影身始末　～寝子島辻斬り物語　弐－２～｜リアクション

影身始末　～寝子島辻斬り物語　弐－２～

【静かなり、殺意】

　ひび割れた空を見上げながら、哀坂子夜は普段の寝子島へと帰れないことに疑問を感じていた。
「待てども……待てども……この世界から……解放されない……」
　河原から移動し、ある程度の休息を取ったのでまだ戦えはするが、情報が入ってこないと動きようがない。
　ただ、そこらへんの影人を殲滅するだけでは終わらないことは分かっていた。
　そして、ともに戦っていた矢萩咲の安否も気になる。
　そう考えていたとき、びりびりとこの異世界の中にある【何か】が増大していくのが分かる。
　人間が持っている第六感のようなそれに近いもの、一種の生存の本能とも言える感覚が、がんがんと警鐘を鳴らす。
「どうやら……まだ、…残っている……みたいだね……行こうか」
　誰ともなしにつぶやく子夜。
　移動中、テオことテオドロス・バルツァの声が響き……、三カ所の敵と、斬られた味方や新しい味方の来訪を告げる。
「……そう、か」
　進路を妨害してきた影人を切り伏せながら、子夜は進む。
　九夜山へと、強敵と相対するために。

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