北欧から来た少女　～うさぎさんオーヴァードライブ～｜リアクション

北欧から来た少女　～うさぎさんオーヴァードライブ～

【一方その頃、うさぎ外伝？】

「わーん！？　絶賛、風紀委員に追いかけられてるのですぅ～！」
　添木牡丹は、バニーガール姿のまま、ダッシュしていた。
　なんというか、男子の目を引く格好をしているため、ほかの生徒からも注目されているが、何より今問題なのは、後ろから風紀委員と桐島先生がものすごい形相で追いかけてくることだ。
　当然、悪意はなかったにせよ校則違反は校則違反である。
　必死で逃げるもあっという間に追いつかれる牡丹。ちなみに、なぜか知らないが追いかけてきている風紀委員は全員女子であることを特筆しておこう。
「私、ただ『保健室の正しい利用の仕方』を呼びかけていただけなのに……」
「その懸念はわからなくもないが、方法が問題だな。指導室へ連れていくからおとなしくしなさい」
「あうあうあう……」
　そのまま前に進み出る風紀委員だち。
「ちょーっと待った！」
　その瞬間だった、八十八旗信彦が現れて、牡丹と風紀委員の間に割って入ったのは。
「八十八旗、何をしている？」
　桐島先生は、行為に理解ができないといった風に言う。
　そんな桐島先生に、信彦は言う。
「先生、うさぎが脱走したことは知ってるよね？」
「敬語を使え、敬語を。……うさぎについては、知っている、それがどうかしたのか？」
　それとこれとは話が別だろうと桐島先生は毅然として応える。
「とりあえず、そこにいる白くて柔らかいバニーちゃんを捕まえれば良いのかな？　ってね」
「それ、私のことですかぁ！」
　牡丹は心外だと言わんばかりに叫ぶ。
　一応、バニーさんを本当にやっているかは知らなかったのかちゃっかり自分のジャケットを貸しているあたり、ナンパの演出のつもりなのだろう。
「……つまり、八十八旗が添木の責任を負うということだな？」
　なおも桐島先生は、信彦に問う。
「可愛い女の子を放っておくのは趣味じゃないからね！」
「……そうか」
　そう言って、信彦の横を通り過ぎようとする桐島先生。
「ちょっと、ここは俺がかっこいい所でしょ！　先生！」
「俺は添木が、元の学生服に戻れば、それで構わん。ジャケットを貸したのは評価するが、それでは添木がその格好だから寄って言ったようにしか俺には見えん」
　なんだかんだ言いながら桐島先生は生徒思いなのである。
「そ、そろそろ恥ずかしくなってきましたぁ……」
　見れば後ろでは顔を羞恥心で真っ赤にした牡丹がいた。
「……二人とも、指導室に来なさい」
「えぇ！　ちょっと待ってよ先生！　生物部はナマモノ部という認識を広める壮大な計画が……」
「あ、捕まっちゃいましたぁ……」
　桐島先生の生活指導は、それはそれは丁寧で、厳しかったという。
　牡丹は牡丹で単に世間知らずという意味で、もっと色々と知りなさいと具体的な保健室の今後について桐島先生は相談にのってくれたとかのってくれなかったとか……。
　信彦については、適当なところで開放されたという。
　ただ、桐島先生ら風紀側といくらか認識の違いを共有したとかしなかったとか……。
　うさぎを追っている間にも、こんなことが起こっていたのであった……。
　ちなみに、ナンパに成功したかは知らないが、ジャケットについて感謝はあったとかなかったとか……。
　今日もある意味平和であった。