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秋の日の海は、なんだかとても水色で
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ここに、もう一人海の妖精が現れました。
常闇 月
です。
胸元にシャープな切り込みが入ったツーピース水着姿、飾り気はないものの、蝶を思わせるフォルムがセクシーでした。上下のパーツを黒で結ぶタイプなので、背中側から見るときりっと引き立った印象があります。
本日、月は誰と待ち合わせしているわけではありません。単身です。すなわち、誰かに見せるための水着ではないのです。それなのに否応なく視線を集める形状の水着姿なのは、端的に言って自分で選んだ衣装ではないから。
この水着は、月が義理の姉から手渡されたものなのでした。試着もせずはじめて身につける水着だというのに、ぴったりと肌に吸い付くような装着感があります。まるでオーダーメイドのようです。月はこの水着に、義理の姉らしい細やかな配慮を感じていました。
海でも行ってきたら、と義理の姉に言われ、月はここに来ています。水着に加えてタオルなど、必要なもの一式も渡されました。素直に従って今、白い砂浜を踏んでいるわけですが、行ってどうしろとか、こうしろという指示まではありませんでした。
なので、特にすることもないのです。
彼女は一体どういう意図で、月を海に行かせたのでしょう。
泳ぐべきでしょうか。
誰か男性でも探して、遅れてきた一夏のアバンチュールでも体験するべきなのでしょうか。
「……」
泳ぐのはともかく、積極的に人とかかわる気にはなれません。
かかわろうにも、秋の日の海岸は人がまばらで、かかわりようがそもそもなかったりします。
なので月はそのままぶらりと、あてもなく砂浜を歩き出しました。
こうやって雑誌モデルのような水着をまとって、潮の音を聞きながら散歩するというのも悪いものではありません。
静かな波音は、ぐっとボリュームを絞って聴くショパンのエチュードのようで、なんとも心地良いものがありました。しゃくしゃくと砂を踏む感覚だって、非日常的な一場面を彩ってくれます。
それになんといっても海、水色の海です。
きらきらと太陽を反射して、澄みきっていて、どこまでも続いています。
月とて思い悩む材料には事欠かず、普段にはわずらわしいことが無数にありますが、この心和む光景の中では、そんなものは消え去ってしまうのでした。
目を凝らし海と空との境目を見極めようとするものの、それはどこか、溶け合ったようになって曖昧です。なぜだかそのことに、ほっとします。
人の気配のないほうばかり選んだせいか、いつしかこの天地に、たった独りでいるうような気になってきました。
飛吹 勘助
が波打ち際に来たのには、明確な理由がありました。
ふと、思い立って来たのです。
潮風に前髪が揺れます。深く息を吸い込むと、たちまち甘塩っぱい塩の味が、胸一杯に広がるような気がしました。悪い感覚ではありません。
この場所でなければできないことに、勘助は挑戦するつもりでした。
両手に抱いた『もふもふ』を、ぎゅっと一度だけ、強めに抱きしめます。もふもふというのはアンゴラうさぎのぬいぐるみで、彼がいつも行動を共にしている相手です。
「俺、行ってくるよ、もふもふ」
そっともふもふに囁きました。もふもふはふんわりと微笑んでいます。いつだってもふもふは、絶対的に勘助の味方です。
返事を聞いたようにうなずくと、彼はもふもふを荷物をまとめた場所に下ろしました。脱いだ服やサンダルもここに一緒に置いています。
かわりに勘助が手にしたのは、ラベルを剥がしたペットボトルでした。
――海の底まで、届くかな……怖いけど、試して、みたい……。
もう一度自分の意思を確認して、ペットボトルのキャップを回しました。
ゆっくりと回しました。
キャップを荷物の上に転がすと、ボトルを手にしたまま勘助は海に入っていきました。すでに水着姿なので問題はありません。長い脚から腰が濡れ、やがて広い胸が冷たい海水につかりきった頃合いで、一気にボトルを煽ります。
かあっと熱っぽいものが、胸にこみ上げてきました。それが急速に、胸から腹、そして足へと流れ落ちていくのもありありと知覚できます。
自分の中に『変化』が起こっているのです。主に、腰から下に。
さっと振り返って勘助はボトルを投げ、うまく浜辺の荷の上に着地させました。後でキャップともども捨てましょう。
