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秋の夜長を
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月が静かに凍えている。
「おぉ寒……」
鶯色の着物の肩を黒い革手袋に包んだ手で抱き、
御堂地 瑛華
は月仰ぐ枯葉色の瞳を細めた。垂れた目尻に黒い睫毛の影が長く落ちる。
「何だいどうしてこうも冷えるかな……」
高く結い上げた豊かな黒髪に月の光が跳ねて踊る。
アスファルトの地面に無骨なエンジニアブーツの足音を響かせ、旧市街の路地を一人、歩く。
着物の足元から這い上がり全身に纏わりつく、初秋とは思えぬ冷気に顔を顰める。恐ろしく冷え性な身に、この寒さは堪える。
早くもかじかんできた指先を擦り合わせ、着物の袖を引き寄せる。こんなに冷えると知っていたなら、多少時期外れだろうがなんだろうがコートでも着てくれば良かった。
息を吐くついでに冷えた指先を温めて、夜も更けた道の先、『やきとり ハナ』と書かれた電光看板の光を落とそうとする女将の姿を見つけた。
「おっと、……もしかしてそっちも店閉めるところだったのか?」
「あら、御堂地さん」
煙草屋と居酒屋、同じ旧市街に店を構える瑛華と女将は穏かに笑み交わす。
「檀屋さんもお看板?」
「あぁ、私のとこもさっき店閉めたところでね」
趣味の延長線上、と周囲に言って憚らない煙草屋『檀屋』で、のんびり水煙草を楽しんでいて、気がつけば閉店時間を大幅に見過ごしてしまっていた。
店を閉めた後に軽く一杯引っ掛けるつもりでここまで来たはいいが、
「大丈夫?」
看板を仕舞おうとしている馴染みの女将の様子に、瑛華は拘らぬ微笑を向ける。
「はい、よろこんで」
電光看板をもう一度灯し、女将はビールケースに半ば塞がれた格好の格子戸を引き開ける。店内から溢れ出る焼き鳥屋のいつもの匂いに淡く頬を緩め、瑛華は一人、居酒屋のカウンター席に着く。
「熱燗お願い。つまみは……今日のおすすめは?」
熱いお絞りとお通しの千切り大根と高野豆腐の煮物を前に置く店員に問えば、秋刀魚の煮付けが旨いですよとの返事。
「じゃあそれもらうよ。あと」
「灰皿ですね」
言おうとした言葉を店員に先取りされ、思わず笑む。そう言えば、この店に来るときは大抵いつも似たような注文の仕方をしている気がする。
酒と注文の品が届くまでの間に、パイプ煙草に火を入れる。
煤けた天井にゆるゆると立ち昇る紫煙を眼で追い、香りを胸に満たす。煙を喉に通す。
「お待たせさま、どうぞ」
「あぁ、ありがとう」
熱燗を届けた女将から、最初の一杯を猪口に貰う。
「景気はどうだ?」
「良くもなく悪くもなく、かしら」
女将との世間話を肴に、酒を傾け、煙草を喫する。
同じ旧市街に店を持つ者として、
(若輩者ながら)
古くから店を構える此処には、親近感のようなものを抱いている。
「檀屋さんは?」
「似たようなものだ」
だから、此処に来るといつも互いの店の話が多くなる。
梅干入りの秋刀魚の煮付けが届く。店員に礼と笑みを向け、酒を杯に満たす。ふと、淡く笑む。
「今の店は開いて良かったと思ってるよ」
常連客の静かな声に耳を傾け、他に客の居ない店内で、女将が隣に腰を下ろす。
「喫煙具は好きだからね」
「いいお店よね、檀屋さん」
捲り上げていた割烹着の袖を戻し、女将はのんびりと頷く。
「それに……この仕事なら、大抵のものは、お金出せば手に入るから」
あの時、――大学生の時に諦めた夢が、宙に揺れる紫煙に幻影のように揺れて見えた気がして、瑛華は長い睫毛の影を酒精に惑わぬ白い頬に落とす。紫煙に紛らわせ、息を吐き出す。
本当に欲しかったものは手に入らなかった。
(けれど、今の店なら)
「欲しいと思ったものは大抵手に入る」
己に言い聞かせるように繰り返して、
「ま、その欲しいモノが喫煙具ばかりだからこそ言える事だけど」
いつもの飄々とした笑みを浮かべる。瞳に落ちた僅かな翳りを消す。白い喉を晒し、明るい瞳で天井にたゆたう紫煙を追う。
「本当にあの店は趣味の延長上さ」
だから、と繰り返す。
「だからある意味では、自分は幸せだと思うよ」
好きなモノを扱って生計を立てている。それを幸せと呼ぶ以外の言葉を、瑛華は知らない。知ろうとしてはいけない。
(でも、……)
たまに、思ってしまう。
諦めずにいたら、と。
(諦めなかったら、どんな人生を送っていただろうか)
小さい頃の夢を諦めず、あのまままっすぐに進んでいたら、どこに辿り着いただろう。
(その先の私は、幸せなのだろうか)
「御堂地さん」
女将から杯を受け、瑛華は短く笑う。
「湿っぽい話はここまでにしようか」
煙の沁みた喉に酒を流し込む。知らぬ間に空になっていた徳利をおどけた調子で軽く振る。
「女将さん、熱燗もう一本。あと煮込み下さい」
たまにはゆっくり飲むのも、悪くはない。
煙を胸に満たす。思いがけず浮かび上がってきたあの頃の夢を、再び胸の底深く沈める。
そっと息を吐く。揺れて流れる煙の向こう、カラリ、引き戸が開いた。
「もう店じまいかな……」
躊躇いつつも顔を覗かせたのは、檀屋にも時折客として訪れることもある、こちらも旧市街地に雑貨屋を構える
天動 記士郎
。
