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秋の夜長を
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路地に足を踏み入れた途端、初秋とも思えぬ冷たい風が吹き寄せた。思いがけぬ風にコートの裾を引かれ、
日向 透
は首元のマフラーに手をやる。
ここ数日、この界隈を通る度に晩秋の寒さを感じ続けていた。コートとマフラーを準備してきていて良かった、と小さく息を吐く。風に吹かれる明るい月を見仰ぐ。満月も近い。中秋の名月が過ぎれば、また少し秋が深まる。
寒くなる。
(寒さは嫌いだ)
心に吐き捨て、コートのポケットに両手を隠す。大股に歩いて向かうは、路地の突き当たりの赤提灯。いきつけのあの居酒屋なら、遅めのこの時間でもきっと開いている。温かい店内で暖をとりがてら熱燗でも飲もう。
「あら、今晩は」
街灯が寂しく灯るばかりの夜闇の中、おっとりとした声を掛けられて、透は深碧の瞳を上げる。街頭の光を受けた深碧色が淡緑色を帯びて明るくなる。
目当ての店の縄暖簾を分け、割烹着姿の女将が顔を覗かせている。薄く開いた格子戸の奥、店内に客の姿はない。
この寒さに客の足も遠退いているのだろうか。
「おや、閉店間際に申し訳ありません」
今晩はと穏やかに頭を下げ、透は店内に戻る女将の後に続く。
「ううん、有り難いわ」
「最近、冷えてきましたね」
手慣れた仕種で壁際の衣紋掛けにコートとマフラーを引っ掛け、席に着く。カウンターの向こうからごつい店員が差し出すお絞りとお通しの烏賊と大根の煮物を受け取り、
「熱燗といつもので」
品書きを見もせずに注文する。
「はい、ねぎまとぼんじりの塩ですね」
確かめる店員に、短い金髪を揺らし、いつもの柔らかな笑みを浮かべて頷く。
お絞りの熱さと女将が素早く届けた熱燗の二合徳利に瞳を細め、早速の一杯めに笑み刷いた唇をつける。
「いらっしゃい」
「はーい、いらっしゃいー」
引き戸が軽い音立てて開くと同時、店員と女将が元気のいい声をあげる。何気なく戸口を見、黒髪の青年がいつもの生真面目な表情を崩しもせずに立っているのを確かめる。
「おや、鉄さん」
愛想良い声で挨拶を掛けられ、
鉄 衛守
は居酒屋の戸口でぎくりと長身を固くして身構える。
(日向……!)
夜更けの居酒屋の先客は、こともあろうに以前散々に自分を振り回した男だった。赤提灯に誘われ、仕事や何かの目的抜きで息抜きをしようとした罰か、と至極真剣に思ってしまうのは、息抜きという行為に若干気が咎めているせいだろう。
「隣、どうぞ」
あからさまな警戒の目を向けられ、透は内心に笑みを零す。いつもならば硬派で責任感の強い年下の知人をからかって遊ぶのだろうが、今日は特にそんな気分でもない。
目の前には常連客として通う居酒屋の酒と肴。楽しむのはこちらで良い。
「……お前は、この店にはよく来るのか?」
硬い声音と強張った表情のまま、透に促されるがまま、衛守は透の隣に座る。お絞りとお通しを目前に、熱燗と焼き鳥を適当に見繕ってくれと頼む。
「そうですね、よく来ます」
傍らの透が柔らかな声で応じる。衛守が横目に見れば、透は気にした様子もなく手慣れた様子で手酌をし、胡散臭い笑みを絶やさず猪口を傾けている。
「鉄さんは?」
透に思いがけず顔を真直ぐに見られ、衛守は灰色の眼を瞬かせる。
「俺は偶然足が向いただけだ」
「良い店でしょう」
「……まあ、悪くない店だな」
女将が熱燗を届けてきたのをいい理由に、透の碧の瞳から逃れる。
油断ならぬ男の、一見普段と変わらない様子に、どうにも違和感が感じられて仕方がなかった。いつもは笑顔の裏に底知れない何かが潜んでいる気がしてならなかったが、今日は何故かそれが極めて薄い、
(……ように思える)
「暖まりますね」
いいペースで杯を空にしながら、透が安堵するような一息を吐く。微笑む。
「ああ」
「寒さには弱くて」
「……そうか」
「これから冬がくるのだと思うと気が重いですね」
「……そう、なのか」
酒に口を湿して世間話に興じる透に、言葉尻を捕らえられまいと言葉少なに応じ、衛守はお通しの烏賊と大根を肴に熱い酒を口にする。酒の熱と香りが冷えた身体に沁み渡って行く。
酒の熱に、ふわり、肩から力が抜ける。仕事の忙しさに追われ、心の隅に追いやり隠していた思いが頭をもたげて迫る。
(……今頃寂しがっていないだろうか)
その思いは、先日己を追って寝子島に来た妹の顔をしている。
本土から兄を頼りに一人でやってきた妹は、大人しく見えるその癖、いつもかなりの無茶をする。
その性質もあって、先日も慣れないろっこんの力を行使した挙句、入院する羽目になった。
病院のベッドに横たわった妹の姿が頭を巡る。
寂しい思いをしていないだろうか。また無茶をしようとしていないだろうか。心配は尽きない。
可能であるなら、せめて病院にいる間だけでも妹の傍にずっと付いていてやりたかった。寂しい思いをせぬよう、その身に余る無茶をしないよう、いつだって守ってやりたかった。
けれど仕事をしている以上、それはできない。
