白黒レインボーな秋のはじまり｜リアクション

白黒レインボーな秋のはじまり

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放送部で手伝うことについての確認を――と、彰尋は実行委員が居るであろう会議室目指して急いでいた。
放課後あまりゆっくりできない我が身が悔やまれるが、こればっかりは仕方ない。
「実行委員長の人とか居るだろうか……、っと！」
廊下の角を曲がった拍子、向こうからも走ってきていた人が居て危うくぶつかりかけた。
お互いすんでのところで足を止め、
「うお、ごめん！」
「すいません！」
声が重なる格好で謝りあう。
その時、相手のつけている腕章が彰尋の目に留まった。
「あ、実行委員の人ですか」
「そうだけど、なんか実行委員に用事？」
と答える相手。なるほどこれは運がいい。
「俺、放送部の鴻上彰尋って言います。実行委員の人に、体育祭について放送部で手伝うことの確認をしたくて」
「お、マジ？　ちょうどよかった！」
言うが早いか、実行委員――武道が持っていた書類を差し出した。
「これ、放送部向けの当日の進行スケジュール。放送してほしいことがあるから、それと一緒に渡しちゃおっかなーと思っててさ」
よかったら持ってってもらえる？　と訊けば、彰尋はもちろん受け取って、
「それと、放送の内容の方は」
「『本日よりハチマキ配布。会議室まで取りに来てください』って感じで！」
「わかりました！」
「よろしくぅ！」
図らずしてお互いの目的を果たした二人は、お互いに背を向けてそれぞれの持ち場へ。
程なくして、ハチマキ配布の放送が全校に響き渡った。

◆
「お、そろそろ配布か」
看板出しからハチマキ整理に移っていた博美が、放送を聞いてふと呟く。
「じゃあ、ちょっと急がないとだねぇ」
眠そうな目でハチマキを数えていた春山小枝が、眠気に抗うように小刻みに頭を振った。
とはいえ、尚も眠そうな様子は変わらなくて。
「……大丈夫か？」
博美が少し心配げに問えば、「だっ、大丈夫だよー」と口では答えるものの――
「えーっと、いち、にー、さん、し……ご……ろ、く……」
十数える間すら持たなかった。
「おーい」
「ふがっ」
軽く肩を叩いてやると、変な声を上げながらすぐに目を覚ます。
だけど――……
「えっと、いくつだったっけ……」
「６までは数えてたな」
「じゃあ、ろくからだね……なな、はち、きゅー……、きゅ……じゅ……」
かくん、と小枝の頭が下がる。
当然、手の動きも止まる。
「……おーい？」
「……」
「大丈夫かー？」
小枝の広いおでこをつんつんとつついてみると、
「……うにっ。……」
ぼーっと、半開きになった瞳が中空に視線を漂わせた。ふわふわ、と明らかに焦点が定まっていない。
めちゃくちゃ眠そうだ。
「そんなに眠いなら、無理はしない方がいいんじゃないか」
気遣わしげに言うと、小枝はふるふると頭を振った。
「無理はしてない、けどー……うー、だめだー、やっぱり座ってると眠、い……」
またしても、小枝の動きが止まる。
しかし、今度は自力で復活した。
「いやいやっ、寝てる場合じゃないんだもんねー！」
おもむろに立ち上がると、突然ぴょんぴょん跳びはね始める。
一瞬、博美が訝しげな視線を向ける。それもむべなるかな、だ。
「じっとしてるとー眠くなっちゃうんだもんー。動いてればだいじょうぶー！」
言い訳のようにそう言うと、小枝はぴょんぴょん跳ねながら未整理のハチマキをとりに行った。
そんな彼女の姿に、
「なんだか愉快な人だな」
と我知らず微笑する博美だった。