秋の空は危険がいっぱい｜リアクション

秋の空は危険がいっぱい

○みんなで食べよう！

「たくさん採れましたね。これでもう道路には落ちて来ないかな。まだけっこう残ってますが……」　
　木を見上げて護が言う。
「落果防止に柿を鳥の取り分残さず丁寧に取るのだ」
　と主張するのは真央。
「待て、真央。木守りと言ってな……来年もよく実るようにと、木に一つ二つ取り残しておくんだ」
　修が説明する。
「カラスさんやヒヨドリさんたちのためにも残したいですね……」
　時子も言う。
「とったみは、ここでたべよう！　いるみんなでわけっこして、たべたのこりはおうちにもってかえろう！」
　海美が、柿にかぶりつく。
「おいしい！」
「とった実は持ち主さんや鳥さん達にも分けて。……鳥さん達とお話しながら食べたいです」
　時子がろっこんで鳥たちに声をかける。
「とても美味しいですね……」
　鳥と一緒に柿を食べながら、にっこり微笑む。
「栗は家に持って帰って母上にも食べてもらうんだ。メイドに頼めば美味しいものを作ってくれるぞ！」
　白燕が言う。
「私としては……天津甘栗が好みだがなぁ……。天津甘栗はさすがにメイドに頼むわけにはいかないし」　
　天津甘栗は栗を熱した小石の中で砂糖をかけながら煎ったものである。よく街頭などで売られている。
　その言葉に反応するように、樹弥も言う。
「栗はモンブランとか好きだけど……持って帰ったら母さん作れるかな？　マロングラッセでもいいな。甘くて美味しいけどいつも少しだけだから、沢山持って帰ったら沢山食べれるじゃん」
　そしてはっとしたように、
「いや、紳士としてそんな欲張ったりはしないが。もし貰えたら、だし」
　と付け加えたのだった。
「じゃあ道具を返しに行きます。あのー柿と栗、少しもらってもいいですか？　道具を借りたお礼にしたくて」
　護が言って、道具を片付け始めた。
　みんな満足そうに帰っていった。

「ちがうのおかあさん、よごしたんじゃないの！　おかあさんにもってかえってあげようとおもったの！」
　家に帰った海美は、べったり柿のついた服を見て驚いた母親に説明を始めた。
「よかった、はなしたらゆるしてもらえたー！」
　どこの家のお母さんも、柿や栗にびっくりしつつ喜んでくれたようだ。

　しばらく後、修と護は親戚の家で切ってもらった柿を持って再び自転車に乗っていた。
「寝子島神社までのサイクリング続行ですね」
「栗は下拵えに時間掛かるから一寸預かって良いか？」
「はい、もちろん。栗というと、モンブランとかですか？　美味しいですよね」
「ふむ、モンブランが好きなのか。ああ、任せろ」
　寝子島神社に到着して自転車を降り、修は栗を預かった。
　腰を下ろす二人の元に、猫や犬が寄ってきた。
「おまえたちも食べるか？」
　修は犬や猫にも柿を分けてやり、自分も食べ始める。
「この柿甘くておいしいー。なんだか秋、満喫ですね」
　柿を食べながら、護は満足そうだ。
　修の膝に乗る猫を微笑ましく眺めている。
　もう一匹も修の膝に乗ろうとするのを、
「遠矢の膝にも乗せてやろう」
　修が抱き上げて護の膝に乗せる。
「わ、あったかい。僕で大丈夫でしょうか……」　
「ああ。そっと撫でてご覧……」
　猫は満足そうにゴロゴロ喉を鳴らし始めた。
　二人は、もうしばらく幸せな時間を過ごすことにした。

　

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