秋風ボートレース！｜リアクション

秋風ボートレース！

　そして円は、ハンガーにいた。
　あてがわれたボートは、新しくはないがしっかりしたものだった。
　座席を外して軽量化、重量バランスをバラストで調整。
　船体をブルーで塗り『にゃーくん号』とサインを入れる。
　そして仕上げ、エンジンルームを開け、リミッターを解除。

　いきいきと整備する円を「にゃっ」と覗き込むのは、元祖『にゃーくん』。
　円の飼い猫にして相棒、茶トラの子猫だ。
　冒険心旺盛な彼、ボートに興味深々である。

「にゃーくんも一緒に行きたいの？　一緒に練習する？」
　円の提案に、身体を擦りつけて同意を示すにゃーくん。
（にゃーくん用の救命胴衣も、作ってあげよう……）にゃーくんに似合う、凛々しいのを作ってあげないと。

　コースを周回し、多めの燃料を用意する。
　練習中、マスクの少女とすれ違うこともあった。
　すっかり自分の世界に浸り込んでいる少女に、円は目礼を交わす。
（一緒に、がんばろう）

　彼らだけではない、一同それぞれ、思い思いの準備をし、レース当日を迎えた。