそのまま帰還したことになります
(リアクションでの描写はありません)
また、別の地点から始めたい場合、アクションにその旨を書いてください
いつの間にか飛ばされていた事にします
*死亡について
当然のようにキャラクター殺す気でやります(死亡時の描写あります)
別世界での死亡になりますので、現実世界で死ぬことはありません
しかし、だいたい何らかの後遺症が残る可能性があります
(死亡するときの状況による)
後遺症は短期間の予定です
*注意事項
1,どう逃げるかを重視します(どこをどう逃げるとか)
2,死ぬかどうかはある意味運です(ダイス振りますからね)
3,死ぬ場合は潔く死にましょう
4,死亡ロールや狂気ロールを書いておくと描写があるかも!
5,困ったらサンプルアクションなどを見ておくと良いでしょう
6,敵は3を除いて基本的に倒せません これ大事
7,失敗した場合は全員が影響を受けて帰還します
その場合、どのような影響かは不明ですが重い症状とします
8,ろっこん発動ついては個々のケースとアクション次第となります
PL様におかれましては、注意事項やらっかみタイム内でPCが受ける影響などを考慮して参加してください。また、グロテスクな表現などを使いますので、そこら辺が大丈夫な方は是非どうぞ。
(※念のため、公開できる範囲内での描写します、とも付け加えてきます)
では、追いかけてくる生物の紹介です。
*追ってくる生物の詳細
1:影から這い出る脳髄喰らいらしき何か
シナリオ表記は『脳漿喰らい』と表記されます。
影があるところに彼らはおり、まるで獲物を捕食する肉食動物のように
狙われた後、足音のようなものが聞こえ
奇襲するかのように影から飛び出してきます
蝶々のような頭、胴体は蟻に近く頭と腹と尻があり、頭以外は蛭の集合体のように黒く蠢いており、それらが蠢いてキャラクターを拘束します
尻の部分から足が生えており、ひれのような足を持ち二足歩行をします
捕食するときは、まず獲物の後からゆっくりと迫っていきます
そして影から這い出て、獲物を拘束し蝶が花から蜜を吸うように細く長いぬらぬらしたものを伸ばします
それを耳の中へと入れ、ちゅうちゅうと脳を吸い上げます
ただし、体重が軽いので強い力に吹き飛ばされやすいです
(何かしらの方法で倒してもほぼ瞬時に復活します)
2:大目玉のイソギンチャク
大目玉のイソギンチャクは主に三つのパーツから出来ています
まず、頭部はイソギンチャクそのもので、その胴部のあたりに目がぎょろりと一つあります
それに胴部として芋虫のような太くて厚い胴部があり、足が8本生えています
(ケンタウロスとかをイメージしてもらえればわかりやすいかもしれません、馬の部分が芋虫の足になり、人間の部分がイソギンチャクになってます)
素早く接近し、丸呑みにします
また、目玉には何かしらの催眠力があるようです
胴部や足は非常に硬いですが、イソギンチャク部分は柔らかいです
再生スピードが速いですが、若干タイムラグが生じます
また、イソギンチャクの部分から短いですが触手のようなものを伸ばします
非常に強い光に照らされるとその部分を避ける傾向にあります
3:餓鬼魚人
魚人の成分と餓鬼の成分を足した生物です
頭が餓鬼、胴部が魚、足が餓鬼で油でてかてかしています
基本的には集団で襲いかかってきますし、共食いで増殖中
生まれた個体は非常に食欲が強く、匂いに敏感です
(三つの内比較的に)遅い
(三つの内比較的に)弱い
大事なこととして 再生しない
体そのものはぬれた毛布みたいな感触で
全身はねっとりと粘膜のようなものに覆われており
鋭い牙で獲物を狙う
暗い場所でも妨げなく動ける ジャンプ力はある
※どの生物も倒しても倒しても沸いてきます。
テオの助言によれば「戦おうとするな、逃げろ」との事です
※そのほかの生物
その他にも謎の生物がいて、出会うこともあるでしょう
何がどこにいるかは分かりません
(例:川とか水とか危ないですよねー)