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永田 孝文先生の古典講座Ⅱ ～秋月と短歌と若者語訳～
【発表、そして……後編】
「桜庭だなー」
「むぅ」
円は唸りつつも、堂々と読み上げられるのを待つ。
『秋の月は苦手
花や葉でさえ
役目を終えれば
枯れるというのに
当たり前の様にそこに居る
お前が眼に入ると
無残な思い出達が
頭を駆け巡る
自分の為に居るわけでは無いと
解ってはいるのだが
秋の月は綺麗だと
持て囃され
存分に見るがいいと
思っているのだろう
僕の事を無視し
事情を考えない
その薄情な姿勢が苦手なんだ
今日は曇り
天を見上げる
今日は我が物顔でそこには居ない
だけど
秋風に吹かれ
そっと月が顔を出し
僕を光で照らす
まるでその姿は眼の様で
僕を見つめていた
今日は違う姿で
ボクの事を見てくれた
そう思うと
何故か月が素直に綺麗だと思えた』
「またもや、力作だな。先生はこういうのは大好きだぞー」
「例によって３作を合作してみました」
円の言葉に永田先生はふむふむと頷く。
「そういう感性は大事だな。もし次もあったら何をしてくれるか楽しみにしておこう」
円はその言葉ににやりと笑って応えたのであった。
「よし、では、次。響」
そう言って、永田先生はどんどん進めていく。
タルトの名前が呼ばれたとき、内容を見てどんな反応をするのかとタルトは顔を上げた。
『【ろ】
わが身ひとつの 秋にはあらねど、ってすごくいいなあ♪
わが身一つじゃない、ってことは誰かとツナガッテるんだよね？
あれ、違う？
えっこれどう見ても恋の歌でしょ？
月を見て千々に心乱れるんだよね、どう考えても恋してるよ。
しかも叶わぬ恋をね。
さっきのツナガッテる解釈からすると、身体がつながってるパートナーはいるけど、本命に叶わぬ恋をしてるんだよ。
でも身体は正直だから、心は千々に乱れるってわけさ』
もう一つ。
『【は】
絡み合う二人の身体が月の光に照らされる……
幻想的なエロティックさだよね！』
「そういえば、前回もこういう嗜好の作品があったな」
読みつつ永田先生は苦笑する。
一方、タルトはというと。
（光と影は表裏一体、いいよね～。反発しあい、でもお互いがいなければ存在できない、みたいな。薄い本のネタになりそう！）
と妄想に浸っていたのであった。
「次は……桃川だな」
ぺらりと、紙をめくって永田先生が告げる。
『「まるでこの世はむなしいものだというように」なんて言われちゃってるけど……ほんとのとこどーなのよ、お月様？
「いやいや、んなこと思っちゃいないって」
じゃーなんで毎度毎度愛想つかさずに戻ってくるのよ？
「毎度毎度飽きもせずどこかへ消えるけどね」
何なの？ダメな男とかずるずる養っちゃうタイプの人なの？
「そうねえ、世の中で起こることの半分は最低で、消えちゃいたくなるのはほんと。でも結局、その後には面白いことが始まったりするから、振り向かずにいられないってわけなのよ」
なぁるほど。世の中の虚しさを憂いては満ちて欠けるけど、世の中の豊かさを慈しみ欠けて満ちる。こういうことね』
「１番目の短歌から取ったな。こういう擬人化の試みはすばらしい。高得点だな」
「ありがとうございます」
実は、内心でも力作だと思っていたので、褒められたのは素直にうれしい圭花である。
「さて、森の出番だな」
どれどれ、とプリントをめくると永田先生は、ははぁという思わせぶりな顔をした。
『I love you』
ただその一文だけであった。
なお、最後の短歌を参照したとプリントにはある。
「夏目漱石パターンだな。何かしら誰かしらがやるんだ」
「なるほど」
蓮は、月は何回かテーマにしているらしいということを読み取った。
やっぱり、人気なのだろうか、夏目漱石。
そんなことを考えつつ時間は過ぎていく……。
「最後は……八神だな」
その言葉に修は改めて永田先生を見る。
そこに書かれていたのは、すべての短歌の現代語訳を英文にしたものであった。
「……その心は？」
「全て”現代英語で英訳”する。これも若者語には違いないですよね」
そうかなぁとのんびりつぶやいて言う永田先生。
修はしてやったりという顔をしている。
そして、永田先生がなにやら考えている間にチャイムが鳴り響く。
「よし、今回はここまで。号令―」
「きりーつ、礼！」
「「「ありがとうございましたー！」」」
こうして、授業は終わったのであった。
おわり
「桜庭だなー」
「むぅ」
円は唸りつつも、堂々と読み上げられるのを待つ。
『秋の月は苦手
花や葉でさえ
役目を終えれば
枯れるというのに
当たり前の様にそこに居る
お前が眼に入ると
無残な思い出達が
頭を駆け巡る
自分の為に居るわけでは無いと
解ってはいるのだが
