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古ぼけた縄暖簾の前、
津軽 寂
は群青の袴の裾捌いて振り返る。涼やかな朝顔描いた薄青の着物の袖と、細い腰までを覆う長い黒髪が艶やかに揺れる。
「素敵なお店ですこと! お誘いくださいましてありがとうございます」
蒼玉の色した眼が、軒に掛けられた提灯の赤い色を帯びて楽しそうに輝くのがひどく美しく見えて、日本画家である
夕凪 識
は琥珀の眼に力を籠める。
「私、居酒屋さんは初めてですわ」
「ここには作品が完成したとき祝杯を上げる為に訪れることがあります」
完成の余韻に浸りたいが為、大抵は一人、カウンターの隅で杯を傾ける。午前に一作品を描き上げた今日も、その例に洩れず一人で来るつもりだった。
(誰かと一緒なのは初めてですね)
識は傍らに楚々と立つ寂に、眼鏡に淡く隠した視線を向ける。
知り合って日の浅いこの女性と一緒に此処に来てみようと思ったのは、己のことながら何故だろう。確かに好感を持ってはいる。気になる女性であったりもする。
「お邪魔してもよろしゅうございましょうか」
「勿論ですとも」
秋風に揺れる縄暖簾を緊張した面持ちで見上げる寂に、識は芝居がかった調子で笑いかける。
縄暖簾を払い、温かな光を零す格子戸を引き開ける。
「いらっしゃい! 今晩は、先生」
カウンター内で一人、鳥に串を打っていた熊じみた店員が嬉しそうな声で客を迎える。
「珍しいですね、お連れさんがご一緒なんて」
「ごきげんよう。本日はどうぞよろしくお願いいたします」
「あっ、いえいえッ、ようこそお越しくださいましてっ」
続いて店内に入った寂が淑やかなお辞儀をして店員を慌てさせるのを、ちょっと人の悪いような笑みで見つつ、識は寂と二人で適当な席に着く。
「日本酒でいいですかね」
「お任せいたしますわ」
お通しのスズキの西京漬とおしぼりを届ける店員に慣れた口調で日本酒とつまみになりそうな何品かを頼む識の隣、寂は炭火の匂いと色の染み付いた店内を見回す。カウンターに飾られた年代物の飾りや、花瓶に活けられた秋桜、壁に貼り付けられたまま煙の色に染まった手書きの品書き。
飾らぬ温かな雰囲気は、どこか懐かしい心持ちさえ感じさせてくれた。
「私の奢りです」
「まあ」
識が差し向ける銚子を慣れぬ手つきの猪口で受け、寂はありがとうございますと素直に頭を下げる。せめてものお礼にとお酌を返そうとして、そっと制された。己の猪口には手酌して、識は寂と静かに乾杯する。
人肌に温められた済んだ日本酒に唇つけて、寂はふうわりと微笑む。二十歳を迎えてまだ間もない。酒は嗜む程度にしか飲んだことはないけれど、
(本日はなんだか飲み進めてしまいそうな)
杯を両手に支え、寂は考え深げにひとつ瞬く。
(これが居酒屋さん効果なのでしょうか)
大真面目に頷く蒼く澄んだ眼の縁は、猪口一杯分の酒でほろ酔いの薄紅に染まっている。
店内を満たす温かな空気に、つ、と夜気が忍び込む。寂が冷たい静けさを辿って頭を巡らせれば、戸口に夜を連れて立つ、三つ揃えの背広に黒い外套を羽織った老紳士がひとり。
「あっ、いらっしゃい!」
「隅の席をお借りするよ」
遅れて気付いた店員に穏やかな笑みを向け、
木原 一颯
は入り口近い端の席に腰を下ろす。片眼鏡の奥、灰の色した眼で店内を見回す。
(……こんな店があったのか)
己がイタリアに渡る二十数年前より在ったはずのこの店の存在を、以前は気付きもしなかった。
イタリアはヴェネツィアより帰国し、星ヶ丘に在を移してまだ日は浅い。過去と現在を照らし合わせるように、故郷の島をあちらこちらと歩き回っているうちに辿り着いた場末の居酒屋の隅、一颯は小さく息を吐く。目元に柔らかな笑みの皺を刻む。
(秋の夜長に早寝も寂しい)
お通しを出す店員に熱燗とつまみを頼み、秋風に冷えた身を店内の空気に暫く休める。
「お待たせしました」
熱燗を供すると同時、店員に昔話を請われ、一颯は温和な苦笑いを浮かべる。
「物好きだね」
「不躾にすみません。……先生も、お連れさんも、よければ」
「私は別に構いませんよ」
「私もですか……? 最近のお話になってしまいますが、よろしいでしょうか」
隣席の青年が無造作に頷き、少女が蒼い眼を丸くして微笑む。
さて、と皆が皆それぞれに語るべき記憶を探そうとして、カラリ、開いた扉に気を取られた。今晩は、と落ち着いた声が響く。戸口には、黒髪をひとつに結うた長身の青年。
「いらっしゃい」
店員の声に目礼し、
服部 静
は老紳士と男女二人連れの間の席に着く。仕事の帰りに焼き鳥屋を見つけ、古びた佇まいに惹かれて思わず入ったが、
(……いい感じの店だな)
