月が夜半の空に白々と輝いている。
濃紺の空を仰いで、秋の冷気に喉を撫でられた。肩をすくめて、月に白く照らされた路地の突き当たり、白銀の月よりも余程温かそうな赤提灯を見る。
路地に向けて回る換気扇から流れ出て鼻先を掠める、炭火焼の焼き鳥のにおい。
『やきとり ハナ』の文字が書かれた電光看板の上でくるくると回る黄色いパトランプ。
古めかしい昔ながらの居酒屋の佇まいにうっかり足を止めて、海から流れてくる風の思いがけない冷たさに身震いする。季節はまだまだ九月の上旬、それなのに晩秋の頃じみてひどく冷え込むのは何故だろう。
軒先で揺れる赤提灯を眺め、財布の中身を考えていて、ふと、ビールケースに半ば埋れた格子戸が開いた。
縄暖簾を割烹着の腕でかき分け、店の女将が顔を出す。此方には気付かず電光看板の電気を消して軒先に押し込んで、
「あら?」
ふと、穏かな皺に埋れた顔を上げた。皺だらけの顔をますます皺くちゃにして、笑う。
「あらあら、今晩は。お客さんが帰っちゃったから今日はもうお看板にしちゃおうかと思ったんだけど……外は冷えるでしょう。良かったら寄ってらっしゃい」
こんにちは。阿瀬 春と申します。
今回は、秋の夜長を夜更けの居酒屋でひとり酒しつつ物思いに耽ってみようなシナリオ(のつもり)です。
店の周辺だけ、神魂の影響で数日間かの間、秋が深まり寒くなっています。店の前を通ると寒さを感じて、つい店に入りたくなってしまうようです。
基本的にはお一人様シナリオの予定ですが、私の場合、基本的に予定は未定です。ですのでもちろん、どこかよそのお店で友達と一緒に飲んで来て二次会だー、の流れもありです。ぐだぐだしてたら後からうっかり入ってきた別のお客と意気投合した、というのもありだと思います。そのあたりはあなたのアクション次第です。
ガイドでは月が出ていますが、神魂の影響を受けて秋の寒さを感じる幾日間の間には雨が降ったりするかもしれません。雨の夜に一人で居酒屋で物思いに耽るのもいいかもしれません。
一見さん設定でも常連さん設定でも、どちらでもお越し下さい。
※『やきとり ハナ』を舞台としたお話はふたつありますが、読んでなくて全然構いません。
一応、割烹着婆なおっとり女将と熊容貌の強面店員が店内に居ますが、お客さんの注文の品をお出しする以外は居ないものと思って下さいまして大丈夫です。
※夜更けな上に居酒屋ですので、未成年PCさんはご遠慮ください。
そういうわけで。秋の夜、ちょっと一杯いかがですか。
ご参加、お待ちしております。