秋風ボートレース！｜リアクション

秋風ボートレース！

　先頭集団は、蛇那伊、修、円、そして刀。
　熾烈な駆け引きが繰り広げられていた。

　的確にショートカットを狙うのは円。
　姿勢を低くし、極力空気抵抗を少なくする。
　燃料は十分。安定の走りだ。

　そんな彼女とつかず離れず、じわじわと高位置を狙う修。
　馬力を上げたボート、一人乗りでしかも細身の彼。
　速度は十分。だが、軽量。バランスには不安が残る。
　同じくインコースを攻めるが、他船の引き波を喰らわない様に、微妙に位置取りをする。

　だが、今日の修は攻める。
　隙を見つけたら、ボートの船体をそこにねじ込むことをいとわない。
　もちろん、他選手の動線は見切ったうえ。ただ、リスクは伴う。

　修と同様「軽量」というアキレス腱を持つ刀。
　だが、彼は今回、リラックスして戦いに臨むことにしている。
　朗らかに声をあげ、周りの風景を愉しみながら、自分のペースを保ち続ける。

　彼らを嘲笑うように、暴虐無人な走りを見せるのは蛇那伊。
　いっかな体力の衰えをみせず、オールを回し続ける。

　レースは中盤から、終盤に差し掛かろうとしていた。