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秋の夜長を
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職場である寝子島総合病院を出たのは、午前0時より少し前だった。半袖の肌に纏わりつく晩夏の湿気った空気を振り払うように、
深倉 理紗子
は夜道を歩く。
(春だと思ってたら勝手に夏が来て、)
アスファルトを照らす街灯の光の輪から外れて夜を仰げば、十五夜に向けて満ちて行く白々とした月が見えた。
(暑い暑いと思ってたのに)
気がつけば、いつの間にか暦は九月も上旬になってしまっている。
九月の月を映した翠玉の眼を、黒い睫毛の影に隠す。瞳を伏せて俯いて、知らず、溜息が零れた。
晩夏の空気よりも熱を帯びた息が落ちた瞬間、家に急がせていた足が止まる。人気の少ない深夜の町に瞳を巡らせ、自宅とは違う方向へと靴先を向ける。
出身地でもある東京の大学から寝子島総合病院に研修医として入り、研修終了後にそのまま内科医の職に就いて、一人暮らしにも大分慣れた。今日も今日で散々仕事に終われ、――中学からの水泳で培った体力があるとは言え、体も心もひどく疲れている。
いつも通り、誰も待って居ない部屋に帰り、シャワーもそこそこにベッドに倒れこんでも良かった。そうして朝まで眠りこけても良かった。
けれど、今日は何となく家に帰る気になれない。
夜風に吹かれて、月光を浴びて、街中を無目的に迷う。行くあてなんてない。それに何故だろう、ひどく肌寒くなってきた。
(さっきまでまだ暑いくらいだったのに)
寒気に襲われた半袖の腕を擦る。
それでもやっぱり帰りたくはなれず、
(どこか適当な店でもないかな……)
ショートの黒髪を震わせ、周囲に視線を巡らせ、ふと、どこからか漂ってくる焼き鳥の匂いを嗅いだ。
冷たい空気に混ざる温かな匂いに、思わず泣き出したくなるくらい気が緩む。
月と街灯の光を頼りに視線を転じて、眩しく回る黄色いパトランプの光に眼を射られた。思わず顰めた瞳に、旧市街の路地のどん詰まりに置かれた『やきとり ハナ』の看板と店の入り口が映る。
初めて通る道で見つけた居酒屋らしい店の前で、理紗子はしばらく立ち尽くす。初めて入る店、しかも居酒屋の敷居は理紗子にとってとても高い。
一見さんの自分が入ったら、
(空気が白けないかな)
生来の気の弱さも手伝って余計なことを考えてしまうものの、格子戸の向こうからは温かな光とおいしそうな匂いが容赦なく洩れ出して理紗子を誘う。
(……ええいっ)
寒さに背中を押され、縄暖簾を潜り格子戸を引き開ける。
「はい、いらっしゃい」
「こちらのお席にどうぞー」
数人でいっぱいになるカウンター席だけの店内には、熊じみた容貌の店員の男と割烹着姿の老女将のみ。
他の客が居ないことに僅かな安堵を覚えつつ、
「この寒さのせいかお客さんが少なくて」
おっとりと笑う女将に勧められるまま、カウンター席の真中に着く。差し出された熱いお絞りで掌の冷たさを拭う。
「さ、何にしましょう」
お通しのワカサギの南蛮漬けの小鉢を前に、理紗子は女将と似た笑顔の店員を見遣る。
焼き鳥の煙の色と匂いがしみついた古びた店内は、今まで彷徨って来た外の寒さのせいもあってか、妙に温かく居心地よく感じられた。
「熱燗と、……焼き鳥を適当に盛り合わせで」
「はい、お待ちくださいね」
女将がカウンター裏のコンロの鍋に酒を満たした銚子を浸ける。店員が換気扇真下の焼き台に手際よく焼き鳥の串を並べて行く。
手慣れた様子をぼんやりと眺めながら、理紗子が思うのは己が行く末。
(……医者になったのはいいけど、)
今のこの現状は、自分が思い描いていた『医者』とは少し、
(……どころか、かなり違うような気がする)
先に席に届いた熱燗の一杯めを女将に注いでもらい、熱い酒に口を付ける。
芯まで冷えた身体に、空っぽの胃に、酒の熱が沁みる。
最悪だった今日を、思う。
――お前みたいな小娘の藪医者に殺されてたまるか!
