北欧から来た少女　～うさぎさんオーヴァードライブ～｜リアクション

北欧から来た少女　～うさぎさんオーヴァードライブ～

【正門付近にて、うさぎさん、危機一髪！！】

「うさぎさ～ん、どこにいますか～」
「えぇっと……この辺りに居ると思うんだけどなぁ～」
　正門付近を、二人の生徒が探索していた。
　御鏡聖と笹奈深鈴である。
　二人とも、美野梨が用意した餌やら網やらを持ち込んでおり、植え込みを中心にごそごそと探している。
　物音はなるべく大きく立てずに探す。できるだけ静かに、というのが聖と深鈴の探し方であった。
　特に、聖は木陰や物陰、狭いところに至るまで丁寧に探していく。
「いないねぇ」
「まだまだ、場所はありますから探してみましょう」
　深鈴がちょっと息をついて休憩する。
　聖は諦めずにまだまだ探すようだ。神社の娘らしいが、忍耐力というか丁寧さはとても良い姿勢である。
　そして、聖は別の植え込みや木陰を見ていく。
「うさぎさ～ん、どこにいますか～、ここにご飯がありますよ～？」
　そう小さく言いつつ、餌をちらちらと揺らす聖、同時に聖のスカートがまくれそうになる。
　頭入って尻隠さずである。
「見えてるよ」
「えっ？」
　さすがに女子同士とはいえ、放置できなかったのか深鈴が声をかける。
「お尻よ」
「きゃっ！　あっ、あの！？　……その！」
「次からは気を付けて」
　そう言って、深鈴も探索を再開する。
「秘密ですよ！　絶対秘密ですよ！」
　一方、聖は全身が真っ赤になったかのようなゆでダコ状態である。
　そして何やら口走っているが、はいはいと受け流されている。
　結局、気を取り直してうさぎをちゃんと探すまで若干の時間を要した。

　……。

　さて、だんだんと道路側へと近づいてきたところで、聖が木の木陰で、先ほどの自分と同じような状態のうさぎを発見する。
「あ、見つけた！　よし、そーっと近づいてっと……あれ？　どこかで見たような……」
「それを言わないでください……」
　ぼそぼそとターゲットを確認する深鈴と聖。
　ゆっくりと近づいてゆき、やがて二手に分かれた。
　じりじりと距離を詰めると、聖がそっと網をかぶせようとする。
　その瞬間だった、ぺきっ！　と足元で音がした。
　見れば、深鈴が木の枝を踏んずけていた。
「なんて、ベタな……」
　そう深鈴がつぶやいた瞬間、音に気づいたうさぎがまさに脱兎のごとく駆け出した。
「待って、そっちは！」
　慌てて、追いかける聖と深鈴。
　このままうさぎが向かう先は正門を抜けた先の道路である。
「ダメーーーーーー！」
　なんだか静止しながら必死に追いかける聖と、しまったなーという顔で追いかける深鈴。
　その瞬間、正門の前に一台のバイクが現れた。
「あっ……」
　もうだめか、そう深鈴が考えた瞬間だった。
　パッパーッ！　バサッ！
　なんとか、バイクの音に驚いたうさぎが止まった瞬間、聖が網で確保に成功した。
「あれ、こっちにもうさぎだわね、今日はうさぎの日ねー」
　バイクから降りた人の正体はなんと理事長だった。
　なんと、一応、フォローか何かは知らないが偶然辺りを見回っていたため、であることがあとで説明されるが、今の聖と深鈴はへなへなと座るだけであった。
「よ、よかったです」
　うさぎを胸に抱きしめながら、聖はよかったよかった深鈴と言い合っていた……。
　この後、生物部に無事戻ったこのうさぎは、聖や深鈴が様子を見に来るたび、喜んでいたように見えた。喜んでいるといいなぁと思われる。