木天蓼大学の日常　～休みの時間、何してる？～｜リアクション

木天蓼大学の日常　～休みの時間、何してる？～

【トーク＆トーク】

（Oh my God！　まだ写してなかったのに消されちゃったよ。どうしよう）
　3限の終わり、十二月晦日杏は焦っていた。
　英語の授業が終わり、まだ写し終わってない箇所がいくつかあるのにもかかわらず、黒板の文字は非情にも消えていく。
　そして、消した教授はさっさと帰ってしまった。
「……うぅ」
　と、杏は周囲を見回す。ほとんどの学生は立ち上がって移動を開始しており、唯一声がかけれそうなのは、メールをしている男子学生だった。
　どうやら、ギターケースのようなものを持っているので、バンドでもやっているのかなと思いつつ、思い切って声をかける。
「Hey！そこの君、少しいいかい？」
「俺のことか？」
　そう言って、携帯をしまいつつ杏の方を見る。
　名前は、唐沢一也。
　全身から授業だるいオーラを出しているが、杏を見るとそのオーラは消えていった。
（顔は知っていたが、こいつフレンドリーだな）
　一也のその考えは知らず、杏は話し始める。
「Noteを見せて欲しいのさ！　だってすぐ消すとは思ってなかったからさ……ちゃんと写せてないのさ！」
　と胸を張って言う杏。
「なんだ、ノート写し忘れてたのか、あいつの講義眠ぃもんな。しゃーねーって。今回はノートとってあったし見せるぜ」
　ほら、と苦笑しつつノートを見せる一也。
　差し出されたノートを見て杏は驚いたように言う。
「君は見かけに寄らず丁寧に書いてるんだね」
「あぁん？　汚く書いていればよかったのか？」
　杏の言葉に一也はノートを取り上げるふりをする。
「冗談冗談！　Thank's、助かったよ。そういや顔は知ってるけど君の名前知らないな
俺は十二月晦日杏！　これからも宜しく♪」
「唐沢一也だ。とっとと写せよ、時間は有限だ」
「サー！」
　といって、七分ほどで重要な箇所はすべて写してしまう。
　その間、一也は自作の歌詞を考えながら待っていた。
　あれやこれやと考えて、このフレーズは歌詞には転用出来なさそうかもしれないと一也は待ちながら思った。
「ソーリーでは、行きましょう！」
「おう」
　10分目ほどで教室を出て、次の教室へと移動する。
「……次も同じか？」
「……イエス」
　一也の問いかけに、杏は頷く。
「上級英語か、あの講義は流石にキツかった。授業スピードは早いし、覚えることもそれなりにあるしな。長文読解はどこに何が関連しているのか、細かい言い回しがどうもわからなくなっちまったぜ」
「あぁ～確かにhardかもしれないな、speedyだし、さっき見せてくれたお礼に教えるよ！　よければ、作詞の英語も見てあげようか？」
　杏の提案に、こいつ、と一也は杏の方を見る。
「……見てやがったのか」
「ちらりとね！　ギターケースでミュージシャンだと分かるよ！」
「まぁ、そりゃそうだわな」
　といい合いつつ二人は移動する。
　そうすると、すぐに次の教室が見えてきた。
「席とろうぜ」
「アンダスタン！」
　そして、一也は、授業を共に受けることになったのだが……。
「そういえば、聞いてよ！　スノボー大会が海外であってさ！」
「……」
　杏の高いテンションに少しだけ振り回されたのであった。

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