ざーざーてるてるぴっかぴか｜リアクション

ざーざーてるてるぴっかぴか

「んー、ちょっと蒸し暑いけどええのかもしれんな」
「でしょ？　マスクとゴーグルがあれば目に入ってもあんまり痛くないよ！」
　ボクシング部の部室で色々装備を揃えたゼンと円は赤坊主を探して歩いていた。目撃条件は無いかとすれ違った人から聞こうと思ったが講堂から出てきた真央と優菜以外に人とは会わず、情報が手に入らないまま歩き回っていた。
「うーん、どこに居るのかなぁ。案外今頃部屋の中だったのかな？」
　円があたりを見渡していると、生徒玄関の方から声がする。早速行ってみると簾が楽しそうな顔でレンチを振り回して立ち向かっていた。
「うーん、トラップを仕掛けようにも、上から吊り下げて引っ掛けるタイプの他何がいいかな……」
　夏夜は慎重に様子を伺いながらもミストが来そうな時に叫んで気を引く。それに加わるように円とゼンが入り込む。円は三又の釣り針をつけた釣り糸をくるくる回し、投げてみたが、赤坊主もくるりと回転して躱す。小癪な、とゼンが投げつけた釣り糸も払えば夏夜を狙って襲い掛かる！
「危ない！」
　円が庇おうと駆けつけるより早く、飛んでくるレンチ。簾は目潰しにならないかと顔面を狙い、思いっきりクリティカルヒット！
「ここは一回撤退したほうがいいかもしれないね。場所が悪い」
　夏夜は悔しげにそう言うと歯を食いしばった。

「しかし、あのミストはキツイよな。何か対策を打ったほうがいいんじゃないか？」
「……死角から攻撃すればミストを噴射される前にどうにかできないかな……」
　斗南と刀はどうしようかと話し合いつつも赤坊主を警戒していた。全長５０センチの赤い悪魔はふよふよと学校と外を行ったりきたりしている。それを外から目撃していた２人は何かいい対抗手段は無いか話し合いつつ共に行動していたのだ。
「あれ？」
　不意に刀は１年５組の教室の窓で震えている女子生徒をみつけた。先程夏夜に助けられた璃亜である。事情を知らない２人は気になり、近づいてみることにした。
「どうしたんだ？」
　震える璃亜に、斗南が声をかける。彼女は外を指差し、ふるえつつ言った。
「赤いてるてる坊主が……。今、簾君と女の子が対峙しています」
「……何？！」
　刀が眉をひそめた傍から、聞き覚えのある声がする。斗南と刀は頷きあうと璃亜に礼を述べ、もう少ししてから教室を出るよう言って声のほうへ向かった。そこで見た物は４人の生徒が赤坊主と対峙している姿。彼らは一度撤退しようと考えたのだろう、物をぶつけられて悶絶する赤坊主を尻目に生徒玄関へ向かい走っていた。
「あ、刀くんと斗南くん！　一緒に逃げたほうがいいよ！　赤坊主が追いかけてくるかもしれないから！」
　円にそう言われ、刀と斗南は４人と共に教室へと入り込む。こうして集まった赤坊主と対峙する者達は、１つの教室に入り込み、作戦会議をすることに。
「このまま別々に動いても、倒せないよね」
　夏夜が呟けば、全員が頷く。傍らにいた円が傍らのゼンと共に口を開いた。
「さっき対峙した時思ったんだけど、やっぱりアウトファイターだねー。皆で袋小路に追い込んだらどうかなーって思うんだ。校舎内にあるんだけどやっぱり難しいかな？」
「外やと体育館裏付近とかにそれっぽいのがあるな。……丁度ええとこに誘い込めば袋叩きにもできるやろ」
「だったら、誘い込む役がいるよな！」
　簾がにぃ、と笑って口を挟む。と、もう１人なにか思いついた者がいた。今まで黙って考えていた刀である。
「そういえば、上も死角になるよな？　そこから攻撃っていうのもありじゃないか？」
「なるほどな……。そういう事なら条件に合う場所を考えよう」
　斗南もまた丁度良くあった学校の見取り図を広げ、全員で話し合う。いつの間にか合流していたゼンという少年の事は気になるが、正体を知っている円と刀はとりあえず黙っておく事にした。