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遠雷のような、昔日の
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「よう、邪魔するぜ」
宵闇を背に縄暖簾を分け、格子戸を開けた
浅葱 甚三郎
が見たのは、カウンターの外で大きな体を窮屈そうに縮こまらせて布巾を使う店員。
「あ、眼鏡屋のご隠居さん」
いらっしゃい、と女将とそっくりなのんきな顔で笑いかけられ、甚五郎はオールバックに流した灰色の髪を掌で撫で付ける。
「なんでえ、女将さんはお休みかい」
「ちょっと風邪ひいたみたいで」
「そうかい、大事にな」
女将に手を引かれてよちよち歩いていた頃を知る店員と気安い言葉を交わし、適当な席に着く。店員の大きな体がカウンターの内に引っ込んで、
「うん?」
奥の席まで見通せるようになった視界の端、ひとり日本酒を愉しむ外国人らしい男の姿が眼に入った。
「今晩は、一人かい」
「はい、今晩は。ご覧の通りです」
度の入っていない眼鏡を押し上げ、厳つい強面を人懐っこい笑みに崩す甚三郎に、寝癖のついたブラウンの髪した外国人は外国人らしからぬ流暢な日本語で笑って応じる。
「お、達者な日本語だな」
「かみさんが日本人なものですから」
手にしたコップ酒を片手に掲げ、
ピーター・ビアズリー
は髪と同じ色のたれ眼を楽しげに細める。
「そうかそうか、隣いいかい?」
「もちろんです」
親子ほど年の離れた甚五郎の申し出に快く頷いて、名を名乗るピーターに甚三郎も応じて名乗る。
店員が差し出すおしぼりとお通しの冷奴を受け取り、まずはと日本酒熱燗を頼む。
「あとは焼き鳥な。皮とモモとぼんじりあたりをもらえるか」
酒とつまみの準備に入る店員の背を見遣り、甚三郎は孫も通う居酒屋を見回す。
「やっぱりこういう夜はハナさんだよねぇ。ぷらっと来ても、酔って誰かと喋れるってのはいいよ」
「全くです」
甚三郎の言葉にピーターはほろ酔いの顔で大きく頷く。いつの間にか人が集い、酒を酌み交わしている間に、元々は顔も知らなかった人同士が知らぬ間に仲良くなっている。ここはそういう店なのだろう。
届いた熱燗を手酌し、ピーターに向けて掲げる。居酒屋で初めて顔を合わせた者同士、乾杯する。
「ハナさんにはよく来るのかい?」
「この島に滞在している時はよく来ますねえ」
「ここには旅行か何かで?」
「旅行と言うか、不定期に滞在して島のあちこちをふらふらしてます」
旧市街に星ヶ丘に九夜山に。地域によって表情を変えるこの島は、歩けば歩くほどに違う顔を見せてくれてとても楽しい。
「かみさんとは若い頃からあちこち旅をして、色んなとこ行ったけどこの島はなかなかに魅力的ですねえ」
「おお、違いねえ」
甚三郎がお通しをつまみに猪口を何杯か空け、耳まで顔を赤くするまでの僅かの間にふたりはすっかり意気投合する。
「日本人のかみさんとやらは?」
一緒じゃねえのかい、と問われ、ピーターは何故かふうわり頬を赤くして照れる。
「ここには一緒に来ていないですが、電話やメールで毎日のように話をしています」
「電話やメールなあ」
ピーターの話に楽しそうに相槌を打ち、否定はせずに感慨深げに頷く。
「俺ぁじじいで古い人間だからよぉ、やっぱり会えるのに会わねえのは寂しくなっちまうわな」
「偶には寝子島の土産話を持って帰っていますよ」
「そうなのかい?」
「いつだったかは一緒に行こうかって話になったんですがね……」
「ほう」
甚三郎の相槌と重なって、格子戸が遠慮がちに開いた。
「おばんです」
「はい、いらっしゃい!」
すっかりと暮れた路地を背景に、大柄な男が物静かな雰囲気を纏って立つ。奥に掛ける同い年ほどの外国人男性とその父親の年ほどの眼鏡の男性に丁寧なお辞儀を見せ、
楾 龍一郎
