ねこでんのある風景｜リアクション

ねこでんのある風景

＝＝06:30 寝子島駅＝＝

　早朝、城山水樹は寝子島駅へやってきました。
　木天蓼大学の学生である水樹ですが、今日向かうのは大学ではありません。
　今日は読者モデルをしている雑誌の冬物コーデ特集の仕事で、東京でスタジオ撮影があるのです。ちなみに表紙を飾る予定です。
　寝子島から東京へは結構時間もかかるので、時間の余裕を見て朝６時半ごろの電車に乗ろうとやってきました。
　もし早く着いてしまったら、そのときは……
（どこか適当なカフェにでも入って大学のフランス語の課題のを片付けておくかな……）
　などと思っています。
　
「もう少し厚着した方が良かったかな……」
　ホームで電車を待っていると、少し空気がひんやりした感じになってきました。
　もうすっかり季節も変わってきたのか、と思います。
　季節の先取りで秋物ファッションを纏う女性も多いですが、普段はＴシャツやタンクトップなど軽装を好む水樹です。
　耳にイヤホンを差し込み、スマホで音楽を聞きながら電車の到着を待つこと２分ほど。
　予定通り電車が入ってきました。

　この時間帯だと余裕で席に座れます。
　席に腰かけ、車窓から海を眺めながら水樹は物思いにふけりました。
　
　モデルの仕事を始めたのは大学に入ってからのこと。
（友達と渋谷へ遊びに行ったらスカウトされて、その日のうちにいきなり撮影とかあり得ない話になって……）
　それが楽しかったので、今も学業と何とか両立させながら続けています。
　カメラマンの注文に合わせてポーズを取ったり表情を作ったりするのは簡単ではありません。華やかなだけの世界ではないのです。
　人間関係で大変なことだってありますが、幸い水樹は明るく竹を割ったような性格でした。
　コミュニケーション能力があり要領もいいので、多少のことではくよくよしません。
　撮影で色んな服を着ていると、その度に今まで出会ったことのな自分に出会えるような。
　そんなドキドキ感を味わえるので、この仕事はやめられません。

「今日はどんな私と出会えるのかな……うふっ」
　さあ、本土が見えてきました。
　

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