秋風ボートレース！｜リアクション

秋風ボートレース！

　掲示板の前で、金髪ツーブロックでばっちり決めた細身の男子が、頭を抱えてうずくまっていた。
　廿楽龍司。体育科２年１０組。
　スレンダーで長身。美意識を大事にする彼は、髪型からよく不良と間違えられる。鋭い眼光も人を寄せ付けない。「ちょっと怖そう」とは、クラス女子からの評判だった。
　よくも悪くも素直すぎる。妥協はしない。美意識も譲らない。
　やる気のないことはしたくない。

　そんな群れない彼を心配したのが、龍司の祖母。
　孫に友達が出来て欲しい。
　ボートレースで、友達を作ってほしい。
　切なる願いがあってのエントリー、そして祖母命名の船名だった。

　当然、龍司はそんなことを知らなかった。

　これから、かったるいボートレースに参加しなければならないのだ。
　しかも、あの名前の船で。
　暗澹たる気分が、龍司の胸に押し寄せてきていた。

「相変わらず、アホの子だ……」
　潮風に毅然と立つドラゴン・レディーの姿をみて、御剣刀は呟いた。
　ピンと逆立ったアホ毛。
　マイナー女海賊マンガ『ドラゴン・レディーＺ』にすっかり影響された少女は、思いっきり成りきって参加するようだ。
　むろん、みんな彼女が誰だか知っている。
　あのアホ毛。ちんちくりんの体型。間違いない。

（私は、非情のドラゴン・レディ……）

「ののちゃーん！」まったくふつうに声をかけてくる真央。

　何？　と返事をしようとしたレディは、ぴしりと固まった。「あ、あれは……」
　目線の先には、宿命のライバル『ユニコーン・ガール』の姿！
　無駄に露出度の高い水着。ユニコーンの仮面。間違いない。
「ご、ごめん……」真央に謝るレディ。
　一緒に話したい。ワーワー騒ぎたい。
　でも……。
「今の私は、ドラゴン・レディー……」
　さらば！　と走り去るレディ。

　しばらく考え、真央は独自の結論に至った。
「ののちゃんも仮装なのだ！　負けないのだ！」
　そして周囲に挨拶しまくる。「円ちゃん、刀ちゃん、豪ちゃんセンパイ、真央ちゃんは、褌の雄姿公開を頑張るのだ～！！」

　ユニコーン・ガールのマスクの下で、ひそかにほくそ笑むのは羽生碧南。
　体育科１年１０組。バスケ部では得点能力の高さを買われ、スモールフォワードを任されることが多い。普段ののんびりおっとりとうらはらに、コートでは「戦う女」として有名である。
　なんとなくの成り行きでエントリーしてしまったが、エントリー名の中に『ドラゴン・レディー』の名を見つけた。
　それならば、と彼女が用意したのはユニコーン・ガールの衣装。
　体育会系のノリと裏腹に、乙女ゲームをたしなむ彼女、即席のコスプレもセンス良く着こなしてしまう。
　ちょっと高笑いしてみると、なかなか気分が高揚する。はまりっぷりに自分が怖い。

　そして、もう一人変装で挑む少女がいた。