怪人セブンの復讐｜リアクション

怪人セブンの復讐

　３号車から九重とメサイアの部下たちが降りると、目の前で大きな爆発が起きた。
　九重は肩に止まっていた蝶の羽を掴む。
　同乗していたメサイアのメンバーも蝶の羽を掴んだ。
　すると、その蝶が次々に拳銃へと変わる。
　そのままアダムへ銃口を突き付けた。
「そこから離れろ」
　アダムは眉間にシワを寄せていた。
「……日本語が通じないのか？　おい君、子供達に何をした？」
　九重の問い掛けに内容を、彼の表情で読み取ったアダムは、白い歯を見せて笑った。
「I'd only burn them（ただ焚き火をしていただけだ）」
「なにをヘラヘラと笑ってやがる、ふざけるな！」
　九重の発砲しようと引き金に指へ力を入れる。
　だがその前にアダムの火炎放射が九重たちの右肩を焼いた。
　その熱と痛みに、メサイアたちは拳銃を地面に落としてしまう。
　アダムは追撃をしなかった。
『去れ。罪を赦そう。障害を１人でも多く片付けられれば、我らも彼奴――偽神野々ののこ殺害へ駒が進められる。これは異邦人の福音だ』
　九重にはアダムの言葉は理解できない。
　しかし、アダムがメサイアに必要以上の危害を加えないという意思は汲み取ることができた。
「まいったな。俺達みたいな組織が他にいるのか……」
　九重は苦虫を潰したような顔をした。
　アダムはゆっくりと踵を返すと、燃え盛るバスを背に歩き進めていく。
　すると、うねうねと蠢くスライムがアダムの目の前に現れた。
　しばらくすると、スライムはヨレヨレのスーツ姿の男に変身したのだ。
「Gotcha,here arlier（早いじゃないか）」
　英語の会話だが、スーツ姿の男は流暢な英語で受け答えを始めた。
『大人は時間を守るものさ。まったく、ガキのお守りは大変だったよ』
　男は雨にでも打たれたのか、全身ずぶ濡れであった。
『ご苦労様だ。こちらは首尾は上々。“賜りし者”どもは炎の中だ』
　アダムの後ろで燃え盛るバスを眺め、男は苦笑した。
『また派手にやったもんだ。でももれいびってゴキブリよりしつこい生命力を持っているから、油断できないよ？』
『構わない。その時は再び炎の中へ放り込むまでだ。それにしても、前しか見えていない子供ばかりだった』
『だろうね。あの泉月花ってお嬢さんもそうだったよ。我々の組織とは話にならないね』
　そういって男はせせら笑った。
　ふと、アダムはバス前方で横たわっている小山内に気が付いた。
　その体に近付くと、小石を蹴るように足で転がした。
『死んでいるのか？』
『さぁ、どうだろうね？』
　顔を近付ける男。
　……その時、小山内のまぶたが一瞬見開いた。
　そして。
「うわぁ！？」
　男は悲鳴を上げた。
　胸元のシャツがちぎれ、素肌が見えるほどのスピードと衝撃。
　虫の息の小山内は半ば無意識のまま、ろっこん『アクセラレイトライン』で、先の尖ったペンをダーツのように射出したのだ。
　防衛本能による行動だといえよう。
「こいつ……、まだ生きてる……。まずいぞ、僕たちの事を見られた！？」
　焦燥する男は、道端に転がる拳大の石を掴んだ。
『潰すしかないな』
『俺がやろう』
　アダムは男の手から石をもぎ取ると、それを高々と振り上げた。
『主よ、この娘の贖罪のため、手を汚すことをどうかお許し下さい……』
　アダムはそのまままっすぐ、小山内の頭蓋骨に石で殴りつけた。
　一方、小山内は体の自由が効かないまま、頭部の痛みと真っ赤に染まる視界に身を委ねていた。
　もう、理不尽には慣れてしまった。
（ああ、私、こんなにいっぱい汚れちゃった……）
　小山内が最後に見たものは、男の胸元を飾る禍々しいタトゥー。
（……黒い、獣……）
　そして彼女は、自分の頭蓋骨が砕ける音を聞いた。

【撲滅隊：“ユダ”により全滅。全員、未帰還】

《撲滅隊パート：END》

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