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遠雷のような、昔日の
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「別に隠すような事もねェけど、俺の話なんてきっとつまらねェぜ」
カウンターを挟んで立つ店員を見やり、
鹿黒 暖簾
は黒い帽子と上着を背後の壁の衣紋掛に引っ掛ける。
「それでもいいってんなら、まァ」
「聞かせてもらえますか」
店員の厳つい顔が嬉しげな笑顔に崩れた。椅子に腰を下ろし際にそれを眼にして、暖簾は実年齢より若く見える頬を困惑気味に左手で引っ掻く。
「ちょいと喋るかね」
ウーロン茶で唇を湿す。冷たい水滴宿したグラスの内、音立てて氷が崩れる。
「その前に一杯くれるかい」
お通しに出されたほうれん草の胡麻和えに箸をつける。流石に素面じゃ恥ずかしい、そう言い掛けて、
「……いや、なんでもねェ」
言葉を誤魔化して首を横に振る。店員に向け、渋く笑む。
「前に女将に勧められたのが美味かったんだ」
以前、世話になっている組長に引きずり込まれたこの店で出された酒の記憶を辿る。あの時はうっかり酒が過ぎて、途中からの記憶がない。酔っ払って寝入って、気がつけば組の古株である男の背に負われていた。
「あれあれ、梅のヤツ」
「梅酒のソーダ割りですね」
「そうそう」
口当たりの良さに騙されて飲み過ぎないようにしようと決めつつ、暖簾は店員が手早く用意した酒を受け取る。
「ありがとよ」
一言の後、一口。口の中で弾ける炭酸と共、ふわりと広がる梅の香りと甘さに、隠れ甘党な暖簾は唇を緩める。
(さてなァ、)
何を話すか考えて、知らず指先が胸元のペンダントに触れる。店員の不思議そうなまなざしに気付いて、暖簾は祈るに似た己が仕草に気づいた。
「ん? これかい?」
「あ、いや、すみません」
「癖みてェなもんさ」
酒を口に含み、黒い瞳を和ませる。
家族のことを想えば触れずにいられなくなるペンダントに視線落とす。沈んで見えた瞳は、持ち上げた途端に宝物を自慢する少年の色を宿す。
「見せてやろうか」
「いいんですか」
「特別だぜ?」
ペンダントを片手で器用に外し、カウンター向こうの店員に投げる。
店員が大きな両掌でペンダントを受け取り、ロケットに収められた写真を見るのを確かめて、暖簾はもう一度酒を飲む。
「俺の嫁さん、マリアって言うんだがよ」
綺麗だろ、そう微笑む瞳の縁が酒のせいか紅色を帯びる。
「最期まで綺麗だった」
体中の息を吐き尽くすように呟く。ペンダントに小さく納まった愛しい妻の写真を返され、再び己の胸元に戻す。息を取り戻そうと努めて、明るく顔を上げる。
「旦那、ホッケ焼いてくれホッケ。あと酒もう一杯」
今度は旦那のオススメのヤツな、と注文して、グラスの梅酒を一息に空ける。
「……俺達はこの島出身なんだ」
炭火で焼かれ始めるホッケの香ばしいにおいを肴に、新しく供された黒糖梅酒を舐める。酒の力を借りて、愛する人との思い出を言葉にする。
「マリアとは――」
物心付く前から一緒に居て、兄妹のように育った。この島で、中学も高校も一緒に過ごした。
「金堂会ってのの前会長に庭師の仕事を教わって、……二人で、寝子島を出て生活して、」
ずっとずっと、二人で手を繋いで生きてきた。隣に居るのが当たり前の、互いに唯一無二の存在だった。
「娘が生まれて」
二人が三人になっても、それは変わらないと思っていた。妻と共に娘を慈しみ育んでいこうと心に決めていた。
「写真見るか?」
体を捻り、背後に掛けた上着の胸ポケットから一枚の写真を取り出す。写真には、一見、年の離れた恋人とも見紛うばかりに仲睦まじい一組の父娘の姿。