古い物に魅力を感じる美術館の学芸員は、店内に流れるどこか懐かしいような空気に己の嗅覚の正しさを思う。けれどそれはそれとして、
(腹減ってきた)
店員の出したお通しの焼魚を前に、品書きを眺めて眼についたものを適当に注文する。品物が出来上がるのを待って、カウンター内で立ち働く店員や店内を眺めていれば、店員はどうやら客から昔話を聞き出そうとしている様子。
(……ふむ)
静は興味深げに店内を見回す。
「良ければ僕にも聞かせてもらえないだろうか。……人でも物でも、昔話が好きなんで」
集まる店内の視線には動じず、静は灰色の瞳を気さくに笑ませ、
「あ、僕はこういう者です」
如才なく美術館学芸員としての名刺を見せる。
「学芸員さんですか」
渡された名刺を確かめ、眼鏡越しの琥珀の眼を歪める和装の男に、静はどこか見覚えがあった。実際に見たわけではない。おそらくは美術雑誌か何かだろう。
「……『奇想の画家』」
雑誌に記されていた情報を思わず口にして、不真面目な笑みだけを返された。
「では、まずは若輩者の私から参りましょう」
頬をふうわり酔いに染め、長い黒髪に飾られた和服が印象的な、少女じみた容姿の女性が人懐っこい声で口火を切る。
「私、
津軽 寂
と申しますわ。ささやかながら古書店を開いておりますの」
杯をカウンターに置き、寂は微笑む。
「私、東北の生まれなのですが、お父様の仕事で各地を巡ることもありましたの」
両親が忙しく話し相手のいないときは決まって本を読んでいた。自宅でも、父の仕事で巡った日本の各地でも。
仕事に忙しい父の許しを得て、その地その地の図書館を巡って歩き、自分では買い求め難い画集を貪るように見つめた。古書店街をふらつき、どこか懐かしいような本の匂いをたくさん嗅いで、色褪せた表紙の小説を数十冊と買い漁っては読んだ。滞在先の古い書架を埋め尽くしていた絵本を、何日も掛けて読み通したこともある。
気が付けば、文字や絵の書かれたものを手当たり次第に読み解く癖がついていた。
「様々の場所の様々な本を読んでおりますうち、いつの間にか、本が大好きな人間になっておりました」
ただ読むだけではここまで本の虫には成り得なかっただろう。
どんなに忙しくとも、夕食時には家族みんなで食卓を囲んだ。そうして、寂が読んだ本の話を楽しげに頷き聞いてくれた。心躍る冒険も、少し悲しい恋も、不思議な妖の話も。
「私の家族は、私の話す本の中のどんな夢物話も、いつも温かく耳を傾けて聞いてくれましたの。楽しく素敵な時間でした」
あの頃の体験が今の自分を作っている。愛されて育った少女は、一抹の暗さもなく、自分の幸せを疑わずにどこまでも明るく笑う。
「今は手紙を送って、日々の出来事を交換していますのよ」
「良い御家族ですね」
端の席の老紳士に柔らかく笑みかけられ、寂は宝物を褒められた幼子の表情で頷く。
「良い家族に恵まれて、私は幸せ者です」
澄んだ瞳で真直ぐに老紳士を見る。
「先輩方のお話、色々聞けましたら嬉しいです。よろしければ、聞かせて頂けませんか?」
酒を楽しむ周囲の男性陣に頭を下げる。少女とも見て取れるほどに若い寂に頭を下げられ、老紳士と学芸員は僅かに照れた視線を見交わす。
「先生も、よろしければお話を聞かせてくださいな」
傍らでじっと己の話を聞いてくれていた識にも、寂は丁寧に請う。
「その、ご迷惑でなければ、ですけれども」
「寂君の学生時代はなんだか微笑ましいですね」
焼き上がったばかりの焼き鳥を店員から受け取り、識は普段の皮肉げなものとは違う淡い笑みを瞳に滲ませる。本の虫なところも、素直で明朗な性格も、昔とあまり変わってはいないようだ。瑞々しい感性や育ちの良さは、彼女の両親の賜物だろう。
その少女のような無垢な瞳に覗き込まれ、識は思わず瞬く。頬に困惑浮かべ、私の番ですか、と口の中で呟く。
「……実は味覚障害なんです」
口を滑らせてしまってから、掌で唇を覆う。自ら話すことはなかったが、げに恐ろしきは酒の勢い、というものだろうか。識は気遣わしげに店員を見遣る。
「お気を悪くしないで下さいね。それでも場の雰囲気だけで楽しめますし、ここに通うのもそういう理由です」
ひょいと杯を取り、勢いを増させるように酒をあおる。
「芸大時代の話です。運搬中のガラスの下敷きになりましてね」
仰いだ瞳に青空の塊が降って来た瞬間を、よく覚えている。
それが巨大な硝子の一枚だと気付いたのは、運搬者や周囲の人々の悲鳴を耳にした瞬間。気付いて、けれど避ける間もなく青空写した硝子に潰された。硝子と共に地面に押し倒され、砕け散る硝子の破片を間近に見た。
あの時、どうして瞼を閉ざさなかったのだろう。
理由は解っている。
己の体中の皮膚や肉を切り裂いて跳ねる硝子の破片が、陽光を纏い煌かせる様子がひどく美しかった。それだけだ。
