【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！｜リアクション

【体育祭】熱闘！　寝子高伝統の騎馬戦！

　鬼崎つくしは迷子になっていた。

　姉の鬼崎あやめと最愛の想い人の冴木竜司の応援にやってきたつくし。
　だが、予想以上の混雑ぶりに帰る席へ戻る道を見失ってしまった。
「お姉ちゃん、ここ、どこ……？」
　同じく小学生の夕霧真は引率役の施設の先生とはぐれてしまっていた。
　はぐれたもの同士、今は身を寄せ合って会場内を彷徨っていた。
「えっと、どのあたりでしたっけ……きゃっ！」
　周囲を見渡しながら歩いていたせいか、つくしは大人の男性にぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい……」
　咄嗟に謝るつくし。
　だが……。
「なんじゃこのガキ！？　どこ目ェ付けて歩いてんだボケェッ！」
　不運にも、ガラの悪いチンピラ相手だった。
「こ、怖く、ないよっ……！」

　そういう夕霧は既に泣きそうだ。
　でも大嫌いな暴力の前に、毅然とチンピラの顔を睨みつける夕霧。
　それがチンピラの逆鱗に触れてしまう。
「さっきからジロジロ見やがってクソガキが！」
　トラブル発生！
　怒声に周囲の観客がさっと我関せずを貫くように立ち去っていく。
　絡まれたつくしと夕霧は思わず震え上がる。
「目障りだ、吹っ飛べ！」
　チンピラの太い足から蹴りが放たれる！
　……はずだった。

　ガンッと木製バットを打ち付けたような音があたりに響く。
　２人は恐る恐る目を開けると、目の前には白目を剥いてうつ伏せに倒れているチンピラの姿が！

「失せろ！　折角、可愛い私の妹が活躍する行事なんだ、野暮な真似すんじゃないよ！」
　ぶんっと五尺ほどの木刀を振り上げて担ぐ女性こそ、暴走族を１人で壊滅させたこともあると噂される、シーサイドタウンにある和菓子屋『萩屋』の店主の矢萩秋その人である！
　背後からの木刀による一撃必殺！
　一流の剣道の腕前を持つ秋だからこそ出来る技である。
　……彼女のろっこんが発動しなかったのは、チンピラにとって不幸中の幸いといえよう。
「おや？　いたいけな青少年を救い出してみれば、つくしちゃんじゃない！　いつも妹の槇がお世話になっているわー。そっちの少年は……迷子かな？」
　立てる？
　手を差し伸べる秋に、２人は泣きじゃくりながら縋るのだった。