this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
戻ってきた記憶
<< もどる
1
…
11
12
13
14
15
ピンクのパジャマを着た
屋敷野 梢
がほんのりと頬を染めて部屋に戻ってきた。風呂上がりなのか。長い髪は湿っていた。首から下げたタオルで胸元の髪を挟み込むようにして叩く。
机の前の椅子に座ると大きな息を吐いた。ずり落ちたような姿勢で表情は緩んだ。
「程良く散らかった部屋は落ち着きますねー」
机を肘掛けにした時、乾いた落ち葉を踏むような音がした。梢は肘の下から古い紙切れを引っ張り出した。急に表情が引き締まる。身体の向きを変えて三段目の引き出しに指を掛けた。がたがたと音がするだけで、しっかりと鍵が掛かっていた。
「どうやって出たのでしょう」
梢は間を空けて折り曲げられた紙を開いた。書かれた文字の所々が滲んでいた。寒そうに震える文字。押し潰されそうな文字が並んでいる。
「病で亡くなった親友の、最後の手紙。文字も頑張っていたのですね」
梢は目尻に人差し指を当てる。涙は出ていなかった。
「私はもう、泣けなくなったんですね」
寂しさを隠すような笑みで文面を読み始める。記憶の断片が頭の中に舞い降りた。
暑い夏の日。風通しの良い部屋の中で梢と親友は昆虫図鑑を見ていた。側には冷えた麦茶のボトルとお菓子が盛られた器が置いてあった。
「で、でふねー、こへがアハアヒクワワハでー」
「口に入れすぎだよぉ」
冬眠前のリスのような頬の梢を見て笑う。親友は麦茶をコップに注いで、どうぞ、と隣に差し出した。
受け取った梢は喉を鳴らして飲んだ。最後に大きな息を吐くと、その姿に親友は口に手を当てて笑った。
「パパみたい」
「ママの方がいいです!」
二人は向き合って声を出して笑った。
待ち合わせの公園に梢は虫かごを持っていった。先に来ていた親友が笑顔で手を振る。
「じゃじゃーん、これが本物のタマムシですよ!」
「すっごく、きれい。背中が虹みたいに光ってるね」
親友の言葉に梢は鼻息を荒くして言った。
「虹ではなくて宝石なのです!」
「え、そうなの?」
「そうなのです。玉は宝石の意味なんですよ」
胸を張って言った。物知りな梢に親友は感心した様子で相槌を打った。
風邪を引いた梢は布団で横になっていた。微熱が残っているような赤い顔で窓の方をぼんやりと見やる。激しい雨が降っていて灰色の景色をドロドロに溶かしていた。
「……苦しいよ」
梢はか細い声を出した。目に涙が溜まる。部屋の明かりは心の中まで照らすことはなかった。
その時、ドアをノックする音が聞こえた。部屋に入ってきたのは親友だった。
「勉強が遅れないようにノートを持ってきたよ」
机にノートを置くと親友は側に来て微笑んだ。
「早く治るといいね」
「うん」
梢は布団から手を出した。親友は両手で握り締めて、がんばって、と力強い声援を送った。
病室には医師や女性の看護師が控えていた。親友の両親は抱き合うようにして見守る。親戚の一人は病室の外で顔にハンカチを当てていた。
梢は親友のベッドの側で励ましの声を送っていた。
「大丈夫、すぐに治るよ」
友人は少し顔を傾けて虚ろな目で笑う。梢は身体を前に倒して懸命に声を掛ける。
「私の風邪だって治ったよ。それと同じ、ほら、これを見て」
梢は銀色の懐中時計を見せた。親友は紫色の唇で、タマムシ、と呟いた。
「そう、フタに楕円の模様がたくさんあって、タマムシに似ているよね。お揃いで買ったんだよ。覚えてるでしょ」
周囲からすすり泣く声が聞こえる。親友は震える頭で頷いた。梢は懐中時計の蓋を開けた。
「見えるでしょ。時計の針は、動いているよ。止まってない。だから、ね。止まっちゃ、ダメだよ……」
間もなく親友の命の針が止まった。
梢は文章を読み終えた。一段目の引き出しに収めると周囲に目を向けた。
「確か、ここに入れたような……」
記憶を頼りに棚の奥を探る。梢の顔が綻んだ。奥から銀色の懐中時計が出てきた。蓋を開けると針は動いている。未だに健在であった。
「あなたの時計は燃えちゃったけど、私の時計は動いています。時間が気になったら見に来てくださいね!」
梢の目尻には光る涙が溜まっていた。
<< もどる
1
…
11
12
13
14
15
このページにイラストを設定する
あとがき
担当マスター:
黒羽カラス
ファンレターはマスターページから!
今回のシナリオでは思い出の品を手にした人が多くいました。
中には思い出の品に別れを告げる、前向きな姿勢も見られました。
人生の縮図というのでしょうか。人の数だけ人生があることを、シナリオの中ではありますが実感しました。
書き終わったあと、私も机の中を探してみました。すると、懐かしい物が出てきました。
表面のガラスが割れたストップウォッチ。電池は尽きて何も映りませんが、記憶の中ではちゃんと動いています。
水泳や陸上でよくタイムを計りました。苦しい中で出した自己記録に胸を躍らせたものです。
今回のシナリオが皆様の心に残れば嬉しく思います。
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
↑ページトップに戻る
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
戻ってきた記憶
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
黒羽カラス
シナリオタイプ(らっポ)
ブロンズシナリオ(100)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年02月11日
参加申し込みの期限
2015年02月18日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年02月18日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!