例えその光の欠片に瞳を刺されようとも、眼に捉えていたかった。いつか、光を描くために。
全身を陽色の光に押し潰された代償は大きかった。病院のベッドで意識を取り戻した時には、手が動かなくなっていた。何を食べても味が感じられなくなっていた。視力がひどく弱くなっていた。
「手はリハビリで動くようになったのですが、味覚と目に後遺症が残ってしまいました」
眼鏡の奥の瞳に力を籠める。視力を矯正していてさえも、時折世界が滲んでぼやける。この目は、直に見えなくなる。
「当時は自分の運命を恨みました」
それでも。手の自由が奪われ瞳から光を奪われようとしていても、絵に対する執念は消えなかった。描こうとする意欲はむしろ熱く胸に燃え上がった。
「今は、そういう経験もあってこその今の自分があると思えます」
琥珀の眼に消えない炎宿して、画家はあっかけらんと明るく微笑む。
「何も悲観しておりませんよ」
「……僕もそう語れる人生を送りたいものだ」
静かに聞き役に徹していた静がぽつりと零す。苦難を力に変えることの出来る画家の強さと芸術への傾倒は、賛辞に値する。
美術館学芸員という仕事柄、芸術家と接することも多い。今日この場で、日本画家の彼に会えたのは僥倖だったと静は思う。学芸員をしながら、将来継ぐ父の美術商の修行をしている身にとって、彼の話はこの先も眼にすることも多いだろう彼の絵を理解するために大切になってくる気がする。
彼のような強さを持ちたいと思う。
彼女のような素直なしなやかさを素晴らしいと思う。
余計な口を挟まないながら、静の心には話を聞かせてくれた古書店店主と画家への強い共感がある。
「次は君の番です」
「……僕?」
画家に水を向けられ、静は眼を瞬かせる。店内の光を受け、灰の色した眼が僅かな蒼を帯びる。瞼が上下する間に、瞳の蒼は消える。
話をと言われても、と静は首を捻る。二十四を過ぎたばかりの若造に何を語れと言うのだろう。
「僕の生まれは京都でね」
酒で口を湿し、静は幼い頃の記憶を辿る。
両親は仕事で家を開けることが多かった。そのため、弟が大きくなっていい遊び相手になるまでは、大抵ひとりで過ごした。寂しくなかったと言えば、きっと嘘になる。
「幼い頃は京都中を歩き回ったよ」
歩いていれば、色んな人に出会えた。大通りを歩けばいつでも観光客が多く居たし、寺社に迷い込めば土産物屋の店番をする人々が声をかけてくれたし、それに。
「あそこは先人達の遺産が山程あったからな」
今から思えば、古いものに興味が湧いたのはあの頃が始めかもしれない。
「最初はただの退屈しのぎだったが、いつの間にかのめり込んだ」
昔の人々の智恵が詰まった建造物に、普遍的な美しさの仏像に、古物に宿る過去の人々の思いに、心を奪われた。
彼らと同じに造形美を作り出すことに憧れ、一時期は彫刻家を目指したこともある。けれど、ある時気付いた。己は伝える方が好きなようだと。
静かな場所に佇み古い物を見つめていると、不意に伝わってくることがある。そのものが内包する長い時間の記憶、そのものが受け取ってきた感情。
時折、その記憶や感情の渦に呑み込まれるような感覚に襲われることすらある。
「僕はね。先人達の遺産や新たに生まれてくる芸術品達を伝えたいんだ」
先人達の遺産とも言うべき古書を扱う店の店主と、旺盛な創作意欲で新たな芸術品を生み出し続ける画家を見遣る。
「この世界は美しくないかもしれんが素晴らしいものが溢れている。それを伝えたい」
話していて、ふと、己の口調の熱さに照れた。照れ臭さを誤魔化して酒を口にする。
「……話すぎて少し疲れた」
酒が入っているとは言え、美術関係の講義以外でここまで饒舌に語ったことはないかもしれない。
(けど、さっきのは講義みたいやったかもしれへんなあ)
そのことに思い至り、静はほろ酔いじみて熱持つ頬を引っ掻く。傍らで黙する老紳士に、昔語りを請う。
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2人まで
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日常
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15人
参加キャラクター数
15人
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シナリオガイド公開日
2015年01月02日
参加申し込みの期限
2015年01月09日 11時00分
アクション投稿の期限
2015年01月09日 11時00分
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