影身始末　～寝子島辻斬り物語　弐－２～｜リアクション

影身始末　～寝子島辻斬り物語　弐－２～

【激突、アウトレットモール】

「テンチョーね、音羽は竹内音羽って言います、また助けてくれてありがとう！」
「……今更だが、なんとか間に合って良かったぜ」
　音羽と託志はいったん戦線から離れ、音羽の体力の回復に努めていた。
　音羽は折り鶴を折りつつ、自分のろっこんの説明と……芹沢を倒す作戦。
　一人じゃだめだったけど、みんなが居れば出来る。
「あんまり時間かけてると大っきい影が暴れちゃうから、急がないといけない感じぃ」
「じゃあ、俺もあいつらの加勢に……」
　と、託志が戻ろうとしたとき、くいっと服を引っ張られる感触がした。
「あっ……」
　自分でも無意識だったのだろう、思わず引っ張った服の裾と自分の手を音羽は見比べる。
　それを見た託志は頭をがりがりっと掻きつつしゃーねーなとつぶやいて、音羽の頭をぽんっと叩いた。
「早く鶴を折れよ。ちゃんと守ってやるから」
「……うん」
　そう言って、頼もしげな笑みを託志は浮かべ、音羽は静かに頷いたのであった。

　一方。
「どわははははははっ！　おなごじゃおなごー！」
「こっち来るななのだー！」
　芹沢が大いに暴れている。標的は現在真央になっているようだ。
「やーんかもちゃんビビリ？　ビビッテル？　女の子ばっかりねらってさー！」
　おどけたように武道が芹沢を挑発するも。
「平間ぁ、あいつうるさいから黙らせろ！」
「ちっ」
　すぐさま平間が邪魔をする。
　そして、芹沢の怪力に対抗できるかは分からないが、その役目を期待されている鴻はがっちり雑魚の影人たちにガードされている。
「邪魔だ、影野郎がぁ！」
　といって、ゴルフクラブやらのアウトレットモールにあったありもので戦っている。
　なんというか……。
「新撰組最凶の芹沢局長とお見受けするのだ、是非一手ご指南いただきたいのだ！」
　と最初は言っていた真央ではあるが、万策尽きつつあった。
　コンビニから拝借した火炎放射、目潰しなどなどは影人に対して有効ではないらしく、芹沢にあてようにもその頃にはすっかり距離を取られている。
「がおー！」
　苦し紛れに近いが、ろっこん【にゃにゃにゃがおー！】で愛猫を召喚し、芹沢にぶつけるも……。
「フシャー！」
「鞠みたいによう跳ねるわ！」
　あっさりつままれてしまう。
「今なのだ！」
　その隙を突いて真央はモップで刺突を繰り出すも。
「返してやるぞ！　ほぅれ！」
　と、がおーがバスケットボールの球を剛速球で投げられたかのように放り投げられる。
　しかも、投球モーションはほぼ無く、まさに怪力といったところだ。
「ぐぬぬ」
「なんて怪力だ」
　真央と武道が苦しげにうめく。
「……惚けるな！　動けぇ！」
　鴻の言葉にびくりと二人ともが動く。さすがは運動関係者と言ったところ。
　二人がいた位置に、影人が踏み込んでいた。
　果たして、逆転の目はあるのか……。
　そう、それはすぐそこまで迫っていた。
「できたしぃ！」
「よし！」
　音羽がうれしそうに声を上げる。
　託志もこれで、戦線に復帰する。
　短時間で一人一匹分の鶴は折れた……。
「頑張ろって感じぃっ、テンチョーよろしくぅ！」
「っ、ってこら気安くケツを叩くな！」
　ばしんと、託志のおしりが叩かれる。むろん、親愛を込めて。
「……ちゃんと守ってよね」
「！？　……二度もやられてたまるかよ！　お兄さんをナメんじゃねぇっ！」
　いくぞ、とうつむいた音羽とともに託志はほかの三人と合流を急ぐのであった。
　そう、このときこっそり音羽が自分の分の小さな折り鶴をこっそり託志のズボンにさりげなく引っかけたのを知らずに……。