守れ、体育祭！！｜リアクション

守れ、体育祭！！

【恐怖、ムシムシ大行進の刑】

　さて、最後に。
　寝子高を引っ掻き回してくれた悪党には、それにふさわしいオチが用意されておりまして。
「私たちの体育祭を、壊そうとしてくれたその罪は……重いわよ？」
　氷のような目で見下ろす、剣崎エレナ。
「あの死んだフリは、お見事でしたが。今やあなたには、頼るべき仲間もいません」
「残念ながら、命運尽きたようだな」
　表で活躍する仲間たちの傍ら、裏方のサポート役として暗躍していた、常闇月、橘勇。
「ひっ、ひいいい！　オカマが！　またオカマがー！」
「オカマじゃないわよっ！」
　尾鎌蛇那伊。オカマでは無いんです。
　それはさておき、ここは校舎裏。ぽっかりと掘られた深い穴には、あの悪辣な少年がすっぽりと落とし込まれ、捕らえられておりました。
　策を弄して寝子高の体育祭を中止に追い込まんと画策し、更にはリーダーに反旗を翻して、寝子高のみならずマタ工にまで混乱を巻き起こそうとした、山田透遁。
　ちなみに、彼のブラザーたる骨削瓢の姿は、ここにはありません……なぜなら、こうなる直前のこと。
「なっ、なっ、何とかしてくださいブラザー、助けて！　助けてーっ！」
「いやいやブラザー、おたくとの仲良しごっこも、なかなかに楽しめたよぃ」
「お、おお、そうでしょう。そうでしょうとも！　二人で撒き散らしたあの混沌、胸のすく思い……！　まさしく我々はブラザーと呼ぶにふさわしい、血縁を越えた絆で結ばれ……」
「とはいえそれも、少々飽きた」
「へぇっ？」
　折りしも、少しばかり離れたグラウンドから届くのは、田中王苦と佐藤御舞鈴、二人の愛の抱擁に伴う暑苦しい叫び声。
「じゃっ、あっしはこれで。生きてたらまた会おうかぃ～。リア充、許すまじ！」
　瞬間。しゅごごごご……！　突如として立ち昇った竜巻は、瓢のろっこんの産物。突風は彼の身体をもろとも風の中へ覆い隠し、周囲へさんざんな被害を撒き散らした挙句……瓢はあっさりブラザー透遁を切り捨て、逃走してしまったのでした。
　そんなわけで、穴の中。
「まぁ、透遁ちゃんが少しは反省したって言うんなら、助けてあげても良いんだけど……」
「マタ高きっての策略家たるこの私が、寝子高生ごときに謝罪ですって！？　冗談じゃありませんよ！！」
「……そうよねぇ」
　諦め顔の蛇那伊に、顔を見合わせた月と勇。ムダに高いプライドに、取り付くシマも無いようです。
　かくして……きゅぽんっという音がして、後木真央が手に携えるのは、がっつり油性のフェルトペン。
「真央ちゃんは怒っていても外傷は加えないのだありがたく思うのだ。代わりに、運動部の怒りを思い知るのだ～」
「や、やめ……いやー！！」
　きゅきゅきゅのきゅっ！　哀れ、透遁の額に書き入れられたのは、存分に恨みのこもった『負け犬』の文字！　ついでに写メもパシャリ。
　スマホで何やら、どこかへ連絡を取っているのは、旅鴉月詠です。
「……ええ。証拠写真のほうはご確認いただけましたか、ではお分かりでしょう。この情報化社会、おたくの生徒がこのような悪行を日常的に行っている……そんな話がネット上に上がれば、たちまち拡散。悪名高いマタ工と言えど、更なる評判の下落は避けられない。ああ、いいえ、そう難しいことを要求するつもりは無いのですよ。無意味な謝罪もね。ただ、彼らの処遇は我々に任せると、そう一言言質を……ああ、それは何より。結構ですよ、良い取引でした」
　ぷつり。電話を切ると、月詠は透遁を振り返り、これ見よがしにスマホをひらひらと掲げて見せます。
「うん。悪いことは、できないものだね？」
　言下に感じる、途方も無い圧力。本日彼女が撮影した諸々の写真が、ねこったーやら何やら、広大なネットの海を所狭しと泳ぎまくってしまうのか否かは、その指先ひとつに委ねられているのです……！
「私はもっと、『お仕置き』してあげたかったですけど……二度と鷲尾先生や創君に迷惑をかけられないよう、徹底的に。ねえ？」
　びっくん！　月詠よりももっと直接的な手段を得意とする添木牡丹を、透遁は最も恐れているようです。牡丹が手にした包帯をちらりと見せてやれば、ひいー！　と細い声を上げ、狭い穴の中でばたばた……ここまでに何があったかは推して知るべし、といったところです。
　そして、進み出た奈良橋博美が手に持っている、四角い紙箱。
　この中身こそが、わざわざこんな穴を掘り、裁かれるべき悪漢をその中へと放り込んだ、最大の理由なのです。
「そっそっ……それ、何……？」
「オレは思うんだ。不良が不良になってしまうのは、友達が少ないからじゃないかって」
　かさかさ、こそこそ。うぞぞぞぞ。
　ああ、何だかもう見るまでも無く、箱の中身を想像するに、嫌な予感しかしてこないのです……！
「ここはひとつ、『こいつら』と友好を深めることで、友情や思いやりの大切さをしっかりと学んで、更正してほしい」
「やっややややめやめやめて」
「じゃっ投入ー！」
　ぱかっ。
　ぼたっ、ぼたぼたぼたっ。
　かさかさこそこそ、うぞうぞうぞ。
　ぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞぞ！
「い………………ィィィイヤァァァアアアアアアーーー～～～ッ！！！！」

　……悪いことは、できないものですね。合掌！

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あとがき

担当マスター：墨谷幽
ファンレターはマスターページから！

　墨谷幽です。『守れ、体育祭！！』のリアクションをお届けいたします～。

　直接対決、裏から手を回したり、救護に回ったり。あるいは程よくカオスを振り撒いていただいたりと、幅広いアクションが集まった、今回のお話でした。
　これまでに登場しているマタ工の不良たちには個性的な面々も多くて、それに負けないように、とアクの強い連中を揃えてみたつもりでありましたが……寝子高生の皆さんの前には、形無し！　すっかり小物ポジションに。
　とはいえ何だか妙な愛嬌が出た気がしますし、皆さんのアクションを映えさせるのに一役買うことができていましたら、幸いに思いますー。

　ちなみに墨谷自身はまったくもって品行方正、ヤンキーなどという人々とは及びもつかない、へっぽこな小心者なのです。
　だからこそ、現実のそういった方々はともかくとして、漫画や物語などに出てくる彼らのイキザマなんかには、惹かれるものがあるのかも知れませんね。

　それでは皆さま、今回もご参加いただきありがとうございました！
　またの機会にお目にかかれますことを、心よりお待ちしております～。
　お疲れさまでした！

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