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【演目その2 『オルフェウス』(2)】
くるりと振り返った笹鳴が、そっと彼らへ確かめます。
「準備は、良いですか……?」
次に出番を迎えるのは、荒太郎とタルト。二人は大きくうなずいて、
「「行ってきます!」」
と舞台袖へ向かいました。
「さ、ほら。さーちゃんもすぐに出番だから、準備して」
「はい……霧切さん。しばらく、よろしくお願いします……」
翠子が声をかけて、リラックスさせるようにぽむっと肩を叩いてあげますと、笹鳴もこくりとうなずきます。
今回の演劇の脚本を執筆し、総合演出も務める笹鳴にも、割り振られた役柄があります。そして、気弱で臆病に見えて、控えめな彼女の心の中には、創作活動へと賭ける熱いハートが、確かにありました。
「……絶対。成功させましょう、ね……!」
その場の誰にも、もちろん! 異論は無いのです。
闇の中へと踏み込んだオルフェウスの耳に、歌声が届く。
歌声が奇妙に思えたのは、死を司る神の御許、分厚く垂れ落ちる暗き空の下、冥界の入り口への行く手を阻むように流れる大河を前に、それが底抜けなまでに明るい響きであったからだ。
「おーれーはカローン~♪ 冥界の船頭~
あの世の迷子の、水先あんない人~♪」
頼りなげな木船の上、櫂を繰り、川向こうから現れたのは、彼の歌う通りに迷える使者の魂を導く水先案内人、
カロン
であった。
船をオルフェウスの立つ岸辺へと寄せたカロンは、歌うのを止め、首を傾げた。
「おや? 足はしっかりついている……おまけに六文銭も無しとくりゃあ、さてはやっこさん。まだ浮世の人でがんすね?」
死した妻と再び巡り会うべく、生身の身体で冥界へと向かうオルフェウスだが、カロンは彼の乗船を拒む。
「そいつぁー困るぜ。見てみて? そーら、そこの看板にある通り! ウチのツアーは、死者専門のクルーズでがんす~」
無論のこと、オルフェウスは未だ生者である。カロンの語る道理を、オルフェウスとて心得ていた。そこを曲げて、彼は己を船へ乗せるよう懇願しているのだ。
なればこそ支払うべき対価が必要であったが、彼にはカロンの求める端銭などよりよほど、素晴らしいものを捧げる用意があった。
オルフェウスは琴を取り出し、彼ひとりを客として、それを奏でたのだ。
舞台の中央に佇むピアノの前へと静かに腰掛けると、深雪は鍵盤へ指を這わせ、滑らかに弾き始めました。もう観客たちも、その音色がオルフェウスの竪琴の代替であり、音楽家の美しい調べを表現していると理解していたでしょう。
(オルフェウス……俺にしか出来ない、演技。そして、演奏を……!)
この演劇のため、自ら書き綴った楽曲。深雪の卓越した技量による、ピアノの生演奏。
側で聞いているカロンこと荒太郎のみならず、会場の誰もがうっとりと、それに聞き惚れておりました。
「泣かせる曲じゃあねえか、でがんす……」
死者を導くカロン。冷徹な役を担う身でありながら、彼は存外、情に脆い性質であったようだ。
「いよし! それなら今日は、大サービスだ! 奥さんの元まで~、運んであげやしょう、そうしやしょう~♪」
歌うカロンはオルフェウスを船に乗せ、櫂を繰って漕ぎ出した。
冥界から流れ出るものであろうか、大河はあまねく霧に覆われており、行く手はほんの僅かな先すらも見通せない。それでもオルフェウスの眼差しはただ一点を見据えてまんじりとも動かず、ただゆらりと船に揺られるばかりである。
妻は、エウリュディケはこの先に、いるのだろうか。死に囚われながらも、夫である自分を未だ、待っていてくれるだろうか。いいや、そのはずだ。
オルフェウスは妻を信じていて、そして自らの愛をも、一片たりと疑うことは無かった。
暗き大河を走る船が、やがて軋んだ音と共に岸へと舳先を乗り上げ、たどり着いた……その時であった。辺りへと、恐るべき獣の鳴き声が、三重の響きを成して轟き渡ったのは。
それは冥界の入り口へと鎮座し護る番犬、三つ首を持つ
ケルベロス
の咆哮であった。
ステージの奥、不気味なセットの向こうへと現れた大きな影は、おお! と観客を仰け反らせるほどの大迫力!
