何も死守しない普通の一日｜リアクション

何も死守しない普通の一日

　パジャマにカーディガンを羽織った姿で八神修は凛とした朝の空気を吸い込む。右手には新聞を持っていた。足元には子犬のカーキーがお座りの姿勢で待機している。何かを期待して頻りに尻尾を振っていた。
「わかっているよ。すぐに着替えてジョギングに行こう」
　無駄吠えは一切せず、ワン、とカーキーは答える。修は目を細めて頷き、青い空に向かって大きな伸びをした。
　その十分後、スウェットスーツに着替えた修が屋外でストレッチに勤しむ。新たに二匹の成犬が加わった。ラブラドールとシェパードに挟まれたカーキーはまるで親子のようだった。
「皆、揃ったね」
　修は三匹分のリード線を握ると緩やかにスタートした。直後に二匹の成犬が先頭を買って出る。カーキーは修の護衛役を任されたかのように誇らしげな姿で並走した。
「今日の海は一段と綺麗だね」
　修は走りながら穏やかな海に向かって微笑んだ。

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