ねこでんのある風景｜リアクション

ねこでんのある風景

＝＝夜　シーサイドタウン駅→本土＝＝

　塔ヶ崎璃亜は、あくびを噛み殺しながら電車に乗りこみました。
　いつものようにアルバイトからの帰りです。
　アルビノのため透けるような白い肌とやせた体は、日焼けした人たちが多い季節はどうしても浮いていましたが。
　季節も秋となり、この時間ということもあって少しは目立たなくなってきたようです。
　璃亜は周りにお年寄りが立っていないのを確認してから、シート端の空いてる席に座りました。
（それにしても今日はいつもよりアルバイトが忙しかったせいか疲れました、家に帰ったらシャワー浴びて早く寝たいです）
　幸い今日は絡んでくる酔っ払いも、騒ぐ若者もいないようです。
　隣のドアから若い女性が駆け込んできました。どうやらぎりぎりで間に合ったようです。
（一駅ですが、疲れてるとつい座ってしまいます。それに電車の振動って何だか気持ち良いんですよねぇ……）
　そう、とっても気持ち良い……がたんがたん、がたんがたん、
　規則正しい揺れに、まぶたはいつの間にか重くなり。疲れた璃亜は眠りに誘われていくのでした。

　
「……さん、お客さん、終点ですよ」
　耳慣れない男性の声に目を覚ませば、他の乗客たちは消えうせていました。
「……！？　私、寝過ごして？　すみません」
　起こしてくれた駅員さんに頭を下げ、あわてて周りを見ると見慣れない駅。駅名を確認すると。
「か、鎌倉！？」
　ねこでんの終着駅です。
「まさか寝過ごして終点まで来てしまうなんて……」
　だいぶ涼しくなったはずの夜なのに、璃亜は冷や汗をかきました。
「気をつけて帰ってくださいね」
　という駅員さんに謝りつつ、寝子島方面行きの電車に乗り換えて発車を待ちます。
「今度は寝過ごさないようにしないと……」
（それにしても寝過ごすなんて、ちょっと無理にバイトを入れ過ぎましたかねぇ？　でもこれくらい入れてないと今月も貯金を使わないと生活できませんし……）
　食費や生活費をもっと切り詰めるしかないのか、と思案します。　
　明日のお弁当のおかずは、少し減ってしまいそうです。
　ろっこん「運命の輪」が発動し、自分が不運になったなどとは夢にも知らない璃亜でした。
　その代わり電車に駆け込んで来た女性には、幸運が訪れていたのです。

　
　今日もねこでんは走ります。
　さまざまな人の、さまざまな思いを乗せて。

このページにイラストを設定する

あとがき

担当マスター：茄子りんこ
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございました。
それぞれの思いを乗せて走る電車の旅は、いつもの日常ですが時にセンチメンタルだったり哲学的だったりもします。
時間や区間が合っていればなるべく絡めて描写したかったのですが、なかなか難しかったですね。

リアクションの参考になるかと、平日に電車の旅に出てみました。
楽しかったですが、らっかみ内の季節と違って雪がちらついていたりして、暖かい車内に入るとぼんやりしてしまうのでした。

少しでも楽しんでいただければ幸いです。
またのご参加をお待ちしております。

↑ページトップに戻る