テスト勉強なんかよりチャーハンが食べたいです。｜リアクション

テスト勉強なんかよりチャーハンが食べたいです。

　赤羽は幼馴染の鍋島奈々美とともに事件を追っていた。
　SNSにアップされた件の混入画像とその顛末を知った赤羽。
　そして鍋島が調べ上げた犯人像と合わせたとき、２人は真実を悟った。
「俺と奈々美の情報をあわせると、流行っていない中華料理店の店主が容疑者になるな。動機は……風評被害……か」
　赤羽の顔がやるせなさそうに曇っていく。
「……俺……犯人の気持ちはわかる。俺もいじめや家族の誹謗中傷を受け続けてきたからな……」
　赤羽の父親は犯罪を犯している。
　そのことによって、こころない罵詈雑言や嫌がらせを彼と彼の家族は浴びせられてきたのだ。
　そんな赤羽に手を差し伸べた鍋島も、調べた内容に憤慨していた。
「……こないなSNSの書き込み……ウチ、許せへんわ。一生懸命生きとる人間を、愉快犯のアホタレが侮辱していいはずないわ。ウチがジャーナリスト志したんも、こないな被害者を救うためや……！」
「だからといってこんな事は許されない！　行くぞ、奈々美！」
「せやで、勇樹！　ともかくこのおっちゃんを止めないと！」
　２人が意気込んでいると、近くの路地から「チャーハン食えよ！」と怒声が聞こえてきた。
「近いぞ！　気をつけろ、奈々美！」
「ウチの心配はいらんわ、ほら勇樹、行くで！」
　２人が路地の角を曲がると、コック姿のオッサンと鉢合わせ！
　首にはカメラをぶら下げており、間違いなく犯人だと確信した。
「おっさん！　もうこんなことはやめるんだ！」
「オッサン、無関係の人を巻き込んだらアカン！」
　中学生コンビの説得に、犯人――板野角造は口角に白い泡を溜めながら怒鳴った。
「うるさいッ！　お前達みたいなガキがいるから！　俺の店が潰れかけてるんじゃねぇか！　それにお前たちも変な声を聞いて俺を捕まえに来たのか！？」
　どうやらテオの声のことらしい。
「何なんだお前ら！　俺は、この力を有効活用しているだけだ！　俺の濡れ衣を晴らすには、こうするしかないんだぁー！」
　板野はカメラを構えた。
「勇樹、ウチを守って！」
　そう言うと鍋島は赤羽の身体の後ろにかがみ込んだ。
「勇樹シールドや！」
「ちょ、な、奈々美ーっ！？」
　赤羽は逃げることができない。
　逃げたら鍋島がチャーハンの餌食になってしまう。
　正義のヒーローを志す赤羽にとって、助けを求める声は最優先なのだ！
「チャーハン食えよ！」
　板野のろっこんが発動！
　哀れ赤羽、直撃！
「ぐ、う、うわぁぁぁ！？」
　赤羽は突然頭を掻きむしり始めた！
　そして青く澄み渡る秋空へ向けて叫んだ。
「チャーハン食いてぇぇええぇぇぇえぇー！！！」
　板野は猛ダッシュで逃走！
「あ、おっちゃん待って！　って勇樹がアホになっとる……」
　チャーハン連呼しながら電柱に頭突きを繰り返す赤羽に呆れ返る奈々美。
「うおおぉぉぉ！　ダメだ！　どんなに頭突きしてもチャーハンが頭から離れてくれねぇ！？」
　一応の抵抗を試みている赤羽だが、それもどうやら無駄のようであった。
「勇樹、あのおっちゃん捕まえれば、炒飯食い放題やで！」
　鍋島の言葉に、赤羽の頭突き行為が止んだ。
「……ハンッ、正義？　勉強？　そんなのよりも炒飯だね！　オッサン、炒飯、クワセロー！」
　その目付きは飢えた野獣のそれであった。
「ハッ？　感じる！　これはチャーハンの気配だ！」
　赤羽は何故かオッサンが走り去っていった方角と真逆へダッシュ！
「勇樹！？　どこ行くねん！？」
　鍋島が慌てて彼のあとを追う。
　その先には……、大きなザルの下にあるチャーハン！
　不自然すぎる罠だ！
「それは俺のチャーハンだぁぁぁぁぁっ！」
　しかし、そのまま赤羽はザルの中へシュゥゥゥゥゥゥゥトッ！！
「チャーハン、ゲットだぜー！　って、しまった！」
　カゴが赤羽の体を閉じ込め、彼は出られなくなった！