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遠雷のような、昔日の
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「三十年近く前になるか……その頃はヴェネツィアに居てね」
カウンターに両手を揃え、一颯は片眼鏡の瞳を細める。今も忘れ得ぬ、女性が居る。
「昔はピアノ職人をしていてね。その伝手で修道院からパイプオルガンの修理を依頼された」
静謐を身に纏うた、どこか枯れた雰囲気の男の口から淡々と語られるは、異国の恋物語。
場末の居酒屋に偶然居合わせた人々は、それぞれに異国の修道院を心に描く。ステンドグラスに彩られた光差し込む修道院の奥、金色の光放って鎮座するパイプオルガンを想像する。
「赴いた僕の世話役となったのは、もう若くはない修道女、ルチア」
彼女の名を唇に乗せた途端、一颯は深い霧の灰色した瞳を伏せる。瞳に浮かんだ感情を瞬きひとつで消す。声に一切の感情を乗せず、言葉を紡ぐ。
「ルチアは、修道院のしきたりに不慣れな僕を手厚くもてなしてくれた」
パイプオルガンの修理に勤しみながら、花咲き乱れる修道院の中庭を散策しながら、若い一颯は外の世界で見聞した様々な出来事を語った。ルチアが慈しみ深く語る修道院での日常に耳を傾けた。
「互いの知らぬ世界を語り合う内、僕らは互いに惹かれ合うようになった」
柔らかく優しく耳朶に触れる彼女の声を、その慎ましやかな瞳に宿るしなやかに強い光を、今もはっきりと覚えている。
愛している、と。確たる言葉を交わした訳ではない。神の嫁たる修道女のその手に触れたこともない。それでも、瞳を見つめ合い、他愛無い言葉を交わし合う内、互いの胸に灯る愛情は紛うことなく確かめ合えた。
「けれど、修道院は女の世界でね。僕は僕に与えられた仕事が終われば、修道院には一歩たりと踏み入れなくなる」
戒律に縛られる彼女を人目の届かぬ中庭の奥に誘ったのは、オルガンの修理が終わる日の夕刻。黄昏の緋色に染まる花の園で、初めて互いに互いの手を取った。羞恥に頬染め、罪悪感に修道服に包まれた身を固める彼女に、
「僕は逃避行を持ちかけた」
今風に言えば、と一颯は老いた唇を歪める。
「そう、駆け落ちだね」
マスカレードの宵に、と彼女は言った。
――この身を、この心を、貴方に捧げましょう
約束を定める彼女の瞳が、黄昏の光映して美しく燃えていた。
「けれど」
水の都が最も華やぐ祝祭の宵、喧騒に紛れて約束の場所に立つ己の前、約束の刻限を過ぎて、
「彼女は現れなかった」
華々しく飾りたてられた石造りの町を、毒々しいほどに鮮やかな仮面掛け、ドレスの裾を翻して歩いて行く人々の内に、ゴンドラに乗って笑いさざめく人々の内に、
「彼女が目印にと指定した鳥の仮面を必死に探したが、とうとう巡り逢えなかった」
一颯は息を吐き首を横に振る。
(……ルチア)
祈るように、心に囁く。
酒席であっても語り得ぬ、物語の続きがある。
彼女と逢えずに明けたあの夜以来、時折己が前に彼女の幽霊を見るようになった。ただ、別れたあの日より此の方、彼女の素顔は見て居ない。己が前に佇むのは、仮面で素顔を隠して黒い裳裾を引く貴婦人。それでも、一颯は彼女をルチアと信じた。
何故死んだのかと問うて、答えを得られなかった。だから一颯は彼女の死因を知らない。事故死なのか、病死なのか、自殺なのか。それとも誰かに殺されたのか。殺されたとするのならば、その理由が何なのか。
(知る勇気がない)
あるいは、現実のルチアは健在で、己が見る彼女の幽霊は、己が彼女恋しさ故に生み出した幻なのかもしれない。
(そうであってほしい)
愛した女の為に、一颯は心からそう願う。
唯一の後悔は、彼女との約束を守れなかったこと。
あの夜、もっと本気で捜していれば。
迷路のような水路をもっと隅々まで捜していれば。
そうすれば、生身のルチアを抱擁できたかもしれない。時折、そんな忸怩たる思いに身を苛まれる。
(……老人の繰り言に過ぎん)
黙する老紳士を、寂はそっと見つめる。掛ける言葉を見つけられず、小さく俯く。
