【体育祭】白黒つける、玉入れニャン！｜リアクション

【体育祭】白黒つける、玉入れニャン！

　手足を元気よく振って結梨亜・カールシュテインは校内を歩く。愛用のトロンボーンは無くとも、その溌剌とした動作は異国のマーチングバンドの一員を思わせた。長い金髪に青い瞳。物怖じすることなく、出会う人々に笑顔を向ける。
「こんにちは！　寝子高の体育祭を楽しんでくださいねー」
　人々は流暢な日本語に面食らい、どうも、とぎこちない笑みを返した。
　歩いていると、よく通る声が聞こえてきた。猫耳を付けた優菜が玉入れ競技の勧誘に勤しんでいる。結梨亜は満面の笑みを浮かべた。一直線で駆け寄ると子供のように手を上げた。
「はいはーい、自信はないけど白猫組で玉入れに参加ですヨー」
「……玉入れのルールはわかりますか」
　髪や目を見てから優菜は言った。聞かれた結梨亜は誇らしげな顔で頷く。
「あれでしょ。みんなが楽しんで玉を投げ合って、つまりたくさん楽しんだ人の勝ちってことですよね！」
「違います。競技なので点数勝負ですよ」
「え、違う？　まー、参加するからには全力で頑張りますよー！」
「その前にルールを覚えてくださいね」
　優菜は白い猫耳カチューシャと一緒にビラを渡した。
「こう見えて私、日本語はペラペラなんですよー。それ以外の言語はよくわからないんだけど、アハハ」
「面白い人ですね」
　自然な笑みが優菜の口元を綻ばせた。
「うちもー！」
　前傾姿勢で郡トモエが突っ込んできた。靴底を滑らせて止まると、額の汗を手の甲で拭った。体操着にハーフパンツ。靴紐は体育祭のテーマでもある虹色と気合が窺える。
　突然のトモエの登場に優菜は平然とした態度で言った。
「あなたも面白い人なのですか」
「私と同じだネー」
　結梨亜の笑顔にトモエは釣られて笑い、違うよ、と慌てて顔を振った。二の腕に嵌めた腕章を突き出して指差す。
「実行委員の仕事が忙しくて。まだ、玉入れの参加は間に合うよね？　黒猫組でお願い！」
「白猫組ですね」
「黒猫組でお願いします」
　力を込めたトモエの言葉に、仕方ないですね、と優菜は黒い猫耳カチューシャを手渡した。