和装パーティへようこそ！｜リアクション

和装パーティへようこそ！

刀と聖２人は店主がなぜ店じまいをすることになったのか、という質問を投げかけていた。
刀は剣術を教えてくれた祖父の姿と、店主の姿を重ねていたのかもしれない。

「最後だからパーティとしてどんちゃん騒ぎしたかったんですか？」
「まぁそうだねぇ。それももちろんなんだけどね」

刀の質問に、それだけじゃないんだよ、と店主。

「今の若い人はあんまり着物を身近に感じていないように感じてねぇ。
長い事呉服を扱ってたおばあさんには、それが少しさみしかったんだよ」

今回のパーティに参加した生徒の何人かは普段から着物を着ている人もいたが、それでも少数派だろう。

「それにしてもみんな似合ってるねぇ。頑張って仕立てたかいがあったよ」
「着物の柄について、質問なんですが」

聖が手を挙げる。

「着物の種類や柄、かんざしとの組み合わせには意味があるんでしょうか？」
「種類、ということならお嬢ちゃんの知ってるものでも３つあるよ。
今着ている袷なんかを着物というくくりにしたらあとは浴衣と振袖だねぇ。
お嬢ちゃんも成人式には振袖を着るだろう？」

そういわれて聖は自分が振袖を着ている姿を想像する。

「まだ先だから、上手くイメージできないです」
「ふふ、楽しみだねぇ。それ以外にも着物の柄の入れ方なんかで品格が変わるんだよ。
野点をしてくれてるお嬢ちゃんが着ていたのは、一般的な袷なんかよりも格が上の着物なんだ」

御巫時子の事を指しているのだろう。時子は私物である江戸小紋を着ての参加だった。

「それから柄だけどね、今日なんか持ってきているものはそんなに深い意味はないんだよ。
花柄なんかは老若問わず女性に人気の柄だしねぇ。
正式な留袖や訪問着なんかになると少し変わってくるけどねぇ」

店主はすらすらと質問に答えていく。

「たとえば、結婚式なんかできる留袖には縁起のいい鶴や鳳凰なんかが描かれることが多いねぇ」

「花柄なんかはねぇ、季節によって別のものを着たりするのさ」

「桜は春。菖蒲は夏。桔梗は秋。菊は冬。みたいな感じでねぇ」

「でも今はそんなに規則や決まり事ばっかり言っていられるような時代じゃないからね。
好きな柄を好きな時に楽しむのがいいのさ」

店主の言葉を聞いて、聖はほうっと息をついた。

「いろいろとあるんですね」

「ちなみに、俺が買うとしたらどんなものがいいんですか？」

そう聞いてきた刀に向き直り、店主はそうだねぇ、と考え込んだ。

「着流しよりも袴の方が歩きやすいかもねぇ。
最近じゃあ武者袴なんて呼ばれる太いズボンのようなものもあるし」
「なるほど……それは走り易そうですね」

うん、と頷く刀。続けるように聖が「私だったら？」と尋ねる。

「お嬢ちゃんだったらなんでも似合うさ。若いうちはどんな色柄でもちゃんと映えてくれるからね」
「じゃあおばあちゃんの一押しはどれですか？」
「そうだねぇ。お嬢ちゃんは可愛らしいから、淡い色合いのものの方がよさそうだねぇ。
水色とか、桃色とかね。
それに同系色の帯でまとめてみるといいかもしれないねぇ」