は整えた黒い髭の唇と目元に穏やかな笑みを滲ませる。手近な椅子に掛け、酒と炭火の匂いの満ちる店内を見回す。
「えっと、生一つ。あと何か魚で一品もらえますか?」
「秋刀魚のいいのが入ってます。唐揚にしましょうか」
「お願いします」
普段は自営する星ヶ丘のシガーバー&カフェで一日の大半を過ごしてはいるが、今日はたまたま旧市街で済ませなくてはならない用事があった。用事を済ませて後、ふと思い立って二三ヶ月ぶりに訪ねた馴染みの居酒屋は、以前訪れたときとほとんど変わっては居ない。
「そういえば女将さんは……」
いつも客を応対する女将の姿がないことを問えば、風邪でお休みです、との返事。
「お大事に、とお伝え下さい」
「ありがとうございます」
龍一郎の丁寧な言葉に礼を言い、店員が生ビールのジョッキを前に置く。
仕立ての良い三つ揃えの背広に包んだ大柄な背筋を直ぐに伸ばし、どこか浮世離れした雰囲気を纏ってビールを一息に半分近くを飲む壮年男性に、店員が真剣な面持ちで請う。
「良ければ、昔話を聞かせてもらえませんか」
「……昔話、ですか?」
「はい」
「僕の?」
「はい。できれば大切な人との出会いなんかも」
不意を突かれて目を丸くする龍一郎に、お客の歩んできた道を知りたいお年頃な店員は大きく頷く。
「こら、お客さんを困らせちゃなんねえ」
「不躾でしたでしょうか」
横で楽しげに酒を酌み交わしていた甚三郎から叱り飛ばされ、店員は熊じみた巨体を丸める。
「でも、浅葱の爺ちゃん。おれ、爺ちゃんの昔話も聞きたいよ」
そうしながら、己の子ども時代を知る眼鏡屋のご隠居にうっかりと子どもの頃と同じ口を利いてしまい、店員はしまったと口を押さえてますます小さくなる。
穏かな声で龍一郎は笑う。大丈夫ですよ、と偶然居合わせた老齢の男性に思慮深い笑みを見せる。
「けれど、いや、参ったな。普段は客のそういう話を聞く立場ですから」
「君も客商売の人かい?」
眼鏡の男性の隣から、ひょいと外国人男性の顔が人懐こそうな顔を覗かせる。
龍一郎がバーのマスターをしていることと己が名を名乗れば、先客二人は最早顔馴染みとばかりに隣の席に移ってきた。
「人生の先輩の話を聞けるのはありがたいし貴重ですからねえ」
ピーターが甚三郎にしみじみと頷き、次いで龍一郎にも笑いかける。
「もっとも龍一郎君と私は同い年くらいだよねえ」
どこか惚けた口調で、ひょいと人の懐に入ってくる、どこか風采の上がらぬ体ながらも憎めない男に、龍一郎は決して笑みの崩れぬ顔で頷く。ジョッキに残ったビールを飲み干し、秋刀魚の唐揚を届けた店員に冷酒を頼む。
人の話を聞くばかりで、自分の事を話すのには慣れていない上に、
「大して面白い話は出来ませんよ」
龍一郎は最早地顔かとも思わせる和やかな笑顔で店員に釘を刺す。
「人生の参考になるわけでもない、……下らない人生です」
物静かに笑むまま、己自身を辛辣に貶める。それでもいいのなら、と瞳を伏せる。店員の注いだ冷酒を一口二口含んで後、己の生まれを口にする。
「僕は元々静岡の生まれで。ごく普通に生まれて、ごく普通に生活していました」
ただ、と冷酒の水面を見つめる。ほんの少しだけ、普通と違うところがあった。
「親戚が地元の名家で……所謂分家と呼ばれるものですね」
分家だからこそ、家柄への拘りは凄まじかった。
世間体に拘り跡継ぎに拘る家の中で、家を継ぐ者だけが絶対だった。その権利のない己には居場所などなかった。
幼い頃から跡継ぎのスペアとして育てられた。誰も己を己として見てはくれなかった。家族も、地元も、何もかもが嫌いだった。
「まぁ、旧家のしがらみ、って言うんでしょうか。そういうことも含めて嫌で嫌で仕方がなくて、」
だから逃げ出した。
「逃げるように家を出て、寝子島に辿り着きました」
