「さあ、皆の衆席についたな?」
そう言って、黒板の前で出席簿を広げるのは、教師道二十年の永田先生である。
名前は
永田 孝文という。
「由緒ある(事に勝手にした)この講座も本年度二回目だな。
前回は恋をテーマにして、古典の世界と現在を考えてみよう、という授業だった」
説明しながら、微笑む永田先生。
「皆それぞれのやりたか、考え方があって、良かったと思う。さて、今回の歌はこの三つだ」
そう言って、黒板に三首の歌を書き込んだ。
世間は 空しきものと あらむとぞ この照る月は 満ち欠けしける
月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ
「この三首を和訳できるものはいるかー? 百人一首をやっていればすぐに出てくるはずだぞ-?」
そう言って、教室を見回す永田先生。
「……」
席に座っていた
立花 深紺灯と目が合う。
「立花、そういえば古文が得意だったな、一つ頼むよ」
「えっ? あっ、はい!」
突然の指名に、慌てつつもまじめな彼女は訳を三首に添える形で書いていく。
「……できました」
「ありがとう、全問正解だな」
満足げに微笑む永田先生。
「さて、前回参加したものはもう流れは分かってると思うが……今からこの秋の月の歌を現代風に訳してもらう」
「「「「えっ!」」」」
「あと、ただ現代語訳に訳すのではなくてなぁ……。そうだな、教科書に書いてあるように訳すんじゃなくて、今風にこの歌をリメイクするんだよ。つまり若者語訳ってやつだな」
と言って、例を書いていく先生。
「タイムリミットはこの時間中だ。先生、生徒に和歌にもっと親しんで欲しいと思ってな。頑張って考えてきたんだぞー。時間いっぱい使ってがんばってくれ」
そう言ってにやにやしながらプリントを配っていく永田先生。
「おっと、早くしないと時間がないぞ。ルールはプリントに書いてあるからなー」
「「「ひぃぃぃぃ」」」
そんな訳で、深紺灯たちはプリントに取りかかるのであった。
どうも、じんのです
シナリオ永田 孝文先生の古典講座Ⅰ ~恋と短歌と若者語訳~の続編です
単発型シリーズなので、前回参加した人も、そうでない人もどんっと来てくださいな
前回のシナリオガイドでは
「今日は良い御日和でございますな
今宵の月はきっと綺麗でしょうね……」
なんて書いてましたね なので、月にしました
そういえば、らっかみタイムはちょうど秋!
秋といえば古典では月なのです!
ということで、テーマは秋月!
基本的には、前回のシナリオと同じ形式ですが
どんな内容になるかはアクション次第とも言えるので
また、新鮮なドキドキがあるかと思います
〇趣旨
和歌を自分のキャラクターなりに再構成して
発表していただくという試みです。
詳しくはサンプルアクションにあります
ちなみに、こういった試みは『若者語訳』とも言います
昔の人に敬意をもって頑張りましょう
〇ルール
1.5・7・5・7・7の定型で作り直さなくてもよい
2.和歌や短歌の基本的な技法である季語や縁語などは無視してよい
3.面白い試みやお互いで相談しつつ作るのもオッケイ
4.授業中に書き、終わり際に回収と先生による簡単な評価
(すべての作品でやる予定)
〇大事なこと
要は、自分のキャラクターが
和歌にあるような心境になったとして
こんな感じに悶えているだろうなとか
こういう風にしゃべるだろうなとか
そんなことを思いつつ訳すのが大事です
例 古文「いで、あな悲し」→現代語訳「なんと悲しいことでしょう」
若者語訳「うわぁぁぁぁぁぁん、それってめっちゃ悲しいことじゃん!」
定型で頑張ってみるという試みも歓迎しますし
季語などを使ってみようという試みも歓迎します
和歌については永田先生が現代語訳と解説済みとします
ご協力いただいた立花 深紺灯さんに感謝を
〇秋月の歌 三首
古典ではだいたい月と秋はくっついてます
秋の月を賞し、月に物思うこころは古くから歌に作られていて浪漫ですね
(現代語訳は、じんのが調べつつ訳しました不正確なのであくまで目安にしてください)
【い】世間は、空しきものと、あらむとぞ、この照る月は、満ち欠けしける
世間はよのなか、と読みます
よみ人しらず 万葉集の歌で、膳部王(かしはでのおほきみ)を悲しんで詠んだ歌
現代語訳 まるで、この世はむなしいものだというように
この照る月は満ち欠けするのですねぇ
【ろ】月見れば 千々に物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
大江千里作 古今集の歌で、月と孤独の悲哀を重ねている
現代語訳 秋の月を見ていると様々なことが悲しく感じてきてしまう
自分一人を悲しませるために秋が来るというのではないのですが
【は】秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ
左京大夫顕輔作 新古今の歌で、秋の月の美しさを描いた神秘的な歌
現代語訳 秋風に吹かれて横に長くひき流れる雲の切れ目から
洩れてくる月の光の澄みきった美しさといったらどうだろうなぁ
●永田先生について
前回のシナリオやプロフィールを参考にしてください
〇アクションでのお願い
誰かと相談している様子や
どうやって授業を乗り切ろうか悩んでいる様子
おしゃべりしている様子などを積極的に
描写していきたいと思っているので
サンプルを参考に色々考えてみてください
※特定のクラスの授業ではないので
寝子高生ならばどなたでもご参加できます。
なお、高校生以外の方はご遠慮ください