秋の空は危険がいっぱい｜リアクション

秋の空は危険がいっぱい

○小学生たち

「わ！　すごいいっぱいの柿と栗！！」
　その朝、３年生ながら小柄な瀬良仄は、初めて見るたくさんの果実に声を上げた。
「わあ……っ！　凄いっ、栗も柿もたくさん実を付けてる！　……けど……」
　次々落ちてくる実を必死にかわしつつ登校する仄。
「ちょ……っと落ちてき過ぎじゃないかなぁ……？」
　カア、カア！
　枝には果実だけでなくカラスやヒヨドリたちも鈴なりだ。
「誰かけがしたら大変だよね、放課後、下に落ちた実だけでも片付けておこう！」

　そして放課後。
「たくさんあるなあ……」
　茶色の髪を揺らしながら、仄が落ちている実を片づけていると。
　べちゃっ！
　通りかかった１年生の小島海美の服に、枝から柿が落ちてきた。
「お気にいりのふくだったのに！」
　熟した柿が服にオレンジの染みをつけ、下に落ちる。
「だいじょうぶか？」
　３年生の煌白燕が駆け寄る。白い髪、赤い目はアルビノ（先天性白皮症）ならではの特徴だ。
「わっ……と、危ないな」
　５年生の樹弥・エヴァンズは、落ちてきた栗と柿からあぶなく身をかわした。
「それにこの甘い匂い。これじゃ帰るにも困るじゃんか」
　金髪に青い目。その瞳は生意気そうに怒りを映す。
「柿はともかく栗は落ちてくると危険だな。みんながみんなさけきれるわけではないし」
　白燕が言うと。
「帰り道の平和はほおっておけないよな。なんとか出来ないかな？　家主はどうしてこの枝を切らないんだろう？　お金がかかるからなのか、切るのが面倒なのか」
　樹弥が首をひねる。
「でもわたし、かたいかきよりこういうどろっとしたののほうがすきだ！」
　意外と元気に、海美は言う。
「かいぐいはダメだし、かっ手にひとんちのものとるのもダメだけど、おちてきたのならいいはずだ、もったいないからたべちゃえ！」
「いまおちてきたのはじめんにおちちゃったからたべれないけど、つぎはキャッチをねらってみよう……キャッチ！」
　だが、落ちてきた柿は海美の手に当たるとつぶれて飛び散った！
「うーん……いいほうほうをだれかしらないだろうか！」
「そうだね……あれ？　そういえばさっきからフードが重たい……あっ！」
　顔を上げた仄は、上着を脱いでフードの中を見て驚いた。
「フードの中に柿が入ってる……掃除に夢中で気が付かなかった……！！」　
「あっ、いいなあ」
　うらやましそうな海美。
「もしかしたらふくでつかまえるとかいいかもしれない！　よごれるけどきれいにせんたくしよう！」
「もらって帰ってもいい……かな？」
　迷うように仄がつぶやく。
「……この栗と柿。収穫してしまうというのはどうだろう。そうすれば当面は落ちることはないと思うのだが」
　白燕の提案に樹弥が頷いた。
「もし、切りたくないんじゃなくて、切りたいけど切れないなら、俺が代わりにやるって頼んでみようかな。そしたら家主さんも助かるし、皆も危なくないし助かるし。
紳士らしく頼み込んでみよう！」
「よし！　そうしよう！　そうと決まれば準備準備！」
　白燕は木のある家を確認しようとして、柿と栗の間に塀があることに気づいた。
「あれ、柿と栗、別々の家なのかな」
　柿崎と表札に書かれた家のチャイムを鳴らすが、誰も出てこない。

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