あの家を呪いのように縛る『名家の血』から、もがいて足掻いて、もしかしたら今も逃げ続けているのかもしれない。
「この島はとても良いところですよね」
暗い思いを振り払うように、龍一郎は明るい笑みに満たした瞳を上げる。
「お陰様で今は、……まぁ幸せ、なんでしょうね」
柵に縛り付けられず、自由気ままに生きていられる。これで我が侭を言ってもっと求めてしまえば、
(きっと罰が当たる)
そうして好き勝手にこの風光明媚な島で生きていられるからこそ、あの地に踏み止まらず、戦うことをせず背を向けて逃げ出したという情けない現実からずっと目を背けていられるのかもしれない。
目を背けている間は、明るいものを見ていられる。
「あとは、……なんでしたっけ、大切な人、ですか?」
待ってましたとばかり期待の色を浮かべる店員に、龍一郎は申し訳無さそうに首を捻ってみせる。そっと視線を逸らす。
「そういうのはね、……うん。僕も全く縁がなくてね……」
「だってバーのマスターとかモテるに決まってるのに。渋いのに。格好いいのに」
店員は意外そうに目を瞠る。何だか夢破れる寸前のような切実な視線を感じて、龍一郎は苦笑気味に首を横に振る。
「さすがにこの歳だと難しいでしょうし……」
「オジサマの魅力とか」
「いい加減にしろっつうの。全く、女将さんが居ねえとすぐ調子に乗りやがる」
言い募ろうとして甚三郎の一喝を受け、店員はしょぼくれた顔で調理作業に戻る。
「ほら、俺の昔話も聞かせてやっからよ」
肩を落とす店員の背中に声を掛けつつ、甚三郎は齢七十八の今に至る迄の記憶を辿る。
(昔話ぃ、大切な人ねぇ……)
「そりゃあ死んだ家内ももちろんだけど、家族みんな大切だよなぁ」
熱燗をちびちびと舐めつつ、この中で唯一孫まで居る甚三郎は首を傾げる。
「そういや孫らが生まれた時も……」
「孫」
孫どころか恋人も居ない店員から途方に暮れた視線を受けて、甚三郎は眼鏡に飾られた強面をきょとんとさせる。
「……あ? 孫なんて未来過ぎて想像つかねえってか、ははは!」
豪快な笑い声を響かせ、ぐいと杯を空にする。
「孫ってなぁ、いいもんよ!」
勿論息子で生まれた時も嬉かったが、その息子に子どもが出来たときに抱いた感慨は思いがけず大きなものだった。
「……なんつうかなぁ、命の繋がりみたいなもんを思ったわけさ」
わかるか、と焼台の前で団扇を使う店員を見遣る。
己と妻との間に生まれた息子にまた子が出来る。それは知識としては充分に解っていたが、実際にその繋がりを目にし、孫たちを手に抱いたときの感動は恐ろしく胸に迫った。
「俺の……遺伝子っつうか、俺が生きた証みたいなもんがなぁ」
生まれたばかりの孫を目にした時の気持ちをうまく言葉に出来ず、甚三郎はもどかしげに両手で宙を掴む。これからまたこの生まれたばかりの孫が大きくなって結婚して子を産んで、そうして広がって残って行くのだなという命の繋がりの実感を、この若造達にどう伝えればうまく伝わるのだろうと悩んで悩んで、
「……まあな! 家族ってのはいいもんだよ!」
結局放り出す。大雑把に纏める。
「お孫さんが可愛くて堪らないんですね」
「いいですねえ」
如才ない笑顔を浮かべる龍一郎に、楽しげに相槌を打つピーターに、甚三郎は力いっぱい頷く。
「可愛いぜ! たまにゃ可愛くねえけどな」
(しかしまぁ、)
酒を飲みつつ独り言じみてごちるのは、その可愛い孫たちの事。
「孫ってのは双子なんだがよ、姉は飄々としてて何考えてっかわかんねえし」
そうだ聞いてくれよ、と甚三郎は己で手がけた己の伊達眼鏡を外して眉間を揉む。
「仕事で島の外に出てってる息子達についてった姉がこないだ帰ってったはいいんだが、島を出てく前に俺が丹精込めて手がけてやった眼鏡をどっかにやっちまったなんぞ言い出してなあ」
猫と眼鏡女子をこよなく愛する眼鏡屋のご隠居は深々と溜息を吐く。
「弟はうじうじしやがってどうにもならん」