耳元で怒鳴られた言葉が、怒鳴られたままに耳に蘇る。思わず胸が詰まる。喉に苦しい思いが競り上がる。視界が涙に滲む。
「お待たせしました」
「……ありがとう」
焼き鳥の皿を置く店員に涙を見止められないよう、酒をあおって誤魔化す。
(わたしの説明が悪かったのかな)
いくらあなたは胃潰瘍なのだと説明しても、自分が末期ガンだと思い込んだ年配の患者の思い込みを覆させることができなかった。怒鳴られ喚き散らされ、しまいには胸倉を掴まれ殴りかかられた。
(……本当に殺されるかと思った)
周りに居た看護士達が止めてくれなかったら、本当に殴られていたかもしれない。
結局、午後はそのショックから立ち直ることができなかった。度々人目につかない場所に駆け込んで泣いて過ごして、仕事どころではなかった。
(こんなので本当にこれから先やっていけるかどうか)
湧き出す不安をどうしようも出来ず、ただひたすらに酒を傾ける。焼き鳥を齧る。
(……あー、やだやだ、なんでこんなこと考えるんだろう)
酒は美味しい。焼き鳥も美味しい。
なのにどうして、嫌なことを忘れられないのだろう。
涙が滲む度に熱い酒を喉に流し込む。どれだけ飲んでも然程に色の変わらない頬に手を当てる振りをして涙を拭う。
女将に二合徳利をもう一本頼んで、
「……あれ」
こんなに酒飲めたっけ、と首を傾げて、
「看板間際にすまない」
カラリ、格子戸を引き開けた同年代の頃の青年と目が合った。
「道中はそうでもないと思ったんだが、急に冷え込んだな」
出入り頭に一人飲みの女性と目が合っても僅かも動じず、青年は意志の強そうな栗色の瞳を笑みに細めた。
店の常連なのか、女将と店員に親しげな目礼をし、照れて頷くだけの理紗子とひとつ席を空けて座る。
「ここの味が恋しくなってな……とりあえず熱燗、いいか?」
お通しの小鉢と熱いお絞りを受け取り、
志波 高久
は急な冷え込みに当てられた頬を緩める。
「何か食べる?」
「……ある程度腹にたまって温かい物であればお任せしたい」
女将に問われるままに応じながら、この店がまだ開いていて良かったと小さく息を吐く。先に届いた熱燗を猪口に注ぎ、小鉢のワカサギをつまみにまずはゆっくりと一杯。
地元である福岡から夜の便で本土まで来たためもあって、この島に着いたのは終電も間際な頃になってしまった。島に着いてしまえばどうにでもなるかと予約したホテルに急ぎながら、空腹に途方に暮れた。
とりあえずはホテルでチェックインを済ませ、コンビニ弁当やバーで飲むのもいいがと思ってから、この店を思い出した。
「最近の天気はどうだ?」
「今日の夕方頃まではまだまだ夏だと思ってたんですがね」
牛筋や豆腐や蒟蒻や根菜の甘辛い煮込みにたっぷりの葱を掛けて高久の前に供し、店員が不思議そうに眉を寄せる。
「夜から急に冷え込んで」
「そうか。だがお陰でこんなうまそうなものにありつけた」
煮込みに箸をつけ、熱燗の熱と味を楽しむ。美味い、と笑んで、
「夜分に失礼いたします」
そっと開いた格子戸から凛と響いた女性の声と冷たい夜気に振り向く。背筋を伸ばして立っていたのは、白金色の髪を凛々しく纏めた異国の女性。
「宜しいでしょうか」
「はい、いらっしゃい。お好きな席にどうぞー」
どう見ても異国の女性に狼狽する様子もなく、女将がお通しとお絞りを素早く準備する。
「冷えたでしょう」
「月が綺麗な夜ですね」
発音のお手本じみた流麗な日本語に耳を傾けつつ、そう言えばこの島には案外外国人も多いなと高久は思う。ひとつ開けた隣の席で黙々と酒をあおりつつも全く酔った様子の無い優しげな雰囲気の女性と、出入り口に近い席に座す秀でた額と怜悧な灰色の瞳の異国の女性を視界の端に入れる。
「この島は美人や可愛い子ばかりだな」
