秋の空は危険がいっぱい｜リアクション

秋の空は危険がいっぱい

○収穫！

　脚立を広げ、さっそく登るのは白燕。
「怪我をしないように落ちないように気を付けて……と」
「だいじょうぶ？」
　見守る子供達。白燕は安定した身のこなしで柿を枝から切り落とす。
「キャッチ！　やった、うまくいった！」
「ぼくはフードに入った！」
　下で待つ海美や仄は落ちた柿をキャッチしてはしゃぐ。
「剪定する時に道路側には伸びない様に切り揃え敷地内に枝を伸ばせるようにしたいですね。……鳥さんのせいではなく剪定してなくて実が付き過ぎて落ちてる可能性もありますし。持ち主さんの許可が下りれば実が終わった頃にうちの庭師に剪定を依頼してみましょう」
　脚立を押さえる時子がつぶやき、聞いていた真央も言う。
「柿は素人剪定だと多分実がならないのだ……庭師さんがやってくれるならそのほうがいいかもしれないのだ。ただいがぐり直撃は犯罪なのだ、庭師に頼むまでもないのだ」
　時子はろっこんで鳥に協力を呼びかける。
「鳥さん達、今から実を収穫しますけど驚かないでくださいね……それから、食べるときは塀のこちら側に移動して食べてもらえませんか」
「カア」
　時子と仲良しの鳥さんたちは、わかったと言ってくれた。

「ただいま。そっちも道具を借りられたのか」
　修と護が帰ってきた。
「修ちゃん、護ちゃん、こんにちはなのだ。栗の剪定は後でやっておくから任せろなのだ」
「こんにちは。そうですか、ありがとうございます」
「……何か笑みが黒い気がするんだが」
　無邪気に感謝する護。修は真央の笑顔に違和感を感ずるもそれ以上は追求を避けた。
　柿の実を取っている皆を見て、空いている栗の木へ向かう。
「僕も脚立に登って取ります」
「それじゃ俺が押さえていよう」
　二人は軍手とヘルメットを身に着けた。籠を背につけた修が脚立を支え、護が登り始める。
「う、うわあ、高い」
（恐いなあ……でも八神さんしっかり押さえててくれるし頑張らなきゃ……）　
「気をつけろよ」
「は、はい……」　
　へっぴり腰で鋏を振るう護だが、脚立の上でバランスを気にしながらだとあまり遠くまでは手を伸ばせない。
　さらにカラスが近くに飛んできた。
「ひゃっ！」
「あっちだ、あっちなら柿がなってるぞ」
　カラスを誘導しようと、修は人がいないほうの柿を指さす。
「カラスさん……あちらの柿が美味しいですよ」
　時子も、飛び入りしてきたカラスにろっこんでお願いした。
「すみません……けっこう難しいですね」
　どうにかバランスを崩さずに済んだ護が言う。
「無理はするな。ケガをしては元も子もないからな。枝を揺するだけでもけっこう落ちるぞ」
　護が脚立から降りると、修は人のいないほうに枝を揺すり、落ちてきた栗を火ばさみで籠に放り込む。
「難しいんだねー。柿、いっぱい取れたよ。甘いのだといいなぁ♪」
　凛も、柿に続いて栗を拾い始めながら言う。

　あちこち移動して実を取り終えた白燕が、脚立から下りてきた。
「収穫した後はみんなで食べるといいと思うぞ。食べきれなかったら配ればいい」
「栗、僕ももらっていい？」
　ちょっと甘えるように仄が言う。
「もちろんだ」
　護と共に、修は今度は籠を腰に柿を拾い始める。時折新聞紙を挟みつつ柿を入れる様子を海美が不思議そうに見る。
「どうしてしんぶんし？」
「柿は傷つきやすいからな。新聞紙を入れてクッション代わりにしているんだ」
「へえ、すごい！」
「突かれて穴が開いてるのはゴミだからゴミ袋にポイポイ、だ」
「もったいないけど、ポイポイ！」