冥界の門を護る、恐ろしい獣のシルエット。その舞台裏を覗けば、それを映し出しておりますのは、
\ギャオオオオオオンッ!!/
オーバーアクションでもって、ひと鳴き! ろっこんによって猫へと姿を変えた、タルトでありました。もちろん鳴き声は、あらかじめ用意しておいた音響効果です。
そしてその姿を、弦一郎の操る照明が、巨大で獰猛な獣へと変身させているのでした。裏方としての彼が特に重視する、とっておきの見せ場です。
「よおし、ここからだ……!」
そして続く演出にも、弦一郎は気合を入れて臨みます。
「照明は任せろ。演技は頼むぞ、響!」
にゃうん、と猫タルトが鳴いたのと同じくして、舞台には再び、深雪のピアノが響き始めます。
深雪自身の歌も乗せた、澄み渡る弾き語り。彼が最も力を入れて作り上げた、オルフェウスが妻へと捧げる想いを表現した……深く、切ない、愛の歌。
声を張り上げ、鍵盤を叩き、全身を使って、深雪は自分の全てを乗せた楽曲を、演奏します。歌い上げ、表現します。全霊を込めて!
彼の感情が、ピアノの調べが、観客たちの一体感が最高潮へと達した、その瞬間。
「今だ!」
弦一郎とタルトの、渾身の演出が光ります。巨大なケルベロスのシルエットが、するる、と小さくなっていきます!
オルフェウスは、稀代の音楽家であったのだ。奏でるその旋律は、心を動かすのだ……例え相手が、人の理の通じぬ獰猛な獣であったとしても。
素晴らしき琴の音を子守唄に、見る間に小さく身を縮めたケルベロスは、まるで猫のごとくにごろりと身を横たえ、安静なる眠りについてしまった。オルフェウスの愛が、獣の昂ぶりすらも鎮めたのだ。
「この冥界より深き、そなたの愛。素晴らしいものである」
そして、オルフェウスの魂を乗せた響きへそっと耳を傾けていたのは、獣のみではなかった。黒き衣を纏い、闇より出でた冥界の王、
ハデス
の心までも、オルフェウスは動かしていたのだ。
ハデスは傍らに寄り添うもう一つの闇、現れし彼の妻、漆黒のドレスに身を包む王妃
ペルセポネ
を誘い、腕の中へと収めながら、秘めた苦渋を面に滲ませた。
「私も、我が妻を地上より盗み連れ去った時には、彼女の母上をいたく悲しませてしまった。それもあってのこと、死すべき人間の命運を忠実に守る私であっても、残された者の悲しみを知らぬわけではない」
「オルフェウス……その、真の愛。
私の心にも、深く伝わりました……」
ペルセポネもまた、自らと、そして夫にもまつわる想いを強く揺り動かされ、オルフェウスへと優しく静かな眼差しを寄せている。
死を司る彼ら夫妻であったとて、愛する者との別離、その悲哀、オルフェウスの強き意思と愛を、胸に響かせずにはいられなかったのだ。
「アポローンの子、オルフェウスよ。そなたの妻を伴い、生ける者の国へと共に帰るが良い……」
「今度こそ、愛しきかの者を、手放さぬよう」
「ただし……そなたは、振り返ってはならぬ。地上へと出るまでは、彼女を見てはならぬ……決して、振り向くことなかれ……」
夫妻は闇へ、滲み消え。
見開かれた、オルフェウスのまなこ。彼の耳朶へと還ってきたものは。取り戻したものは。
「……来てくださったのですね」
「ああ……ああ!」
振り向かずとも、透き通るその声をひとたび聞けば、オルフェウスには、彼女の全てを感じ取ることができたのだ。
「ああ! 会いたかった……エウリュディケ! もう、絶対に……絶対に、離しはしない!」
忙しい早着替えを経ての二役、カロンとハデスの二つを見事にこなして、荒太郎は舞台袖へと戻ってきました。
ちらりと気にしたのは、観客席。
(どこかで、観てくれてたかなぁ……?)
