ゴールは寝子島変電所｜リアクション

ゴールは寝子島変電所

【境内から始まる恐怖】

　寝子島神社の境内から、二つの影がゆっくりと市街へと降りていた。
　むっとする熱気が二人を突き上げ、顔をしかめる。
　その瞬間……。　
　かさっ　かさっ
　という音が聞こえ、二人はうなずき合うとそのまま片方の影……女子のほうが先導するように市街地へと紛れ込む。
　影のもう一人の男子の顔が、女子の持つ懐中電灯に照らされて明るみに出る。
　男子の方は御剣刀。
　女子の方は桜庭円。
「思ったより、熱風が邪魔だねー」
「壁を利用して強風を防ぐしかない」
　そんなことを言いつつ、急ぐ。
　だが、かさかさ、かさかさ、とゆっくりと音が迫る。
　やがて、足音らしきその音が変質していく。
　ぺちっ　すり　すり
　　ぺちっ　すり　すり　すり
「……どこだ、どこから来る！」
「止まらず走るよ！」
　旧市街の家のブロック塀などを利用して、肺に負担をかけないように走る。
　だが、入ってくる熱風、そして暑さは走る気力を徐々に奪っていく。
　落ちた落雷が時折道を照らし出し、懐中電灯の明かりとあわせて変電所方面へと進む。
　……ひた
　　　……ひた
　　　　　……じゅる
　その瞬間、円の懐中電灯に向けて、突如素早く絡みつく何かがある。
　ぬらぬらとするそれは、円に嫌悪感を思わせるには十分だった。
　どこからともなく、現れたそれは光に反応し、食らいついた。
「くっ、放せ！」
　円がそれをふりほどこうと腕を振り上げる。
「このっ！」
　刀もまた、木刀で謎の生物がいるあたりを打ち付けるが、手応えはない。
　そして、その瞬間二人は見てしまう、円の振り上げた腕がそのまま相手を照らしてしまったのだ……脳漿喰らいが映し出されそれを直視してしまう。
（御剣刀1d20→15）
（桜庭円1d20→5）
「や、やめてっ！　もういやだー！　帰りたいー！　にゃーくん！」
「さ、桜庭！　えぇい！」
　愛猫の名を呼びつつ取り乱す円に、刀が慌てつつ脳漿喰らいを引きはがそうとする。
　ろっこん【加速】を使い、円を引っ張り無理矢理にでも離脱した。
「はっ、ボクは何を」
「いいから逃げるぞ！」
　そう言って、二人は再び暗闇の中を走り始めた。

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