「可愛いだろ、マリアにそっくりなんだ。俺の宝物さァ」
娘を見せびらかす父親の瞳が、ふと暗く翳る。眉間にまるで今しも傷を負うたかのような皺が寄る。
「でも娘が一歳くれェの時に強盗団が家に入ってよ」
唸る口元が凶暴な犬じみて歪む。右目の義眼が無機質に冷たい光を反射させる。
「何とかぶちのめしたものの、俺はこのザマ」
肘から先の無い右腕を軽く持ち上げ、暖簾は苦しげに瞼を閉ざす。
「妻は娘を守って……」
炭火の煙に煤けた天井を仰ぎ、閉ざしていた瞼を開く。胸の痛みを無視して笑ってみせる。
「……暗い話しちまったな」
どこか申し訳なさげな表情をする店員に軽く笑う。
「まァ戸締りには気をつけなって話だ」
もう一杯、といつの間にか空になっていたグラスをカウンターに置く。
「出来りゃあ強いヤツがいい」
暖簾の注文を受け、店員が黒糖焼酎のお湯割を置く。焼酎の甘い香の湯気に頬を撫でられ、暖簾は淡く淡く、笑む。
湯気の香りごと熱い酒を口に含む。熱帯びた息を吐き出して、格子戸の外へ視線を向ける。店員が暖簾の視線を不思議そうに追った直後、カラリと戸が引き開けられた。
「こんばんは」
丁寧な所作で戸を閉め、和服の老婦人がおっとりと店内の二人にお辞儀する。
「はい、いらっしゃい!」
「どうも、今晩は」
藍の帯を締めた白緑の着物の裾を上品に捌き、少し離れた席に座す艶やかな黒髪の老婦人に、暖簾は見覚えがあった。
「十六夜さん」
世話になっている組長と知り合いの女性に声を掛け、もう一度目礼する。
「あら、文貴君のところの……」
店員の供したおしぼりとお通しに頭を下げて、
十六夜 霞
は幼い頃を知る男の部下に微笑みかけた。
お互いを知りながらお互いに深い言葉は掛けず、二人は穏かに黙する。
「お待たせしました」
店員が差し出した焼き上がったばかりのホッケを前に、暖簾は短く礼を言う。箸を取りホッケをつついていて、物言いたげな店員に気付いた。黒い瞳を僅かに和ませる。
「――で、寝子島に娘と戻って来て、」
話途中だった半生を今現在に戻す。
「養子も出来て、神無月の旦那に惚れ込んで、今は其処で働いてるよ。娘は三人共俺にゃ勿体無ェくれェの子供達だし、」
この島に戻ってからの幸せを数え上げる。莞爾と笑う。
「俺は幸せ者だよ」
無意識のうちに触れていたペンダントを左の掌の内にきつく握り締める。
(確かにマリアは居なくなっちまったけども)
祈るように、亡くした愛しい妻に語り掛けるように、左手を胸に当てる。心底から己の幸せを信じる笑みを店員に向ける。
「いいもんだぜ?」
最強の呪文を唱えるが如く、呟く。
「……死が二人を分かつても」
唇に笑みを佩いたまま、カウンターに頬押し当ててうつらうつらと寝入り始める暖簾に、霞はあらあらと動じぬ笑みを浮かべる。
「昔話をねだってしまいまして」
霞の注文を受けながら、店員が照れ臭そうに笑う。
「宜しければお客さんのお話も、聞かせてもらえませんか」
「昔話、ねぇ」
黒く染め上げた結い髪からうなじに零れたおくれ毛を指先で戻し、霞は年齢と共に顔に刻んだ笑い皺を目尻と頬に浮かばせる。
「……聞いてていい話じゃないけど、いいのかしら?」
「聞かせて頂けますか」
グラスに注いだ甘めの日本酒を霞の前に置き、店員が嬉しげに頭を下げる。
「ぜんぶ、過ぎたことよ」
どこから話そうかしらと古い記憶を遡って、胸にまず湧いたのは己が父親の顔。
「私の父はね、ギャンブル狂いだったの。職に就かずに競馬やパチンコによく入り浸ってたりしてたわ」
柔らく垂れた焦げ茶色の瞳に何の感慨もなく、霞は数十年も昔に過ぎた長い修羅場を語る。
