みんなで、栗三昧！｜リアクション

みんなで、栗三昧！

●レシピ４　みんなで試食！
　【その１】
　やがて、十二時を少し回ったころ。全員の料理が完成した。
　中央の調理台の上には、モンブランタルト、茹で栗、焼き栗、渋皮煮、栗ご飯、甘露煮、栗羊羹が二種類、栗のぜんざいが二種類、栗と餡子の揚げギョーザ、栗の茶巾絞り、栗餡の月餅、モンブランが二種類、芋ンブラン、焼き栗のカップケーキ、大学栗、マロンプリン、栗の衣の揚げ物各種、そして絢子の作った栗おこわ稲荷がずらりと並んだ。
「たくさんできたわね。……どれも美味しそうだわ。あら、私の大好きなプリンまであるわ」
　調理台の上を見回して、絢子は微笑む。
「先生は、昨日言っていたとおり、栗おこわを入れた稲荷寿司にしたんですね」
　綾花が言った。彼女は昨日、栗をもらうために絢子に会ったおり、何を作るか尋ねていたのだった。
「ええ。お寿司なら、たくさん作れてみんなに食べてもらえるかしらと思ったからよ」
　微笑んで言うと、絢子は全員を見回した。
「それでは、いただきましょうか」
「どれも、美味そうだからな。腹一杯食べるぜ！」
　望月が、はしゃいだ声を上げる。
「取り皿が必要な人は、このお皿をどうぞ」
「お箸やスプーン、フォークなどは、こちらにありますわ」
　綾花と七星が、教室の棚から取り出した皿や箸、スプーンやフォークなどを、調理台の取りやすい場所に置いて、他の者たちに声をかける。
「ありがとうございます。お姉さんたち、用意がいいんですね」
　小さく目をしばたたいて言ったのは、翼だ。彼女はさっそく皿を手にしようとして、気づいてエプロンをはずしにかかった。
　その仕草に、近くにいた刀や望月、優輝がぎょっとしたような顔になる。
「ゆ、夕鈴ちゃん。エプロンはそのままで、いいんじゃないか？」
　幾分うわずった声で言ったのは、刀だ。
「どうしてですか？　小さな子供じゃないんですから、食べ物で服を汚したりしませんよ？」
　笑って返して、翼はエプロンを取り去った。その下からは、チューブトップとホットパンツに包まれた小さな体が現れる。
　刀たち三人は、一瞬ホッとした顔になったものの、小柄な体に似合わない大きな胸に気づいて、一様に目をあらぬ方へと逸らした。
　それに気づいて、翼はいたずらっぽい笑みを浮かべた。
「お兄さんたち、何かエッチなこと考えてたんじゃないですか？」
「べ、別に何も」
「ああ。な～んにも考えてないぜ。な、優輝ちゃん」
「え、あ、うん」
　問われて、思わずかぶりをふる刀に、望月と優輝も慌てて続く。
「そ、それより、夕鈴ちゃんは、何を作ったんだ？」
　軽く咳払いして、刀が訊いた。
「栗ご飯です。……綾花お姉さんと、音羽お姉さんと、三人で作りました。出来上がった時、味見したらとっても美味しかったから、どうぞ食べてみて下さい」
　言って翼は、土鍋のまま調理台に置かれている栗ご飯を示す。
「へぇ。……じゃあ、さっそくいただこう」
　ようやくおちつきを取り戻し、刀は栗ご飯につけられたしゃもじを手にした。
「俺様も、もらおう」
「じゃあ、僕も」
　望月と優輝も、順番を待って皿に栗ご飯を盛る。
「……美味い」
　一口食べて、刀がぼそりと感想を漏らした。
「すげぇな、これ。栗の味が生きてるって感じだぜ」
「うん。素朴なんだけど、すごく美味しいよ」
　望月が感嘆の声を上げ、優輝もうなずく。
「ありがとうございます。そんなに喜んでもらえると、すごくうれしいです」
　翼は、笑顔でぴょこんと頭を下げると、皿に盛られた揚げ物に気づいて言った。
「これ、刀お兄さんが作っていたやつですね。揚げてる時に食べさせてもらったものの他にも、いろいろあるんですね」
「ああ。鶏もも肉と塩鮭を中心に、栗の衣でいろいろやってみた。食べて、感想を聞かせてもらえると、ありがたい」
「それじゃ、遠慮なくいただきます」
　うなずいて言う刀に、翼はさっそくかき揚げを一つ取ると、口に入れる。
「サクサクして美味しいです。……これ、鶏もも肉ですね。もうちょっと、肉が小さい方が、食べやすい気がします」
「なるほど。……かき揚げは、いっそ鶏肉も茹でて裂いた方が、よかったかもしれないな」
　呟く刀に、いつの間にか、同じかき揚げをほうばっていた望月が声をかける。
「俺様は、これぐらいの方が、歯ごたえがあっていいと思うぜ。男の料理だ。豪快に行こうぜ！」
　言って彼は、バンバンと刀の背を叩いた。
「ありがとう」
　それへ、苦笑と共に答えながら、女性や子供と男性では、微妙に感想が異なるのかもしれない、などと思ったりしていた。

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