もれいびになれたなら｜リアクション

もれいびになれたなら

●子供達の話の中心

　旧市街にある民間保育園「こどもの家『うれしの』」の職員室でも、ろっこんの話が広まっていた。
「渚先生、ろっこんの話を知っていますか？」
「ろっこん？」
　保育士にそう聞かれた嬉野渚は、そういえばうちの子達もそういう話をしていたわねと、思い出す。
「学童の子供達や園児の間で流行っている話なんです。この島の伝説、だとか。皆、楽しそうに話していますよ」
「楽しんでお話しをしているんですね。それはいいことです。そろそろ、学童の子達が「ねこにゃんるーむ」に来ますから準備しましょうか」
　そう言うと、渚は学童保育室「ねこにゃんるーむ」へ。

　小学校が終わった子供達が、続々と「ねこにゃんるーむ」にやって来た。
　ランドセルを棚の上に置きながら、子供達は今日もろっこんの話で賑わってるようだ。
　子供の中に、渚の息子の嬉野咲耶の姿が。
「咲耶くんも、ろっこん使ってみたいよね」
「ん……ボクもろっこんを使えたらいいな。おへやにランドセルおいてくるね」
　いつもは双子の姉と「ねこにゃんるーむ」で遊んでいる咲耶だが、今日は咲耶だけ。
　部屋を出て、廊下を少し歩けば咲耶と双子の姉の部屋があり本や携帯ゲームはすぐに取りに行ける。
　その部屋の隣には、嬉野家の子供専用のトイレが。おトイレ（小）が近い咲耶にとってありがたい間取りだ。

「こどもの家『うれしの』か。懐かしいぜ。小学1年の頃、世話になったな」
　あの頃はガキだったからヤンチャして先生にめーわくかけたな、と思いつつ白石龍樹は、カッコつけているワンパクな小学３年生。
　久々に先生に会いに行くか、と思い立ち遊びに来たのだ。
（トイレの個室によじ登ったてみたり、ってこともしたな。これって、黒れきしってやつ？）
　あれもした、これもしたなと「うれしの」での出来事を思い出しながら、学童保育「ねこにゃんるーむ」へ。
「渚せんせー、元気か？　カッコよくなったオレを見てくれ♪」
「あら、龍樹君。久しぶりですね。先生は元気ですよ。龍樹君は、あの頃と変わっていませんね」
「へへーん♪」
　渚と龍樹が話している時、ランドセルを置いてきた咲耶が「ねこにゃんるーむ」に戻ってきた。
　カワイイ……と胸がキュンとなった龍樹。
「せんせー、あのカワイイ女の子、誰？」
「女の子？　ああ、あの子は私の息子の咲耶です。お姉ちゃん達の影響で女の子っぽいの」
「え！？」
　胸キュンな子が男の子と知り、ちょっとショック。
「龍樹君、咲耶と遊んでくれない？　男の子と遊べば、あの子、少しは男の子らしくなると思うの」
「せんせーの頼みだから、断るわけにはいかないな」

　女の子達とおしゃべりしている咲耶のところに行き、元気良く自己紹介。
「お前、渚せんせーの息子なんだってな。オレは３年の白石龍樹だ、よろしくな！」
「……ママ、じゃなかった、なぎさせんせいに聞いたんだね。ボクは嬉野咲耶、１年生だよ」
　間近で見ると、男の子とわかっていてもカワイイ……と再び胸キュン。
　何か話して胸のときめきを誤魔化そうとするが、いい案が浮かばず。
　そんな龍樹に助け船を出すかのように、咲耶の側にいた女の子がタイミング良くろっこんの話を。
「さっきも話したけど、咲耶くんもろっこん使ってみたいよね。どんなのがいい？」
「ろっこん？　何だそれ？」
「今、小学校で流行っている話だよ。魔法みたいなものなんだってお兄ちゃんから聞いたの」

　女の子が持ちかけた話は、咲耶達の近くにいた子供達も遊びながら話していた。