一抹の下心もなくサラリと呟き、穏かに笑む。新しく入ってきた女性客に軽く会釈し、何事もなかったかのように酒を手酌する。
「なるほど、こういう作りなのですね」
固い木の椅子に敷いた素朴な座布団の上に腰掛け、
エリザ・マグノリア
は興味深げに店内を見回す。狭くはあるが、家庭的な雰囲気が案外落ち着く。
主人に従うかたちで寝子島に移住し、ビザの取得や館の手配及び改築、使用人の教育、様々な手続きに追われる忙しい日々を過ごすこと約三ヶ月、ようやく生活も落ち着いてきた。今日は所用で遅くなってしまったが、家事はメイドに任せてある。少しゆっくりしていっても心配はいらないだろう。
店の外で月を仰ぎながら嗅いだチキンと醤油の焼ける香りを店内にも確かめる。外に吹く冷たい風に、格子戸の向こうで赤い灯りが揺れる。
(確か、赤提灯ですね)
母国で言うエスタミネだろうか、と考える。
日本語は主と共にある程度習得したが、日本の風俗にはまだまだ疎い。今までこういう店に入ったこともなかった。
(丁度お腹も空いていますし、)
ここで食事を摂れば、日本の勉強にもなりそうだ。
「さ、何にしましょう? ……日本語、読めますか」
「焼き鳥の種類だという所まではなんとなく解りますが」
店員に問われてメニューを眺め、エリザは眼鏡の赤いフレームを指先で押し上げる。
「お手上げですね。お任せで六本ほどお願いします」
「塩とタレがありますが」
「タレ?」
眉間に皺を寄せるエリザに、
「お醤油ベースの甘辛いソースね」
無言で杯を傾けていた理紗子が助け舟を出す。
「ありがとうございます。では、タレで」
飲み物は、と白金の睫毛を瞬かせる。醤油には赤の辛口が合うと聞いたことがある。
「メルローの辛口は有りますか? 無ければ――」
エリザが口にした代表的な赤ワインの銘柄に、女将が申し訳無さそうに首を横に振る。
「ごめんなさいねえ、うちに置いてるワインは赤猫ワインだけなの」
出されたのはレトロなラベルの日本製ワイン。勧められるまま、ぐい呑みに注がれた赤ワインを口に含んでみれば、ひどく甘い。
あまりの甘さに眼を白黒させるエリザに、高久が店員に言って炭酸水を持って来させる。
「そのままでも悪くないが、割れば飲み易くなる」
「ありがとうございます。宜しければお二方も如何ですか」
助けてくれた男女二人の名を聞きだし、店員に頼んで二人の分の赤猫ワインのソーダ割を作ってもらう。
「では、志波様、深倉様」
それぞれの席に着いたまま、ささやかに乾杯。
「マグノリアさんは日本に来て長いのか?」
「いえ、三ヶ月程でございます」
「それにしては日本語が上手だ」
「まずは言葉からと思いまして」
細かな泡を弾けさせる薄紅のワインに唇を付け、エリザは高久の言葉に生真面目に首を横に振る。
お待たせしましたと店員が置いた焼き鳥盛り合わせを口に運ぶ。口に広がる鶏の旨味と炭酸混じりの甘い赤ワインは、思っていたよりも相性が良かった。これはこれで日本の味なのだろうかと思う。
「深倉さん、大分深酒してるが大丈夫か? 顔色は変わってないようだが」
「大丈夫、……大丈夫です」
「そう言う時は大体、――あー、じゃあ、ここ最近この島であった行事なり何なり、教えてくれないか?」
鬱々と酒を喉に流し込むばかりの理紗子にも話しかけ、何か辛いことでもあったのかを問おうとして、高久は止める。話を詳しく聞きだそうとはせず、理紗子の痛飲を無理に止めることもせず、ただ隣で杯を傾ける。煮込みや南蛮漬けをつまみ、明るい口調で何でもない話をしようとする。
「地元が福岡で、島には時々しか来ないから、こっちの行事に疎くてな」
「行事……」
「そういえば神事もあったらしいな」