このとき勘助は海面を叩いて、高く飛び上がっていました。波飛沫がぱっと立ちました。
海面を叩いたのは彼の手ではありません。
尾びれです。
ろっこん『Merman』が発動したのです。飛吹勘助は今、人魚へと姿を変えていたのでした。
波の上に下半身すべてが現れたのはほんの一瞬、ですから普通の人がこれを目にしたところで、目の錯覚と思うだけでしょう。
勘助の腰から下はすべて、完全な魚となっていました。鱗の色はまぶしいほどのブルートルマリンで、水を反射して鏡のように光っています。
――海……俺の、居場所。
恋しかった。
何年かぶりに帰郷した気分、と言っても決して大げさではありません。窮屈な場所に閉じ込められていたのが、やっと解放されたかのようです。
尾びれをぐんと振って、勘助は水中を疾走します。陸上より何百倍も楽です。弾丸のような速度がでます。そのまま海中を急旋回して、一瞬で元いたあたりに戻りました。
ざばっと水から顔を上げました。髪は濡れて頭に貼り付き、顎髭からもしとどに海水が流れ落ちます。これこそ彼が望んでいたもの、もっともっと、海を楽しみたい。
本日勘助は、自分の能力を確かめるために海に来ました。
――どれほど、海の中にいられる、のだろう……。
ふと頭をもたげたこの疑問と、向き合うつもりなのです。
――海の底まで、届くかな……怖いけど、試して、みたい……。
ここは人間の形態なら、まだまだ足が立つ地点、もっと沖合に行ってみようと思います。
長い前髪をかきあげて、勘助は心臓が口から飛び出しそうになりました。
「……って、あれ、常闇さん?!」
慌てて身を屈め、できるだけ体が海から出ないようにします。
そうです。常闇月と目が合ったのです。月は水に入った状態で、ほんの数メートル先にいました。
「飛吹さんですね」
月は動揺することなく、見たものを素直に受け止めるようにうなずいて見せました。
しばしの散策ののち海に入った月は、水にただならぬ震動を感じてその発生源を探しました。なにか巨大なものが着水したとか、ホオジロザメが泳いでいるような気配があったのです。
隠密行動ならば得意中の得意、すぐに月は、魚のように……いえ、半ば魚となって泳ぐ勘助を見つけたのでした。勘助にそれと悟られぬように近づくことにも成功しています。
「も、もしかして、みて、ました……? 変身、するとこ……」
怯えたような目をする勘助に比べて、月はずっと落ち着いていました。
「……変身しているのはろっこんでしょうか。見るからに泳ぎに適した姿ですね」
にこりともしませんし、怖がっている様子もありません。ただただ、事実を客観的にとらえるようにして、真顔で述べます。
ところが勘助としては冷静ではいられません。胸元を隠すようにして我が身を抱き、背中を向けて肩を震わせていました。
「ちょ、ちょっと…は、恥ずかしい、です……!」
ここでうかつなことを言われたりすれば、泣き出してしまいそうです。
そんな彼の様子に月は、好感ばかりか憧れのようなものすら抱いていました。
――以前お会いしたときにも思いましたが、私なんかよりも女性的な方ですね……。
なんといいますか、背中から抱きしめてあげたくなります。彼を怯えさせるすべてのものから、守ってあげたいとも思います。
同時に、
――私ももう少し、一般的な女性並に可愛げがあればいいのに……。
などと考えたりもするです。
かくいう我が身もろっこん持ち、勘助の変身した姿を見ても月は、いささかも怖いとも気味悪いとも感じませんでした。むしろ美しいと思いました。
――この気持ち、うまく伝わればいいのですけれど。
と念じながら、月は彼に呼びかけました。
「ろっこんを使っての潜水ですか? お付き合いしますよ」
「……え?」
「見て下さい。私は水着です」
こわごわ振り返って、勘助は月の言葉を確認しました。
「あなたも、泳ぐの、ですか……?」
「はい」
月は表情に乏しいところがありますが、言葉にはどこか、温かさがあります。
直感的に彼は、彼女の言葉を信じました。
「えっと……じゃあ、せっかく、ですし……一緒に、泳ぎ、ますか……?」
「喜んで」
こうして二人は並び、沖を目指したのです。
浜辺を離れると水温はいっそう冷たく、じっとしていれば唇が紫に変わりそうな気持ちがしました。
けれど常に動いている状態であれば問題はありません。
月も常人ではありませんので、海女さん顔負けの泳ぎと潜水力を披露しました。
呼吸止めは四分近く、自力で潜水の場合も二分程潜れます。
とはいえ勘助の泳力たるやそんなものではありません。いくらでも潜れるし、いくらでも泳げます。
