木天蓼大学の日常　～休みの時間、何してる？～｜リアクション

木天蓼大学の日常　～休みの時間、何してる？～

【カフェテリアにて】

　ちょうど昼下がりの時間。
　カフェテリア……そこには、一人の女性が居た。
　その女性は行き交う男子学生を値踏みするようにチェックしている。
　そしてその目は爛々と輝いているようにも見えた……その女性とは小野田万里である。
（あの子メガネが惜しいなー、一緒に選んであげたい）
　と、目が合った大学生にちらりと流し目をする32歳。
　ふいっと、その学生は目をそらしてそそくさと歩み去ってしまう。
（あの子ハーフかな、いいなー）
　今度は、軽く意識するように目を合わせて微笑んでみる。
　またもや、目をそらして歩み去って行く。
（畜生、無視されてる）
出会いのためか、暇つぶしか、あたかもＯＧか何かのフリして何食わぬ顔で構内に入ったら、余計に傷を負った万里であった。
　人通りの多い辺りを重点的に。端まで行ったら人気のない辺りで方向転換してさり気なくもう一度同じ道を通る、を繰り返したりしていたが、結局はカフェに落ち着くことになったという。
　どう考えても、不審者である。
（それもこれも全部、空から美少年が降って来ないのが全て悪い！　あー、研究に疲れて飛び降り自殺を図った学生をあたしが颯爽と受け止めて、そのまま悩みの相談に乗ったり何やかんやでめでたくゴールイン！　とかならないかなー？）
　むしろ専門的な研究だったら、相談も何もあったものでは無いと思うが、飢えと渇きの32歳の想像の翼はどこまでも羽ばたいていく。
　あれやこれや、注文した珈琲が徐々に覚めていくが、内心にやにやと笑いながら万里は時折通るイケメンにアプローチをしてみたりしていた。
（イケメンが誤ってあたしにコーヒー引っかけて、「ごめん、お詫びに一杯奢るよ」から始まるラブストーリー……が始まるどころか、気配すらないっ！）
　結局、バイトの時間までの暇つぶしと出会い探しのはずが、余計に心に傷を負っただけであった。
　残念。
　