「立派に眼鏡屋の跡を継いでくれてるじゃないですか」
旧市街に店を構える跡継ぎ同士の妙な連帯感を感じているのか、店員が眼鏡屋の二代目であり店の常連でもある孫を庇う。
「あのな。そもそも早々に店を孫に継がせたのはそうでもしねえと先が見えねえからだっての! 知ってるだろ、奴の積極性の無さ。皆無だ。ゼロだ!」
身内ならではの遠慮のなさと酒の勢いで、甚三郎は今ここには居ない跡取りの孫に向けて愛のある罵声を叩きつける。
脂っけの多い部位の焼き鳥を旺盛な食欲を見せて齧る。赤い顔で酒をあおる。
「奴らも早く身を固めて安心させてくれねえかな」
ぼやいて見回せば、右には既婚者、左には女性客と知り合う機会も多そうなバーの洒脱な雰囲気のマスター。正面の独身彼女なしな店員はあてにできんと切り捨てて、甚三郎は左右の男ふたりに虎視眈々たる瞳を向ける。
「なんかいい縁談ねえかい?」
冗談じみた口調ながら案外真剣な眼をする甚三郎に、龍一郎は困った笑顔で首を横に振る。ピーターはうーんと首を傾げる。
「あれ、浅葱? 眼鏡屋さん?」
そのうち、ふと何かが繋がったように呟いて、甚三郎の顔をまじまじと見つめる。
「何でえ」
「いや、今気付いたんですが。私、お孫さんとここで時々ご一緒します」
「あ? そうなのか?」
「そうですそうです、そう言えばどことなく目元が似てますねえ」
いやあ参ったなあ、とピーターはほろ酔いのおでこをペシリと叩く。
「こりゃ奇遇なこともあんだなぁ!」
「いい青年です、娘が居れば一度会わせてやりたいくらいなんですが、残念ながら私、子供がいないんですよねえ」
拘らない風に言いながらも、実は甚三郎の子や孫の話は矢張り羨ましかった。それでも、子を持ち孫を持ち、彼らの行く末を心配しつつも楽しげな酒飲み友達の様子を見るのは楽しかった。
「あ、でも犬が居ますよ」
こーんな、と両手をいっぱいに広げる。それでも大型の愛犬の大きさには足りず、ピーターはどこか照れ臭そうに笑う。
「性格の可愛い奴なんです」
「その犬は今はかみさんと一緒かい?」
「ええ」
愛妻と愛犬を思い、優しい顔を尚更優しく笑み崩す。
「よければ、馴れ初めをっ」
店員に勢い込んで訊ねられ、ピーターは目を丸くする。ええと、とほろ酔いの頬を引っ掻く。
「初めて会ったのは南の方の島だったねえ」
「南の島での運命の出会い……」
あまりの羨ましさに身悶える店員に、ピーターは慌てて手と首を横に振る。
「とは言ってもそんなロマンチックなものじゃなくって、あの時は台風が来てて大荒れで大変で……」
それでもまあ大したことにはならないだろう、雨風もすぐに収まるだろうと半袖半ズボンでホテルを出ようとしたところを、偶然ロビーに居た観光客風の女性に捕まえられた。
「呑気に構えてたら怒られちゃったんだよねえ」
それはもう、初対面とは思えないくらいに激しく叱られた。
「この島も夏に台風が来てたけど、その時にも昔のこと思い出しちゃったよ」
見知らぬ人間にここまで一生懸命になれるその女性がとても好ましく思えて、――その女性が、今の妻。
酔いと妻への愛に頬を染めるピーターに、甚三郎と龍一郎と店員は、三者三様の思いに駆られて息を吐く。
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15人
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シナリオガイド公開日
2015年01月02日
参加申し込みの期限
2015年01月09日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年01月09日 11時00分
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