ドレスに願いをかけて｜リアクション

ドレスに願いをかけて

●いつもとちがう服
　ステラ・マリスのロビーいっぱいに賑やかな声が響く。
「わー、すごいアルよ！　キラキラ絢爛豪華アルよ！」
　目を輝かせてロビーに飾ってあるものを触りまくる、畑中華菜子。
　舞踏会に行ったことがないという彼女は、友人の浮舟久雨に誘われステラ・マリスを訪れていた。
　何もかもが珍しいといった様子ではしゃぐ友人を、久雨が笑顔で見守りつつ、ときどき適度にたしなめている。
「本当にこういった場所は初めてだったのだな……」
　このくらい楽しみにしてくれた方が、エスコートのしがいもあるというものだ。
「さて、華菜子。私たちも衣装を選びにいこうか。レンタルのものがあるそうだから」
「はーい！　どんな服があるのかなー、わくわくドキドキアル！」
　スタッフに招かれ、二人もまた貸衣装室へと入っていく。

　久雨の見立てで、華菜子は淡いパステルグリーンのドレスを着ることになった。
　レース地と淡く黄色い花飾りの散りばめられた、プリンセスラインのドレス。
　着ようとして手を触れたところで例のお着替えが発生したが、スタッフの説明を聞いていた久雨は冷静そのものだった。
「聞いていた話は本当だったのか。そういうことなら、手間が省けて助かる」
　そういって久雨は衣装に手を触れ、優雅なタキシード姿へと変身する。
　さすがに髪までは自動で結ってくれないので化粧室を借りた。
　華菜子はシニヨンをほどいて丁寧に梳いてまっすぐにおろし、
　久雨は久雨で髪の結び目の高さを変え、うなじで束ねてよりスマートな髪型に。
「久雨ちゃんカッコイイアルー！」
「ありがとう。今日は私が最後までそばにいるよ。心行くまで踊ってくれ」
　憧れの色を顔面いっぱいに浮かばせる華菜子に、自信に満ちた笑顔でそう返した。