和装パーティへようこそ！｜リアクション

和装パーティへようこそ！

女子３人組がガールズトークに花を咲かせる一方で、雅人は点茶に集中していた。
譲が一通り実践してくれたこともあり、手順に詰まることはあまりない。
それでもわからない時は譲が的確にアドバイスを入れてくれた。

「あまり力を入れすぎないように。肩の力を抜いてやればいい」
「うん……こんな感じでいいのかなぁ？」

慣れてきたのか、少し表情に余裕が生まれた雅人。
「？」マークを作っていた髪も、今はふよふよと左右に揺れている。

意思を持ったように動く髪の毛を見ながら、譲は「器用だな」と優華と同じ感想を抱いていた。

「できたー！」

茶せんを置き、雅人は両手と揺れていた髪の毛を天井に向かって伸ばす。

「おつかれ。初めてにしては悪くないお点前だったな」
「弓弦原くんの教え方が丁寧だったからだよ！ありがとう！」

そうだ、と雅人は立ち上がり、テーブルからもなかを２つ持って戻ってきた。

「これ、俺が持って来たんだけどよかったら食べない？中にお餅が入っていて美味しいんだ！」
「いただこう」

甘いものがあまり得意でない譲だったが、思った以上にあっさりとした餡子の甘みに舌鼓を打った。

「これは美味いな」
「でしょ！」

雅人の髪の毛がぴょんぴょんと跳ねる。
それを見て譲は「やっぱり器用だ」という感想を抱いていた。

「あたし着物に縁なんてなかったからさ……その、似合ってるかな？変じゃない？」

笠原ひびきがおずおずと顔をあげる。
うぐいす色に菊の模様が入った明るい着物姿だった。

「変なんかじゃないよ。思った通りに似合ってる」

応えて微笑んだのは花厳望春。
ひびきに選んでもらった藤色の格子模様の着物を着ている。
髪には着物の生地を使ったヘアピンを留めて。

「本当か！？嬉しい！」

ひびきが照れたように笑う。目をきらきらさせたひびきは普段より少し幼く見えた。

「それじゃああたしはおばあちゃんにお礼言ってくるから、またね花厳」
「ああ、また」

そう言って２人は分かれると、ひびきは店主のいる方へ、望春は茶器の用意されている方へと歩んでいった。

窓際では店主を囲み、朝海瑠歌、天馬ひびき、御鏡聖、御剣刀、逆巻天野がお茶とお菓子を味わっていた。

瑠歌とひびきは一口サイズのお饅頭と大福を食べさせあいっこして笑い合っている。

「天馬さん、お口にあんこがついてますよ」
「え、ほんと？どこどこ？」
「ああ、広がっちゃいます……少しじっとしててくださいね……はい、とれました」
「えへへー、ありがとう瑠歌！」

２人の空間にはほんわかとした空気が流れていた。

とそこへ闖入者が１人。

「よぉ天馬！来てたのか」

開口一番、ひびきの手に持っていた饅頭を素早く奪うと自分の口に放り込む桜井ラッセル。

「なんだこれ。ほんとに手作りかよ。すげぇ美味いんだけど」

ラッセルの一言に呆気にとられていたひびきは途端笑顔になる。

「瑠歌と一緒に作ったんだもん！美味しいに決まってるよ！」
「ドジっ子だと思ったのに、意外だったな。和菓子って難しいだろ？」
「んー……でも瑠歌がちゃんと教えてくれたし、つまみ食いもしちゃったけどちゃんとできたよ！」

ラッセルはえらいえらいとひびきの頭を撫でてやる。

「しかし天馬、やっぱ女の子なんだなー。着物、なかなかいいよ。朝海先輩も。御剣は武士みてーだしみんないい感じだよな～」

ラッセルは店主と談笑している御剣刀の方へ眼を向ける。
浅葱に白抜きで模様の入ったそれは、知っている人間なら新撰組を連想しそうな色合いだった。
普段の雰囲気も相まってか、剣士・武士という印象が残る。

「ありがとう。ラッセルくんも良く似合ってますね」

瑠歌がふわりと笑いかける。
天野に引きずられて行ったあと、ちゃんと着付けてもらったらしい。
臙脂に近い赤に白い鳥の絵柄が描かれている。

「へへっ、朝海先輩に褒められると照れるじゃん」

そう言って照れ隠しにもうひとつ一口饅頭を頬張るラッセルだった。