なんてちょっぴり、思ったりしつつ。
「よーし、じゃあ替わるよー。頑張ってきてね~!」
荒太郎は、次の出番を控える仲間たち……冥界のセットへ、スモークマシンで霧を作り出していた空音や翠子と、裏方を交代します。
ハデスの妻、ペルセポネの役どころはほんの少しではありましたけれど、笹鳴もまた舞台の上に立ち、無事に演じ切ることができました。
「……あ……そろそろみんなのこと、撮影しておきましょうか……」
笹鳴は裏方に手が足りていること、舞台上の二人の進行にも問題が無さそうなことを確認すると、ビデオカメラを手に取って、みんなの様子を撮影し始めました。
きっとこれが、みんなにとっての演劇祭の思い出に、とても鮮やかな彩りを加えてくれるはず。
袖から舞台をレンズへ収めれば、暗い冥界を行く二人。
先に立って歩くオルフェウス、深雪の後を、冥はしずしずと追いかけます。彼女の持つ蝋燭の明かりが、揺れながら彼女の顔を覆う厚いヴェール、まるで厳かな死に装束のようにも見えるドレスを、おぼろげに照らし出ています。
冥は、思いました。
(エウリュディケの最後……芸術科の底力で、魅せてあげるんだから!)
振り返らずとも、オルフェウスには愛するエウリュディケがそこにいることが、つぶさに感じ取れた。死したとしても、互いに誓いを立て合った、最愛の妻なのだ。分からぬ道理が無いのだ。
そのはず、なのだ。
(……いるのだろうか? 妻は、エウリュディケは、俺に付いてきてくれているのだろうか?)
足音は聞こえた、耳慣れた妻の歩幅と同じくして、小さな足音が。
だが……これは本当に、妻の足音なのだろうか?
小さく芽生えた不信。変わらないはずの愛、確かな想い、そこに疑いの余地は無かった、しかしながら。
ここは、人の世では無い……冥界なのだ。これは、妻なのだろうか?
いや、それ以上に。彼女は、エウリュディケは、自分を信じて付いてきてくれているのだろうか?
(妻は自分を、今も、変わらず信じていてくれるのだろうか?)
不信は冥界の暗闇の力を借りてオルフェウスの胸を苛み、育ち、重たくのしかかり始めた。
妻を、信じている。
だが。ああ、だが。
しかし……!
「……エウリュディケ?」
奇しくも。オルフェウスが、胸の内で膨らんだ楔のような不信に敗北したのは、明るい地上へ、ほんのあと数歩というところであった。
覆い隠すヴェールの下。妻の顔は、悲しみに満ちていた。
成す術も無く。伸ばした手も届かぬままに、オルフェウスはただ立ち尽くし、見届ける。見紛うはずもない愛しき妻の姿が、冥府へと引き戻されていく様を。
耳に届くかすれた声は、消え入りそうな言葉は、最後の別れを告げる歌。
「…………さようなら。それでもわたしは、あなたを、愛しています…………」
エウリュディケは奥底へと連れ去られ、オルフェウスは二度と再び、妻と出会うことは無かった。
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担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
1000人
参加キャラクター数
160人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年03月14日
参加申し込みの期限
2015年03月21日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年03月21日 11時00分
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