相席の高久の話に付き合い、理紗子は頷く。
「らっかみおろしね」
「島全体で盛り上がったらしいことは聞いてる。ある程度の情報は弟達に聞けば教えてくれるんだが」
「弟さんが居るのね」
「あぁ、ちょっと歳の離れた弟達がこっちで高校に通ってる」
下の弟二人の顔が浮かんで、高久は酒を含みつつ笑う。
「喧嘩ばっかりする奴らで、でも二人とも大事な弟だ」
「賑やかそうね」
「あと四年したら、一緒に飲み明かせるんだろうな……」
静かに、心底から楽しげに微笑む高久の横顔に、理紗子は瞳を淡く和ませる。こんな兄が居てくれる弟さん達はきっと心強いだろうなと、思う。
「どうした?」
伏せた瞳を温和な視線で覗き込まれ、理紗子はますます瞳を伏せる。酒に口をつける。
「……どうしたらいいのか、悩んで、ばかりで、」
酒の熱を借りて口にしようとして、少しでも口にしたことを後悔したかのように唇を閉ざす。場を誤魔化そうと杯に満たした酒を一息にあおる。
「俺はいいと思うんだがな、そういうの」
「……え?」
「悩んで悩んで、悩みまくって前に進もうと足掻くのも、悪くない」
「そうかしら」
高久と理紗子の会話を耳にしながら、エリザはグラスに満ちる赤いワインを眺める。
初めて入った居酒屋で、初めての焼き鳥を口にしながら、初めて出会った二人の話をのんびりと聞いているのが不思議で仕方が無かった。
(まさか)
事情で家を離れる事になった主人に付いて行くと決めたことに後悔はない。けれどまさか日本に住むと言い出すとは思ってはいなかった。
(父には『血に従った』と言って来たけど……)
己のマグノリア家は、長らく名家キャドー家に仕えてきた血筋。
エリザが執事として仕えている主人も、キャドー家の血を継ぐ。
現キャドー家当主に仕える父を想う。
次期当主に仕える予定の弟を想う。
幼い頃に他界した優しい母を、想う。
(下手な言い訳ですね)
小さく小さく、笑む。
主人に従い極東のこの地にまで来たのは、マグノリアの血に従った訳ではない。
(私はただ、)
――主人を、想う。
幼い頃より共に育ち、長じてはしきたりに従い主とした、あの人。
(私はただ、あの人に付いて行きたかっただけ)
誰にも明かしては居らぬ、己が主人への己が恋心を、想う。
炭酸水で薄れて濃くないはずの酒精が、初秋に似つかぬ冷気に凍えた体にひどく沁みた。ふわり、頬に血が昇った気がして、掌で頬を押さえる。
「御馳走様」
目元をほんの僅かに赤く染めて、高久が立ち上がる。ほろ酔い程度に抑えて飲んだものの、冷えた身体は熱燗が程よく温めてくれた。腹は優しく満ちている。一人で飲むつもりが、思いがけず人と話すことが出来て心もふわり、温かい。
「おかげさまでいい夢が見れそうだ」
女将と店員に、二人の女性に、高久はほろ酔いの微笑みを向ける。
「ありがとう」
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日常
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15人
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15人
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シナリオガイド公開日
2014年11月12日
参加申し込みの期限
2014年11月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年11月19日 11時00分
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