「寂君は優しいですね」
艶やかな黒髪に縁取られた寂の横顔を見つめて後、識は睫毛を伏せる。杯の水面に視線を落とす。
「出来るなら、あなたの姿を絵に残しておきたい」
この眼から光が全て失せてしまうよりも前に。
今傍らに居る美しい少女の姿を紙に描き留めたい。書き写せるほどに見つめ続けたい。
「……なんて」
口にしてから、これでは口説き文句だと思い至った。
「酔ってますね私」
慌てて取り繕おうと顔を上げて、己を真直ぐに見る寂の青空色の瞳と目が合った。
「私を絵に?」
頬を真っ赤に上気させ、寂は瞳を輝かせる。
「まあ、嬉しい!」
初めて言われた言葉に、つい子供のように嬉しくなる。声を上げ頬に両手を当て、うっかり飛び跳ねて喜びを表しそうになって、我に返る。幸せにどきどきと鳴る胸に両手を押し当て、そっと深呼吸。
「ありがとう存じますわ」
何故だかどこか照れたような表情をしている一回り以上年上の日本画家の先生に心からの礼を伝える。現実よりも更に美しい色彩で世界を描く先生の繊細な筆で、自身はどのように描いてもらえるのだろう。思えば思うほど、想像すればするほど、期待に胸は高鳴る。
「でも先生、あまりムリなさらないでくださいませ」
自分の楽しみばかり、と自身を叱って、寂は傍らの識の手を取らんばかりに懇願する。
「人間からだが資本とも言います」
年下の少女に真剣に説かれ、絵にのめり込んでしまえば寝食忘れがちになってしまうことを自覚している識は曖昧に頷く。
「私で良ければ力になりますから」
いつでもおっしゃってくださいね、と念を押して、寂は勢い余って識の手を両手で握りしめる。
「何かあったら、私がお守りいたしますから……」
力強く請け負って、識の手に掴まったままふわふわと心地よさげに小柄な体を揺らがせる。ふうわりと赤い顔で識の肩に寄りかかる。
「おや」
寂君、と呼びかけて、
「絵、楽しみにしておりますわ」
夢現の狭間、それでもしっかりと応える寂に識は苦笑気味に嘆息する。若い娘に少し飲ませすぎてしまったか。
「先生、私、大切なことはしっかり覚えてます、から……」
「大丈夫ですか、家まで送ります」
支払いを済ませ、識は同席の面々に暇乞いする。
「女将さんにお大事にとお伝えください」
「ありがとうございます。先生もお大事に」
識と寂が席を立ったのを潮に、静も会計を頼む。
「今度は女将がいる時に来たいな」
その時は、と灰色の瞳を和やかに笑ませる。
「あなた達の話も聞きたい」
「またのお越しをお待ちしてます」
頭を下げる店員に目礼し、静は店を出る。先に出たふたりとは反対の方向に歩き出そうとして、店を出、ひとりふわふわと月夜に歩き出す古書店店主の和服の背を追う画家の姿を何気なく視線だけで追う。
少女のような背に追い着いた画家は、はぐれそうな子供にするようにその手をしっかりと繋いだ。蒼い月下を、ふたつの影がのんびりと歩いて去る。
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
秋の夜長の昔語り、お届けにあがりました。
みなさまの様々の人生や出会い、たくさん聞かせてくださいましてありがとうございました。とても楽しく書かせて頂きました。
少しでもお楽しみ頂けましたら嬉しいです。
ご参加くださいまして、読んでくださいまして、ありがとうございました。
またいつか、お会いできましたら、お話を聞かせて頂けましたら幸いです。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ(150)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2015年01月02日
参加申し込みの期限
2015年01月09日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年01月09日 11時00分
参加キャラクター一覧
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