それでも彼が潜りっきりにならず一定周期で海面に顔を出すようにしたのは、呼吸のこともありますが、このまま潜りに没頭しすぎると、完全に魚になって帰って来られないような気がしたからです。
潜るたび、勘助は水の都に発見をしました。
綺麗な魚が目の前を横切ります。
透き通ったクラゲが、彼を歓迎して手を振るような姿を見せました。
石ひとつにしたって、地上で見るものとはまるで違う顔をしているのです。
そんな海の劇場に夢中になって、勘助はこれまでで一番、ぐっと深く潜水しました。
――素敵、だ。本当に……。
浜辺の淡い水色とはどこか違います。金属のような青い光沢が、海中に広がっていました。
涙が出そうになりました。これこそ、母なる星の真の姿という気もします。
ちらっと勘助は横目で、月の姿を見ました。
月は目をつぶっています。そんな彼女を盗み見るような格好になったので、ちょっと罪悪感があります。けれども、甘い感覚もありました。それは盗んだ口づけのような。
小さくて可愛い、ビギニ姿の彼女です。
――そういえば前、普通の、女の子に、なれるように、頑張ると、言ってた、けど……。
彼女に教えてあげたい。
頑張ろう、とする時点で、可愛い、と、自分が思っているということを。
恋愛感情とかそういうものを抜きにしても、抱きしめて伝えたいと、そんな感情を月に抱くのでした。
ですがその甘美な気持ちは、瞬時に泡のようにして消えました。
「……!」
月がジェスチャーを送って来たのです。
危険信号。
息が続かなくなってきたという意味でしょう。それもそのはず、つい勘助は、人間の限界近いところまで潜ってしまっていたのです。
――常闇さん!
必死になって月の体を抱きとめ、尾びれを強く蹴ってはるか高い海面を目指しました。
間に合いました。月は海水を少し吐き出しましたが、勘助に支えられながら目を開け、息をしています。
「助けられましたね。ありがとうございます」
命の危機にあったというのに、この落ち着きぶり、さすがです。
「……いえ、俺……無茶を、強いて、しまった、みたいで……ごめんなさい」
月の体温を腕に感じながら、勘助は彼女の目をまっすぐに見返すことができませんでした。
「……やっぱり、俺、半分人間、だから……配慮が、できなくて……」
「そんなことはありません。さっきのミスは私が我を忘れたせいです。私は楽しんでいます」
「楽しんで……?」
「そう。飛吹さんと、泳げていることを」
「あり……がとう……ございます……」
それだけ言うのが精一杯、月は胸が一杯になって、涙ぐんでしまいました。顔を見せないようにうつむきますが、小さく嗚咽が洩れています。
海中にあるとき一瞬、本物の魚になって、一生海の中で暮らしてもいいと思った彼でしたが、地上にも月のような人がいて、こうして優しい言葉をかけてくれるのです。捨てたものではないのかもしれません。
月はそんな勘助の様子に気づかぬふりをして、
「戻って、少し休憩しましょうか?」
と、そっと声をかけました。
この後、戻る道すがら月が、御剣刀を発見したこと……しかも刀が辛抱たまらず水に入って、北条冬華らにラッキースケベを狙いに行っているところを目撃し、「破廉恥な……油断も隙もありませんね、あなたは」と成敗に行ったことなど、まだまだ書くべきことはあるのですが、紙幅の関係上本章はこのあたりで、閉じることにしたいと思います。
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桂木京介
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シルバーシナリオ★(150)
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3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
動物・自然
定員
20人
参加キャラクター数
21人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2014年12月12日
参加申し込みの期限
2014年12月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2014年12月19日 11時00分
参加キャラクター一覧
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