みんなで、栗三昧！｜リアクション

みんなで、栗三昧！

●レシピ３　まだまだ栗料理制作中！
　【その１】
　別の調理台では、修と月がマロンプリンを作成中だった。
「まず牛乳と砂糖、それに卵を栗と一緒にミキサーに入れてよく撹拌する」
「了解です」
　修に言われて、月が計量した材料を全てミキサーへと投入すると、スイッチを入れた。むろん栗は、皮を剥いたあとに茹でてある。
　ちなみに、レシピは修がスマホでネットを検索してみつけたものだ。
　ミキサーの容器の中で、材料が混ざり合い淡い黄色の液体に変わって行く。
「そんなものでいいだろう。次は、それを濾して、器に注ぐ」
「はい」
　修に言われて月がうなずき、ミキサーを止めると用意した濾し器の下にボウルを置き、上から容器の中身を流し込んだ。
「濾すことで、液体が滑らかになるのですね」
　ボウルにたまって行く液体を見やって、月が軽く目を見張って言う。
「そういうことだな」
　修が、うなずいた。
　濾した液体は、ココット皿に等分に分けて入れられ、百五十度のオーブンに入れられる。
「これで三十分蒸し焼きにしたあと、粗熱を取って冷蔵庫で冷やしたら、出来上がりですね」
　月が、工程を確認するように、修に言った。
「ああ。焼けるのを待つ間に、カラメルソースを作ろう」
「はい」
　うなずいて、月が再びガスレンジの前に立つ。
　砂糖と水を火にかけて、焦がさないように鍋を回しながら、中身が茶色くとろりとなって来るまで熱し続ける。
「……こんなもの、ですか？」
「ああ。いい感じだ」
　修の言葉に、彼女は火を止めた。レシピにあったとおり、十数えて、別に沸かしてあった熱湯を加える。あたりに独特の音と香りが立ち込め、慣れない者なら、思わず身をすくませてしまいそうだ。しかし、月は驚いた様子もなく、平然と鍋を回す。
「あとは、冷めるまでおいておけばいいのですね？」
「ああ、そうだ」
　修がうなずく。
　続いて二人は、大学栗を作り始めた。
　要領は、大学芋を作るのと同じである。栗をまず油で揚げて、それに甘いあんをからめるだけだ。
　あんは、ハチミツと醤油、水、砂糖を鍋に入れて火にかけて作る。煮立ってとろみが出たところへ、揚げた栗を入れてからませれば、完成だ。
　プリンと同じく、修の指揮の下、月は着々と大学栗を制作して行く。
　そこにやって来たのは、真央だった。
「修ちゃん、月ちゃん、作成風景を写真に撮らせてほしいのだ」
　手には、持参のデジカメを構えている。
「ああ、いいぞ」
　うなずいたのは、修の方だ。
「さっそく、撮らせてもらうのだ」
　言って、真央は大学栗を作っている月の姿をいくつか、デジカメに収めた。
　その時、ちょうどプリンが焼き上がった。オーブンからプリンを出している修に、真央が声をかける。
「出来上がった料理も、撮りたいのだ」
「ああ」
　修がうなずいたので、真央はプリンにもデジカメを近づけ、接写する。
「ところで、月ちゃんが作っているのは、なんなのだ？」
　一通りカメラに収めてから、真央は訊いた。
「大学栗です。八神さんが考えた料理で、大学芋のサツマイモを栗に置き換えたものです」
「おお～。それは、美味しそうなのだ」
　月の言葉に、真央は目を輝かせる。そして、「食べるのが楽しみなのだ」と付け加えると、礼を言って立ち去って行った。
　それを見送り、月は大学栗のあんを作り始める。
　修も苦笑と共に真央を見送って、オーブンから出したプリンの粗熱を取るために、水を張ったバットに容器を移し替える作業を始めるのだった。