賭け事に勝っては気を大きくして次の賭け事に手を出して、負けても次こそはと別の賭け事に手を出していた父。物心ついて一番最初の記憶は、真夜中に目が覚めた時に耳に届いた両親の怒鳴り声。
襖の向こうの明るい部屋よりも、真っ暗な布団の中の方が怖くなかった。頭から布団を被って丸くなったことを覚えている。心臓が煩いくらいに耳の奥で鳴っていたことを覚えている。
幼い頃の記憶は、両親が大声で怒鳴りあって喧嘩していたことばかり。父母の恐ろしげな形相を見上げて部屋の隅で震える心細さと恐怖ばかり。家族揃って仲良くどこかに行った記憶もない。
「ある日、学校から帰ったら、母の姿がどこにもなかったわ。私を置いてどこかに消えてしまったの」
仕方ないわよね、霞は悲しむ素振りも見せず小さく肩を竦める。唇に笑み刻んだまま、グラスの酒を僅かに口に含む。
――かあさんは居なくなった
そう言った父の、能面のような顔をよく覚えている。人は憤怒のあまり表情を失うのだとその時初めて知った。
父から暴力を受けるようになったのは、その日から。
胸を突き、腹を蹴り上げ、それでも肌の露出する部分は決して傷つけたりはしなかった。
「どんなに酷い暴力を振るった後でも、学校には無理やりにでも行かされたわ。理由もなく休んだりしたら不審に思われると思ったのかしらね?」
壮絶な学生時代を口にしながら、霞は淡々と微笑み、首を傾げる。妙なところにばかり気の回る人だった、と己が父を突き放す。
そんな日々が終わったのは、中学三年生の夏。
終わりは唐突だった。
朝、目覚めると父の姿がどこにもなかった。
父が居なくなったその日は、父も母も居ない部屋で、誰にも邪魔をされず泥のように眠った。もう暴力を受けずに済む、その喜びばかりが、天涯孤独となった絶望や不安よりも先に立った。
「父が消えた次の日、黒服の男の人達がうちに来てね。父が私を売ってどこかに飛んだということを聞いたわ」
暴力を振るう父親の消失の確定は、己にとって福音でしかなかった。安堵の息を零す己を不審気に見るやくざ者達に連れられ、大きな屋敷の大きな座敷に引き出された。セーラー服で正座して、上座で大胡坐をかく男を真直ぐに見つめ返した。
「晶彦さん……夫と出会ったのはその日よ」
大座敷で初めて会った夫を思い出した途端、柔らかな思いが心を満たす。思わずくすり、華やいだ笑みが零れる。
「あの人ったら会った早々、私をくれって言ったわ」
父親である組長に言いながら己を見つめるままだった夫の、どこまでも真摯な瞳を、今もはっきりと覚えている。驚く己やそれ以上に驚く周りの人々や父親に正対し、彼はもう一度同じ言葉を言い放った。
――こいつ、俺にくれ
「それから色々あって、……本当に色んな事があったけど、晶彦さんと結婚することになったの」
無口で朴訥で、義理人情に篤い人だった。
「雨に濡れていた二匹の子犬を拾ってきてね」
背広が泥に塗れるのもかまわず、震える子犬を懐に抱いて玄関先に立っていた夫を思い出して、霞はまた微笑む。
「あの人は先に天に召されたけど、その子犬達が今は傍にいてくれてるわ」
「大変だったんですね」
店員の言葉に、霞はそっと首を横に振る。
「悲しい事や辛い事がたくさんあったけど、とても幸せな人生だと胸を張って言えるわ」
重ねた歳月を静かに想い、霞は穏かに強く微笑む。
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年01月02日
参加申し込みの期限
2015年01月09日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年01月09日 11時00分
参加キャラクター一覧
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