影身始末　～寝子島辻斬り物語　弐－２～｜リアクション

影身始末　～寝子島辻斬り物語　弐－２～

【迷走、ちぐはぐ、そして……】

　大人という存在が、重要視される事もある。
　昨今、ろくな大人を見ないことが多いが、この人は頼りになるな。
　陽太は記士郎を見てつくづく思った。
　千歳と刀はどこか歯車が噛み合ってないかのようだった。
　が、戦闘に支障が出ていないのは記士郎が暗に場の流れを抑えたからか、と思っていた。
「で、籾井？　見た感じ戦国時代の武将みたいだけど…んー青鬼？　赤鬼なら知ってるのだけど、丹波の国の人で赤井直正だったかしら」
「おのれ！　いくら女子といえど容赦せんぞ！」
　現在、千歳の挑発が功を奏し、籾井の注意がそれる。
「それっ！」
　刀が横合いから突っ込む。
「ちょこざいな！」
　ぶぅんと大振りに日本刀が振り回される。
「ぐっ」
　がきっと、刀が飛ばされるも。
「今ですっ！」
「はいっ！」
　記士郎が千歳の付近にいた影人を切り倒し、合図をだすと、千歳のろっこん【正義一直線】が放たれる。
「むぉぉぉっ？」
　籾井がそれを律儀に受ける。結果、千歳の竹刀がはじけ飛んだ。
　そして、影人がそれを見て連携を阻害しようと動くが……。
「……させるか！」　
　以前影人と戦った記士郎らからアドバイスを受けていた陽太は自身のろっこん【ＣＣＣ】をちょこまかと影人の間を縫うように動かす。
　作られた粘土から生まれた動物たちのそれぞれに記士郎が提供したアングル材がまかれており、雑魚の影人は一瞬ひるむ。
　なお、そのとき数匹の作られた動物がちょろちょろと千歳の竹刀を拾いに行く。
一応、陽動は成功し注意はそれた。
「やはり有効とまではいきませんでしたか」
　記士郎がそうつぶやく。
　どこか口調は無理をしているようだ。
　それもそのはず、こういった事態になれているというほうがおかしいのだ。
（そういえば、ほかの人達はどうやって折り合いをつけているのでしょうか……いえ）
　首を振って出てきた考えを否定する。
　今は、目の前の敵に集中しなければいけない。
「援護はないぞ！」
「何のこれしき！」
　それを見ていた刀がろっこん【加速】を発動し、籾井を追い詰めにかかる。
「むぅんらぁ！」
　籾井は速度に対応するため、日本刀を手放し、槍に持ち変えた。
　リーチが広くなり、刀もコレはまずいと距離を取る。
　しかし、籾井の武者鎧の隙間にドスッと竹刀がめり込み、そのままぐっと前へと突き出た。
「ぐっ……ぬ？」
「そっちに気を取られたのが致命的だったわね……」
　複数の武器を使い分けるなら、切り替えの時には隙が出来るかも。
　それを正確に見極めた千歳がろっこんで竹刀を手放した後に、回収しつつ、タイミングを伺っていたのだ。
「馬鹿な、竹刀はあのときはじけ飛んで……」
　そう言って崩れ落ちる籾井のすぐそばを陽太のろっこん【ＣＣＣ】で作られた動物が通り過ぎると、あぁと納得したように崩れ落ちたのであった。
「……あとは、あの刀だね」
　そう言って、陽太は不敵に微笑むのであった。