秋の月は綺麗だと
持て囃され
存分に見るがいいと
思っているのだろう
僕の事を無視し
事情を考えない
その薄情な姿勢が苦手なんだ
今日は曇り
天を見上げる
今日は我が物顔でそこには居ない
だけど
秋風に吹かれ
そっと月が顔を出し
僕を光で照らす
まるでその姿は眼の様で
僕を見つめていた
今日は違う姿で
ボクの事を見てくれた
そう思うと
何故か月が素直に綺麗だと思えた』
「またもや、力作だな。先生はこういうのは大好きだぞー」
「例によって３作を合作してみました」
円の言葉に永田先生はふむふむと頷く。
「そういう感性は大事だな。もし次もあったら何をしてくれるか楽しみにしておこう」
円はその言葉ににやりと笑って応えたのであった。
「よし、では、次。響」
そう言って、永田先生はどんどん進めていく。
タルトの名前が呼ばれたとき、内容を見てどんな反応をするのかとタルトは顔を上げた。
『【ろ】
わが身ひとつの 秋にはあらねど、ってすごくいいなあ♪
わが身一つじゃない、ってことは誰かとツナガッテるんだよね？
あれ、違う？
えっこれどう見ても恋の歌でしょ？
月を見て千々に心乱れるんだよね、どう考えても恋してるよ。
しかも叶わぬ恋をね。
さっきのツナガッテる解釈からすると、身体がつながってるパートナーはいるけど、本命に叶わぬ恋をしてるんだよ。
でも身体は正直だから、心は千々に乱れるってわけさ』
もう一つ。
『【は】
絡み合う二人の身体が月の光に照らされる……
幻想的なエロティックさだよね！』
「そういえば、前回もこういう嗜好の作品があったな」
読みつつ永田先生は苦笑する。
一方、タルトはというと。
（光と影は表裏一体、いいよね～。反発しあい、でもお互いがいなければ存在できない、みたいな。薄い本のネタになりそう！）
と妄想に浸っていたのであった。
「次は……桃川だな」
ぺらりと、紙をめくって永田先生が告げる。
『「まるでこの世はむなしいものだというように」なんて言われちゃってるけど……ほんとのとこどーなのよ、お月様？
「いやいや、んなこと思っちゃいないって」
じゃーなんで毎度毎度愛想つかさずに戻ってくるのよ？
「毎度毎度飽きもせずどこかへ消えるけどね」
何なの？ダメな男とかずるずる養っちゃうタイプの人なの？
「そうねえ、世の中で起こることの半分は最低で、消えちゃいたくなるのはほんと。でも結局、その後には面白いことが始まったりするから、振り向かずにいられないってわけなのよ」
なぁるほど。世の中の虚しさを憂いては満ちて欠けるけど、世の中の豊かさを慈しみ欠けて満ちる。こういうことね』
「１番目の短歌から取ったな。こういう擬人化の試みはすばらしい。高得点だな」
「ありがとうございます」
実は、内心でも力作だと思っていたので、褒められたのは素直にうれしい圭花である。
「さて、森の出番だな」
どれどれ、とプリントをめくると永田先生は、ははぁという思わせぶりな顔をした。
『I love you』
ただその一文だけであった。
なお、最後の短歌を参照したとプリントにはある。
「夏目漱石パターンだな。何かしら誰かしらがやるんだ」
「なるほど」
蓮は、月は何回かテーマにしているらしいということを読み取った。
やっぱり、人気なのだろうか、夏目漱石。
そんなことを考えつつ時間は過ぎていく……。
「最後は……八神だな」
その言葉に修は改めて永田先生を見る。
そこに書かれていたのは、すべての短歌の現代語訳を英文にしたものであった。
「……その心は？」
「全て”現代英語で英訳”する。これも若者語には違いないですよね」
そうかなぁとのんびりつぶやいて言う永田先生。
修はしてやったりという顔をしている。
そして、永田先生がなにやら考えている間にチャイムが鳴り響く。
「よし、今回はここまで。号令―」
「きりーつ、礼！」
「「「ありがとうございましたー！」」」
こうして、授業は終わったのであった。
おわり
あとがき
担当マスター：
じんの
ファンレターはマスターページから！
お疲れ様でしたー
若者の叫び―！ 聞かせてもらいました
今度は何かイベント風にやりたいなぁと思いつつ
参加してくれたことに感謝です！
ありがとうございました！
若者の叫び―！ 聞かせてもらいました
今度は何かイベント風にやりたいなぁと思いつつ
参加してくれたことに感謝です！
ありがとうございました！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2014年11月18日
- 参加申し込みの期限
-
- 2014年11月25日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2014年11月25日 11時00分