勤めている会社の社長には、十二年前に両親を失い路頭に迷いかけた自分と妹とを引き取って育ててくれた大恩がある。その恩を返すために、自分はどんなことでもすると決めている。
(それでも、)
「どうかしましたか」
不意に隣から和やかな声を掛けられ、衛守は思いに沈んでいた灰の瞳を上げる。
「難しい顔は、……いつものことですが」
二合徳利を空にしても全く顔色を変えぬまま、小さく笑う透の態度に一瞬ムッと眉を寄せるも、
「ひどく難しい顔をしていますね」
僅かに首を傾けこちらを見る深い碧の眼は、やはりいつもとどこか違うように見えた。
それ以上問い質そうとはせずに次の酒を注文する油断ならぬ男を見遣る。
女将の酌を受け旨そうに酒を飲む優男じみたその横顔に、何故か今日はいつもの毒を感じない。
「……歳の離れた妹が、居る」
熱い酒に舌を湿せば、ぽつり、言葉が零れた。
「おや」
普段警戒心しか向けぬ己からの言葉の珍しさにか、透がほんの僅か驚いたように碧眼を丸くする。
「最近この島に来て、……基本あいつの自由にさせたいとは思うが、未だ中学生だ。保護者の責務がある」
話し出してしまえば、酒のせいなのか、言葉を挟まず耳を傾けてくれる透の雰囲気のせいなのか、口は自然と軽くなった。
「危険な目に遭わないかやはり心配だ」
「妹さんが可愛いのですね」
「難しい年頃だ、どう接するのがあいつのためになるのか……」
気が付けば相談口調になっていたことに衛守は自分でも驚き、同時に内心首を捻る。この男に家族の話など、普段ならば弱みを握られると考え決してしないはずだった。
(迂闊だっただろうか)
「心配なのは当然のことですが、ちゃんと叱って、そしてその上で彼女を信じてやるのもまた必要なことなのでは」
これから大人になっていくんです、と透は穏かに微笑む。
「ひとつひとつ失敗も含めて、彼女自身が学んでいかなくては」
自分の猪口に手酌し、衛守の猪口にも何気ない仕種で酒を注ぐ。咄嗟に身を固くする衛守に、ひょいと杯を掲げて見せる。
「貴方に出来るのは、」
警戒しつつも乾杯に応じる衛守を柔らかな眼で見、透は酒を含む。
「見守り、支え、信じてあげることですよ」
白い指を折って数え、たった三つです、と笑う。
「難しいかもしれませんが、貴方であれば出来るでしょう」
「……お前、今日はどうしたんだ?」
乾杯のかたちに手を止めたまま、衛守は怪訝そうに眉根に皺を刻む。
いつものようにからかわれるとばかり思っていた。
いつものように内心を隠した外面ばかりの笑みを向けられるものとばかり思っていた。
けれど返って来たのは普通の、むしろ真摯な受け答え。
不審に思うよりも驚きが勝った。
油断ならぬ男の常ならぬ優しさは、けれど嫌ではなかった。たまには変な警戒心抜きで話すのも悪くないかとも思えた。ただ、
「……調子が狂う」
困ったように呟く衛守の言葉に、透は思わず破顔する。
偽りの笑みの仮面が粉々に砕ける。心底から力の抜けた素顔の笑みが溢れて、
「いつも通りの俺ですよ」
一瞬のうちに戻る。底知れぬ笑みが元通りに貼り付く。
いつも通りの笑顔と、いつも通りの人を食った言葉を向けられ、衛守は透から視線を外す。珍しい一面を見はしたものの、油断ならぬ男であることに変わりはない。
「俺の他愛ない愚痴を聞かせて悪かったな」
低く詫びる。
後日このことをからかわれるとしても、相談に応じて貰えたのは確かに有り難かった。話を聞いてもらえたことで、心が少し軽くなったように思えた。
「秋に、なりますね」
話したことを後悔しているような衛守の声音には構わず、透は酒を喉に通す。鼻に抜ける熱い酒の香に目を細める。
木枯らしに似て、風の音が戸を叩く。
押し寄せる秋の気配から逃れるように杯を干す。酒の熱に冷える身を縋らせる。
「寒くなってしまう」
「もうそんな季節だな」
借りは作らんとばかり、衛守は透の空の猪口に己が注文して届いた熱燗を注ぐ。
衛守の満たしてくれた杯をお愛想で小さく掲げて遠慮なく口を付け、透は酒の水面に瞳を伏せる。
(寒いのは嫌いだ)
声には出さず、吐き捨てる。
秋も冬も、嫌いだった。凍える季節は、人の醜さや絶望を見ることを好む自分でさえも孤独を感じてしまう。寂しさを感じてしまう。
(寒いのは嫌いだ)
己が歪みを自覚するが故に。
孤独も寂しさも、こんな自分が感じて良いものではないと断じて、今はただ、寒さを遠ざけるべく杯を重ねる。
隣に衛守が居ることに感謝しつつ、同時に厭うて。
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阿瀬春
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シルバーシナリオ★(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年11月12日
参加申し込みの期限
2014年11月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年11月19日 11時00分
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