檀屋で水パイプを吸いながら店番をしている時と同じ笑みを浮かべる瑛華と目を合わせ、記士郎は軽く会釈をする。
「いらっしゃい、冷えたでしょう」
女将に迎え入れられ、この遅い時間に店が開いていることに穏かな茶色のたれ目を細める。冷えた頬を撫でる焼き鳥と酒の匂いに頬を緩める。
普段から、営む雑貨屋を閉めて後に自宅で適当に肴を作って一人飲むほどには、酒は好きだった。
本土でたまたま用事があって帰りが遅くなった今日も、自宅に帰ってのんびりと飲むつもりでいた。車での帰宅の途、ハナに灯る赤提灯の明かりを通りがかりに見かけるまでは。
同じ旧市街に昔から店を構える居酒屋がまだ開いているのを見てしまえば、自分で自分だけのために酒肴を用意するのが面倒くさくなった。自宅に車を置くだけ置いて、とるものとりあえず上着を羽織り、ふらり、来た道を戻った。
疲れて帰ったところで、迎えてくれる人も居ない暗い自宅に戻るのが、なんとなく億劫に思えたことも一因だろう。
(まだ開いていた)
徒歩でもそう遠くない道を戻って、灯の点いた赤提灯の前に来たはいいものの、店内の静けさに入店を少し迷って、けれど思い切って店の扉を開けて、
(良かった)
上着を壁際の衣文掛けに引っ掛け、一番端の席に腰を下ろす。瞳と同じ色の纏めた長い髪が肩を滑り落ちてくるのを片手で背中に流す。
「何があるのかな……」
お通しを並べる店員に目礼し、品書きを眺める。とりあえずはと熱燗を頼み、肴に焼き鳥を数種。他に何を注文しようかとカウンター向こうの冷蔵庫に貼られた紙の『本日のおすすめ』や、煤けた壁に長年貼られたまま同じ煤色に染まった品書きを眺めていて、離れた席で酒と煙草を楽しむ瑛華の前に置かれた煮込みが目に留まった。
「御堂地さんと同じものを下さい」
「あぁ、」
「すみません、すごく美味しそうで」
「美味いよ」
煮込みに箸を付け、屈託なく笑う瑛華にもう一度小さく会釈する。女将が届けた熱燗を手酌で飲み始める。
「女将さんのお勧めがあれば」
「秋刀魚の煮付けが美味いよ」
「そうね、おすすめ」
瑛華と女将に揃って勧められ、記士郎はのんびりと微笑む。同じものをもう一度頼み、お通しをとりあえずのつまみにして静かに杯を重ねる。
カウンターの向こうで立ち働く店員と女将を眺め、ぼうやりとパイプ煙草を吹かす瑛華を眺める。
壁に掛けられた古い鳩時計はずいぶん遅い時間を示している。
こんな遅い時間であっても働く人がいて、こんな遅い時間であっても出歩く人がいる。自分もその内に入るとは言え、なんだか少し不思議な気分だった。
格子戸の外を風が吹き抜ける。
ガタガタと戸枠を叩く冷たい風の音に耳を澄ませ、本土で感じた残暑の厳しさとの違いを思う。そう言えば最近何度か、不意に寝子島の空を流れる風や雲の様子が脳裏に浮かぶことがあった。風と雲の流れを読み、天気の変化を測り、今のは何だったのだろうと首を傾げているそのうち、読み通りに天気が変わった。
(どうしてかな)
酒の熱を楽しみながら首を傾げ、けれど現実主義者な記士郎はすぐにその不思議をただの偶然だろうと片付ける。この世に不思議な事なんて起ころうはずもなく、普通の人である自分は、自分の力以外の力を持つはずもない。
届いた煮込みと秋刀魚の煮付けに箸を伸ばす。
そうしながら、壁に掛かる『京都』と書かれた三角ペイントやカウンターに置かれた金色招き猫や、奥の食器棚にひっそりと飾られた青い硝子細工の鯨等の雑貨に目が行ってしまうのは、雑貨屋という商売を営む己の職業病のようなものなのだろう。
(何か女将さんの拘りがあるんだろうか)
見たところ、飾られているものに統一性は全くない。
女将の手が空くのを見計らって店の小物について問えば、老女将は照れたように首を横に振った。
「まさかまさか。大体がうちの死んだ旦那の土産物。壁のペイントも、カウンターの金色招き猫も。趣味悪いんだから買うなって言っても買ってきて、でも、あの人がこの店残して死んじゃってからもどうにも捨てられなくって」
「今でもお好きなんですね」
「お婆ちゃんの惚気話よ」
おどけて笑う女将に頭を下げ、身体が温まったのを機に席を立つ。これだけ温まれば、家に帰るまでは寒さに悩まされることはなさそうに思える。布団に入ってしまえば、きっとことんと眠ってしまえる。
「そろそろお暇します」
「私もいいかげん切り上げよう」
パイプの煙草を灰皿に落とし、瑛華がさほど酔うたとも思えぬ身軽さで立ち上がる。長い黒髪を揺らし、瞳を和ませる。
「お陰でゆっくり酒が楽しめた。ご馳走様」
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阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
シルバーシナリオ★(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年11月12日
参加申し込みの期限
2014年11月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年11月19日 11時00分
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