秋風ボートレース！｜リアクション

秋風ボートレース！

　続いてやってきたのは『水褌普及委員会』。
　お菓子を頬張りつつ、片手で撮影。
「海の上のおやつうまうまなのだ！」水しぶきがかからない様に、デジカメを厳重に仕舞い込む。
　セーレに手を振ると、大忙しでオールを漕ぎながらも、手を振りかえしてくる。
　観客はやんやの大騒ぎである。
「良い風なのだー！」すっくと立ち、褌姿をアピールしながら手を振ると、観客席から歓声があがった。

　意外にも、真央の水褌は好意的に迎えられていた。
　度重なるとんでもない仮装集団の出現に、観客も麻痺し始めていた。
「褌、いいじゃん！」という層が、少なからず現れ始めていた。
　
　駘蕩たる秋風に揺られて、釣り糸を垂らすのは猯利。
　彼の年で取得者の少ない、二級小型船舶操縦免許を使い、二馬力以上のボートを選んだ彼。
　前日ボートを走らせ、操船方法やルートを確認、ついでに船釣り。
　整備を点検し、気象情報を確認した。
　そしてレース開始直後、彼は釣竿を取り出し、釣り糸を垂らした。

　鴎が鳴き交わす。心地よい風が水面を薙ぐ。
　秋の寝子島近海はちょうど潮目にあたり、南海の魚、北洋の魚、ともに釣果を期待できる。
　天気は荒れ模様とかで、程よく水面がかき回され、思わぬアタリがあるかもしれない。
　川釣り専門の猯利だが、この時期の海魚のヒキも、こたえられない味があった。

　その傍らで、寝そべってやる気ゼロの龍司。
「あー…面倒……」
　ボートには乗ったものの、レース参加など端からごめん。
　ごろりと横になり、完全に流されるままであった。

　レースは寝子ヶ浜を越えて、半ばにさしかかろうとしていた。
　鈴島の島影が彼方に霞む。天候はいまだ快晴。