秋の空は危険がいっぱい｜リアクション

秋の空は危険がいっぱい

○夜の訪問者たち

　皆が去った夜、私服ジャージ姿で神社にお参りする小さな影があった。
「それでは強襲に行ってくるのだ軒を借りるのだ……多少葉っぱを落とすのは勘弁なのだ」

　そのころ、邪衣士が先ほどの道を通りかかった。
「落ちた栗に柿が刺さったり地面に落ちた柿がつぶれたりで道が地獄絵図みたいになってるな。片付けるか」
　鳥の悪戯か神魂の影響か、道に落ちた木の実はまた増えていたのだ。街灯に照らされて、道の汚れは夜でもわかりやすい。
「この時間ならさすがに取りに来る人も少なそうだから今のうちに掃除しておくか。一応家の人に一言断りを入れておいたほうがいいな、このまま夜中まで掃除してたら不審者に間違えられそうだし」
　お人よしな士はそう考え、柿崎さんの家のチャイムを鳴らした。
「すみませんねえ、柿は持っていってください」
　士は道具をそろえて戻ってきた。
「これをきっちり掃除するとなれば……明け方までには何とかなるかな？　明日はどうせ休みだしまぁいいか……ん？」
　ジャキジャキジャキ！
　そんな音と共に栗の枝が落下している。
「な、なんだ……誰だ？」
　小柄な影が、落とした枝を自転車荷台に括り付け逃走しようとする。
「栗泥棒？！」
「あれ、その声は……士ちゃんなのだ？」
「後木か！」
「なんでこんなとこにいるのだ？　あっ、さては迷子なのだ！」
「俺だっていつも迷子になってるわけじゃない」
　とはいえ耳の痛い士である。
「お前こそ何してるんだ、まさか栗泥棒か」
「栗は切り取って、邪魔にならないところに撒いておくつもりだったのだ。枝は持ち主の庭に叩き込むのだ」
　自転車のカゴを見れば、高枝切り鋏、生け花用鋏、軍手、紐、新聞紙と道具が揃っている。
「道路に出ないよう剪定するのは持ち主の義務だと思うのだ。寮の置き自転車準備し強襲に来たのだ。神社で星明り頼りに目につく限りのいが栗を切り落とすのだ、士ちゃんもやるのだ？」
「強襲って、穏やかじゃないな……家の人には断りを入れてあるんだ、やるならコソコソせずに堂々とやろう」
　胃が痛くなりそうな気分を振り払いながら、士が言う。
「わかったのだ、そういうことならここでやるのだ。二人なら作業も早く済むのだ」
「とりあえず道の掃除をするか。まず落ちている栗をどうにかしよう、こいつがあると落ちた柿の処理もままならん。段ボールか何かにひたすら放り込むか」
　士が落ちている栗を箱に入れている間、真央はさっき自転車に括り付けた枝を戻し、生け花用鋏でパチパチと栗を切り落とす。
「とりあえず地面に落ちる柿と栗を何とかしないとって思ったが……なんかそれなりに対策はされてるのな。つぶれてぐちゃぐちゃになった柿はゴミ袋に放り込むか」
　真央が切り落とした栗を段ボール箱に入れている間、士は潰れた柿をゴミ箱に入れる。
「植木屋呼ぶ手間がはぶけたな。栗だけでいいのか？」
「柿は素人剪定だと多分実がならないのだ。昼間子供たちに聞いたら柿は残してほしいと言ってたのだ」
　既に昼のうちに実は大分片づけられていたし、二人がかりということもあり、予定より掃除は早く終わった。
　士は道具を真央は栗の枝を栗田さんの庭に放り込む。
「柿はもらってもいいそうだ、一緒に分けよう。渋柿だったら泣きたくなるけどな」
「渋柿でも甘くする方法はあるのだ、問題ないのだ」
　掃除を済ませ、二人は猫鳴館へ帰っていく。
「……熊皮が毬栗だらけだな、帰ったら少し手入れするか」

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